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水泳しかできない  作者: 野菜ジュース
最後のレースまでに出来ること
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店長としての行動

<店長としての行動>


大胆にも、選手の泳ぐ種目を変えるという行動に出た晴人。そんな行動を起こさせたのも全て、一ヶ月後の勝負の為。時間がないそのタイムリミットでの最後の賭けなのだ。本当にこの行動が正しかったのか・・・・そんな不安を一番感じているのは、誰よりも晴人本人だ。


選手の練習時間が近づき、その不安が更に大きさを増し膨れ上がる。スタッフルームではそんな晴人が、テーブルの上に肘をつき、両手を絡めるように組み口元に当てながら深刻な表情でじっと一点を見つめ固まっていた。


松山「よっ!!晴人!調子はどうだ??」


そんなスタッフルームに、思わぬ来客が訪れた。


彩香「松山コーチ!!大丈夫なんですか?こんな所に来て!!」


いきなり訪れた松山に彩香は驚き、一瞬嬉しい表情を見せたが、『ここに来ていいのか?』という不安ある言い方をした。


松山「いやいや、俺もこんな会社も違う場違いなスポーツクラブに、何も考えず来たりしないさ。」


木島「誰ですか、あなたは!うちの会社の社員なんですか?いきなり我が物顔でスタッフルームに入ってくるなんて・・・・部外者は出て行ってください!!」


あまりにも不謹慎な登場をする松山に驚いた木島が、怒りをあらわにし言い寄った。


店長「いやいや、ちょっと待ちなさい木島君!彼は・・・・・・・俺が呼んだんだよ。」


予想外な店長の言葉に、晴人と彩香が不思議な表情で思わず目を合わせる。


木島「店長が??いったい誰なんですか?」


店長「私の昔なじみだよ。水泳の昔なじみ。古い・・・・昔のね・・・・・・・」


松山はそう言う店長に目を合わせると、力強い眼差しでうなずいた。


そんな理由では納得できない木島は、更に前に出て食って掛かる。


木島「昔なじみだからといって、こんな社内の内部まで入れてしまっていいんですか?」


店長「彼も現役でスポーツクラブに勤めている人間だ。問題ないさ。」


木島「それならなお更です!同業者の人間にうちのスタッフルームを見せるなんて・・・・・社外秘の資料など見られたらどうするんですか??」


木島は周りを見渡し、ゆっくりその場にいる一人ひとりに目を向けた。それを終えると、何かを訴えるきつい表情で両手をテーブルに強く突き、全てを吐き出すように叫び散らした。


木島「だいたい最近のここの職場は間違っています!!!なんで店長は売り上げにもならない選手コースを許してしまうんですか??なんでお前達はそうまでして、選手コースにこだわっているんだ??それが本当に会社の為って言えるのかよ!!」


店長「木島君!!!!」


感情的になる木島に、上司である店長が歯止めをかけた。そして、けなすわけでもなく、怒るわけでもなく、冷静な優しい目で木島に訴えかけた。


店長「君の気持ちはよくわかる。間違っても決していないさ。だけどな、選手コースには、そんな理由では覆せない特別な力があるんだよ。彼ら水泳コーチには、それに負けないほどの熱い気持ちがあるんだよ。そんなコーチがまだいる限りは、私は無理してでも選手コースを続けていきたい。」


そこまで言うと松山に目を向け、語りかけるように言った。


店長「私も始めは・・・・・そんな熱い気持ちでこの仕事を選んだのだからな。」


『選手コースを潰す』そんな野心を持っていた以前と、大きく変わった店長の考え。そんな店長を見ながら悔し涙を目に溜める。


木島「しかし・・・・・!!」


店長がそんな木島に近づくと『ポンッ』っと優しく肩に手を置き呟く。


店長「誰も君を責めたりはしないさ。みんな、君が一生懸命に仕事をしている姿を目の前で見てきたのだから・・・・・。君の仕事に対する熱意は・・・・・みんなにもしっかり伝わっているさ。」


その店長の言葉通り、そこにある数多いスタッフ達の優しい目が、しっかりと木島を包み込んでいた。


肩を落とした木島を別室に連れて行く店長が、振り返るように松山に目を向けると力強い捨て台詞を言い残し消えて言った。


店長「松山!!水元をよろしく頼むぞ。」


店長が松山をここに呼んだ。その理由はもう2人の間では、話し合っていたようだ。『晴人をよろしく頼む』その簡単な言葉でまとめられた本当の意味を実行する為に、松山は強くうなずき晴人とプールサイドに降りて行った。

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