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プロローグ

 キーンコーンカーンコーン……

 今日も部活動始まりのチャイムが鳴る。 窓の外からは運動部が活動を始めたらしく、コートに挨拶する元気な声が届いた。


 高校1年生でありながら文芸部の部長を務める俺は、今日も元気に挨拶を始めた。


 いや……そもそも1年生で部長というのがおかしいのだ。



「お願いします……」



 全く元気のない小心者と言わんばかりの小さな声が、この小さな空間に反響する。

 が、返事はない。

 それもそのはず、何故ならこの文芸部は今年作られ、何より部員が俺しかいないのだから。


 ラノベ書いてた維持をここで見せつけて文芸部の女の子にキャーキャー言われる存在になっていずれはハーレム作り上げるぞなどと、頭を溶かしていた俺はもういない。 ここには1人寂しく挨拶をし何もない小さな空間で頭を悩ませる俺しかいないのだ。



「ふぅ………」



 ため息混じりに、俺は先生に提出した入部希望の紙を見る。


 1年A組 上代 玲(かみしろ れい)

 アピール:齧りかけの情景描写が書けます。


 いやね、まずおかしいと思う。

 先生に提出した入部届けが自分のところに帰って来るんだもん。 最初は「はっ!?」ってなったよ。 でもこの教室に来たら納得。 誰もいないんだから。


 それより何だよ齧りかけの情景描写って、こんなの誰も採用しな……ってこれ書いたの俺だった。


 そんな自虐をしつつ、俺はまず何をすればいいのかを考えた。

 文芸部は、誌・小説、随筆、論評などの執筆をする部活動……でも近々コンクールがあるわけでもないし、練習しようにも原稿用紙も紙も何も持って来てない。 最悪ノートに書けばいいが……


 そんな事に頭を悩ましていると、コンコンッ、と扉をノックする音が。


 来た! 入部希望者だ!! これで俺のハーレム完成が!!!



「いやぁ! 来てくれてありがたい!! これで僕も一歩ハー…レ…ム…文芸部が……?」



 神様は残酷だ。



 扉を開ける先には……担任である「加藤 美香(かとう みか)」先生が立っていた。

 言葉の文末あたりを少し濁らせたが、別に嫌いというわけではない、寧ろ性格はいいし、元気だし、何たって男女平等。 男にも厳しく、女にも厳しい。

  胸元はまな板で、もう直ぐ独身で三十路を迎えるが、俺はそんなの構わない。 寧ろウェルカムだ。



「まーた、変な事考えてるわね……」


「いえいえ全然、寧ろウェルカムですよ」


「何言ってるのかしら……あぁ、そうそう上代くん」


「何でしょうか?」



 黒色で清楚な髪を揺らしながら、先生はちょいちょいと手招きのポーズをする。



「ここ誰もいないわよね?」


「はい…そうですが…?」



 丁寧に返している反面、俺の心は期待で満々だ。 普通こんなこと聞くか? いやこれ期待していいイベントだろ、みんながスキップするシーンだろ、これなんてエロゲーだよ。



「入部希望者が1人いるのよ」


「はい?」



 おっ…と、思わず聞き返してしまった。 入部希望者がいるはさておき、俺の期待していたイベントをへし折ったのだから。 別にそんなに期待はしてなかったが……こんちくせう。



「それでね、その入部希望者っていうのが……」


「が?」


「1年B組の教室にいるのよ」


「なにゆえに」



 瞬間、俺の頭はフル回転する。 はっ、これは新しいイベントだな。 入部希望者とかいいながら実はそれが、5年前別れた俺の同級生みたいな……いや、ないな。 そもそも5年前に別れた同級生は居ないわ。



「それで、一旦……来てもらいたくて」


「はぁ……」



 ベタなため息をつきながらも、俺は頷き了承した。 気難しそうな顔をしながらも何とか笑顔を見せた先生は、俺を1年B組へと連れて行った。











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