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水泳しかできない  作者: 野菜ジュース
最後のレースまでに出来ること
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不安の残る男子チーム

<不安の残る男子チーム>


あのレースの後、ついに夏に向けた最後の練習が始まった。もう残すレースはインターハイと全国中学校の予選会のみ。水泳生命すべてを賭けた、最後の予選会への勝負が始まったのだ。


沙羅「今日の美月速すぎよ・・・・・・・・全然敵わない!!」


美月「えへへぇ・・・・すごいでしょ?」


そんな勝負とは裏腹な、屈託のない笑顔で楽しい会話をする2人。女子達はもう揉め事など一切ない、仲の良かったあの頃の4人に戻っていた。


女子チームがベストを出したあのレース、もう一度そのタイムをよく見てみると、見事に全国中学校の出場タイムを突破しているタイムだった。しかも驚くほどの大幅な差、その全国中学校のタイムを余裕にクリアしていたのだ。腰痛でまだまだよい結果ではなかった美月を思うと、残りの練習をしっかりこなして、大きな怪我や病気さえしなければ、間違いなく目標だった全国中学校には出場できるタイムだ。あれだけベストが出ずに落ち込んでいた女子達も、今は安堵感のようなリラックスある雰囲気の状態を築けていた。


しかし・・・・そんな楽しそうな雰囲気の女子達の横には、まだそんな安堵感も味わえていない男子達がいた。元気もなく、表情も硬い。なんだか見た目だけで重苦しい空気を感じ取れてしまう。それもそのはず、前回のレースは、インターハイにまったく届かない残念なタイム・・・・ベストも更新していなかった。


翔太「俺達・・・・ほんとうに・・・・・インターハイいけるのかな・・・・」


嬉しそうに喋る女子達を見て、不安が募った翔太は誰もが心に思いながらも口にはしないでいたその言葉を、ポロリと独り言のようにこぼしてしまった。


拓也「ばか!!やれるだけの事をやるしかないだろ?残り一ヶ月!!出来る事をやっていくんだよ!!!」


道春「でも・・・・このままじゃ、タイム切れそうにないよ・・・・・・」


母親とのトラブルから、ずっと前向きに練習ができていた道春も、この時だけは弱気な発言を漏らす。


道春「計算だと、みんながベストタイムで泳がないと、インターハイのタイムは切れないし・・・・・・」


厳しい現実。数字でその状況を明確に判断できてしまう水泳というスポーツ。確実に今の実力では、インターハイには出場できない事をその数字が物語っていた。


翼「だいたいよ、全員が全員ベスト出す気で、本気の練習してるとも俺は思えないしな!!」


口をとがらせた翼が、誰のことを言っているかがわかるように、わざとらしく翔太を見る。


翔太「なっ・・・・・なんだよ!?俺だっていつも真剣に練習やってるって!!」


翼「それにしたって練習弱すぎだろ?強くなるように変わる努力はしてんのかよ!!」


大人の会員の大久保ともめた時、あれだけ素直に熱い気持ちをぶつける事ができた翔太。そんな翔太が手を抜いているとは思えないが、正直誰が見ても明らかなほど練習に弱い部分が見えていた。


翔太「いい加減にしろよ翼!!!てめーだって、一度は俺達裏切って水泳やめるって言ってた立場だろ??そんな奴に文句言われたくねーんだよ!!!」


翔太はそう言いながら肩を突き飛ばすと、けんか腰の表情で翼を睨んだ。それにも負けず、まさに目と鼻の先という所まで顔を近づける翼。


翼「こっちにはこっちの事情があるんだよ!!俺がどれだけ苦労しながら水泳やってきたか、てめーにわかるのか?」


厳格な親との考え方の違い、アルバイトと勉強をも両立させながら続ける水泳・・・そんな環境から選ばざるを得なかった『水泳をやめる』という決断。そんな苦労を簡単な『裏切り』という言葉で片付けてしまう翔太に、翼は心の底からムカついた。


そんな突発的なぶつかり合いが、そこで起こっている事にやっと気が付いた晴人。


晴人「おい!!!翼!!!翔太!!!」


晴人が近づきその2人の距離を遠ざけるも、時すでに遅い。それぞれが一番突かれたくない所をバカにされ、インターハイの不安も重なり、ついた火は収まる気配を見せない。そんな中、その話の内容をまた元の岐路に戻すかのように拓也がまた割って入る。


拓也「このままでは、インターハイにいける気がしません!!何か・・・何か秘策でもないと・・・・ただ練習で泳ぐだけでは無理だと思います!!」


そんな強い眼差しで見つめられても、何も言い返してあげられない晴人。


道春「コーチ、僕達不安なんです!!不安だからこんな衝突だって起こしてしまう・・・・・・」


翼と翔太の治まる気配のなかった火も、道春の言葉を聞くとすぐにうつむき消えていった。


残り一ヶ月で変われる事、どうやったら速くなれるのか・・・・・・・・その場で選手達に答えようと晴人は必死で悩み考えるが、どんなに考えても今の晴人の知識ではその答えはまったく見つからなかった。


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