プロローグ
まだ慣れていないので誤字・脱字があったらすみません。
「やった! ついにやったぞ!」
真っ暗闇の部屋の中、ランプの光に照らされている一冊の本を見つめながら少年は恍惚の笑みを浮かべていた。
その本にはタイトルもなければ著者名も書かれておらず、一見するとただの落丁本に見えるが、少年はその本がどれだけ貴重かを知っていた。
「後は師匠に見つからないようにしないと……」
少年は手に持っていたランプを腰のベルトについているホルダーに掛け、手に入れた本を両手で抱きしめながら静かに部屋を出て行った。
部屋を出ると石造りの大きな螺旋階段があり、少年は早足で駆け下りていった。この螺旋階段は長く、そして暗い。頼りになるのは彼が腰につけているランプの光だけだった。
そのランプの光でさえ照らしてくれるのは数歩先の足元だけだったが、少年はそんな事を意にも介さず、ただひたすらに本を抱きしめながら下りていった。彼にとっては、それほどまでにこの本を手に入れたことが嬉しかった。
やがて階段を下り終えて廊下らしき場所に着くと、いくつかの部屋扉が見えた。少年はその中の一つの扉を勢いよく開け、大急ぎで中に入り扉を閉めた。
ふぅ~……と、ため息をつくと部屋に居たもう一人の少年が声をかけてきた。
「よぉ、うまくいったのか?」
「ああ、バッチリだぜマージュ!」
マージュと呼ばれた少年に向かって満面の笑顔でVピースを向ける。マージュは少年よりも彼の持つ本を驚いた表情で見つめていた。
「おいマジかよ、本当にやりやがったのか? じ、じゃあそれが……」
「そう、正真正銘『魔物語』だ!」
少年は本を両手で持ちながら嬉しそうに何回か回って机の上に置いた。そして彼は机の中から鉛筆を取り出して本の表紙に何かを書き始めた。
「……本当に行くのか?」
固い唾を飲み込みながらマージュは険しい顔でそう言った。
「……うん、行くよ。だから後の事はよろしくな!」
「後の事って言われても、俺は精々黙ってる事くらいしかできねぇぞ」
「それだけで十分だよ。でもなるべく師匠にバレないように時間稼いどいて!」
「無茶言うなよ……」
ため息をつきながら呆れているマージュをよそに、少年の手は本を開きかけていた。
「お、おい!」
咄嗟に大声をかけられて少年は半ばびっくりした表情でマージュに振り向いた。
「びっくりしたなぁ……どうしたの?」
「いや、どうもしねぇけどよ。なんつーか……絶対に帰ってこいよ」
そう言う彼の目はあらぬ方向へ泳いでいた。
(自分の事を心配してくれてるのかな?)
少年は自分の事を心配してくれる彼を見て(いい友達を持ったなぁ)と一人感動していると、マージュは続けざまにこう言い放った。
「お前が死ぬと俺が師匠に殺されるからな!」
そう言う彼の目は本気だった。
(ああ、こっちが本音か……)
少しガッカリしたが、自分の心配をしてくれてる事には変わりないとポジティブに考え、マージュに向かって笑顔で答えた。
「大丈夫! だから行ってきます!」
少年は本を思いっきり開いた。すると彼の体は黄金の光に包まれ、その光は徐々に収縮していき球状となって本の中へ消えていった。
「……終わったのか?」
あまりの眩しさに目を瞑っていたマージュが目を開けると、そこにはページを閉じた魔物語があるだけだった。
まるで何事もなかったのようにそこにある魔物語。しかし、表紙にはちゃんと「少年」がそこにいた事を証明するものが残っていた。
そう、彼の名――士導魔育の名が。
この物語の構想自体は1ヶ月前にあったのですが、中々アイディアがまとまらず、気がつけば1ヶ月経っていたという有様……orz
こんなグダグダな人が書いたものですがご愛読いただければ嬉しいです。
そして良ければこれからもご愛読をよろしくお願い致します。