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水泳しかできない  作者: 野菜ジュース
最終章、インターハイ予選
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晴人の言葉

<晴人の言葉>


廊下を歩く足元にある、ちょっとしたでっぱりにつまずく翼。極度の緊張感。そんな一言では片付けられないほどの重圧が視界すら狭くさせる。


水泳を選んだ事が正しかったと言えるほどのいい背泳ぎが出来るのか・・・・

死んだ父にも納得してもらえるほどの平泳ぎが泳げるのか・・・・

全国大会にまで行ったその実力のバタフライを本当に見せる事が出来るのか・・・・

自分のクロールは足を引っ張ることはないのか・・・・


4人は最後のレースを目前にしている。水泳生命を賭けた最後のレース。その重圧はそれまでの練習による自信をも、全て消しさってしまうほどの存在感で4人に襲いかかった。最後のアップを終えた選手達は、プールサイドでそんな重圧に負け、前も見えずに佇んでいた。


晴人「間違っていない!!!」


そんな4人に向かって、ビクつき驚かせるほどの大声を出す晴人。『間違っていない!!!』そんなわけの分からない言葉を叫ぶその迫力に、レースを待つ4人以外の選手達も思わず驚き振り返る。


晴人「今日の結果がどんな結果であっても、お前たちの水泳は間違っていない!!インターハイが切れなくてもいいじゃないか!!続けてきたお前達の水泳をしっかり楽しでこいよ!!」


結果を出すのが全て、期待に答えるのが全て。いつしかそんな圧力に押しやられてしまっていた選手達。『インターハイのタイムを切れなくてもいい・・・・・・』諦めにも感じてしまうその言葉。だが、今の4人にとっては重圧から開放される一番の優しい言葉だった。


晴人「ここまで本気になって・・・・・・むきになって・・・・・・水泳を続けてこれた事が奇跡だ。水泳生命の最後のレース・・・・・・・どんな結果でも笑えるレースにしよう。」


拓也『インターハイに出場するのが俺達の目標です。』

道春『お父さんに結果を見せる僕の姿を、お母さんが作るんじゃなくて、僕が作りたいんだ・・・・・』

翔太『俺達が続けて来た水泳が無駄じゃ無かったって事を、結果で教えて下さい!!』

翼『親父・・・・・俺の今の目標は・・・・・・勉強じゃなくて、やっぱり水泳だ。』


それぞれが、それぞれの思いをぶつけ合い続けた日々。そんな純粋に気持ちをぶつけられたその理由は、水泳が好きだから・・・・自分達が続けてきた水泳の時間が何よりも大切だったからだ。


若い彼らのまだ短い今日までの人生・・・・彼らにとっては、それまでのほとんどの時間を水泳というスポーツに費やしてきた。苦しかった時ややめようと思った時。数多くのハードルを乗り越えてこの日を迎えたのだ。その全てをうやまい、認めるその晴人の言葉。


その言葉が持つ『心』は、4人を支配していた重圧を、しっかりと解放してくれた。

そして見つめ合う5人がついに、その最後のレースを迎える時となった。

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