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水泳しかできない  作者: 野菜ジュース
最後のレースまでに出来ること
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松山の秘策

<松山の秘策>


松山「それでわざわざ、こんな夜中に俺の家まで来たってわけか・・・・・」


一人暮らしのアパートの一室。和室の畳はもう何十年も張り替えていないようで、枯葉のように色あせている。周りを見渡すと、あからさまに男の一人暮らしだとわかる散らかりようだ。


晴人「お願いします!!残りの一ヶ月でタイムが縮まる秘策を、どうか教えて下さい!!!」


そんな部屋で正座をする晴人が、必死で土下座をしながら頼み込んだ。


もちろん、晴人がここにやってきた理由は男子チームの問題解決。その秘策を経験豊富な松山に教わりに来たのだ。


松山「ばかかお前は・・・・俺は職人だが、神様じゃない。そんな魔法みたいな技は持ち合わせていないよ。」


晴人が不安そうな顔で松山を見上げる。


晴人「それじゃぁ・・・・もう何をやっても無駄って事ですか?」


松山「いや・・・無駄かどうかはわからないさ。この一ヶ月でも速くなる可能性がある練習方法は、もうすでに教えてあるつもりだ。」


晴人「すると・・・・今のままを続けるしかないって事ですか・・・・・」


残念そうにうつむき、表情が曇りだす晴人。


松山「・・・・・・・はぁ~・・・・・仕方ないな。一つだけ忠告をしておいてやろう。」


その言葉を聞き、顔を上げるとさっきまでの暗い表情がうそのような、輝くほどの笑顔を松山に投げかけた。


晴人「ありがとうございます!!」


その忠告の大切さを、一瞬の間で強調する松山・・・・・・


松山「・・・・・・選手の資質を見抜け・・・・・・以上だ。」


晴人「選手の資質???それってどういう事ですか?」


もっと深くその意味を知りたい晴人は、さらにしつこく食い下がる。


松山「これ以上は何も言わん。自分の担当している選手の事だろ?少しは自分で考えろ!!ほらっ!!今何時だと思っているんだ??こっちだって早く寝たいんだから・・・・・今日はもー帰ってくれ!!」


そんな松山に申し訳なく思ったのか、素直に言う事を聞くと晴人は松山の家を後にした。


晴人「選手の・・・・・資質かぁ・・・・・・」


道を照らす街灯の下。そこを歩く晴人は首をかしげながらその意味を探り続ける。


その足取りはふらつき、よたよたよたよたと進んでいく。そして、街灯の灯りが届かない、深い深い闇が広がるその奥へと迷うように消えていった。


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