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水泳しかできない  作者: 野菜ジュース
選手の故障、選手の恋愛
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腰痛の美月

<腰痛の美月>


女子間の揉め事。それは、男の晴人にとっては大きすぎる問題だった。性別の違いが招く考え方の違い。男の晴人がその女子達の中に入り込んで、全てを解決しようとしても、さすがに今までのようにそうはうまくもいかない。女子間の揉め事はそれだけ特殊で、デリケートな難しい問題なのだ。思い悩んだ晴人は、今自分が出来る唯一の事、コーチとしての成長だけを頭に松山の元を訪れた。


『美月の腰痛への対応』これがそのコーチとして自分が出来る事。晴人は、松山に腰痛に対する助言や対処法をしっかりと教わった。


翌日、練習には7人の選手がそろっていた。男子の4人、そして女子は華を抜いた3人だ。現れない華に不安を感じたが、とにかく美月にだけは出来る限りの対応をしてあげようと7人に近寄り言った。


晴人「美月だが・・・・・腰痛がひどいのでしばらく陸トレとリハビリに専念してもらう。陸トレは俺の支持の元、腰を痛めず腰痛を軽減させる筋力トレーニングを行う。リハビリと言うと大げさだが、一応バタフライと平泳ぎを避けた無理のない練習をやらせるつもりだ。それに対しては、誰も文句を言わないように!!」


沙羅への当て付けのような言い方。それでも、今は美月をかばった行動を取ってあげないと、沙羅がリーダーの女子チームでは美月の居場所がなくなってしまう。その晴人の言葉を聞いて沙羅が答えた。


沙羅「勝手にやってればいいじゃないですか。私は、自分の身体に何があっても泳ぎ続けるつもりです。最後の・・・・・水泳生命最後の勝負ですから。」


その言葉に、またムッとした表情を作る美月。それでも、これ以上の揉め事はさすがに嫌なのか、我慢をするように黙り、その場を離れ陸トレを始めた。


そんな日々がずっと続いていった。相変わらず練習に顔を出さない華。妹の舞に家での様子を聞いてみても、ほとんど自分の部屋にこもりっきりで話すことも出来ず、気づいたらどこか外に行ってしまっているという。それでも、美月の腰痛だけは回復に向かい、少しだけ希望が見え始めた。


そんなある日、練習を終えた拓也が晴人に近づき、言いにくそうな表情で口を開いた。


拓也「水元コーチ。大切な話が・・・・」


なにやら複雑なその表情。不安感じるその表情だがそれでも、問いただすように晴人が聞き寄った。


晴人「なんだ?深刻な顔をして・・・・」


拓也「実は・・・・・昨日、華を見かけました。」


その言葉を聞いた晴人が、拓也を追い込むように詰め寄る。


晴人「何??どこだ?どこにいた?」


拓也「・・・・・・男の人と・・・・・一緒でした。公園で・・・・・・」


すぐにその事態を察知する晴人。彼氏の存在だ。みなまで言わずにも理解する晴人を見ると、拓也は続けてまわりに気づかれないような小声になり語りだした。


拓也「この事が沙羅にばれると・・・・もっと大変な事になってしまうと思います。それだけは避けないと・・・・・」


間違いのない拓也の意見。水泳一筋の沙羅にとって、そんな恋愛関係にある華の事を知ったらどのような事態になるかは誰の目からも明らかだ。その不足な事態に対して晴人は無言でうなずきを返した。


恋愛問題、さすがにそれにまで踏み込む勇気は晴人には無い。コーチと選手、距離の近すぎるその上下関係は、どこか父親と娘に似た立場関係にもある。その立場で、どんなに納得いく伝え方をしても、水泳を熱く語ったとしても、素直に理解してもらえる自信が無かったのだ。女子の恋愛はそれだけ難しい問題に思えた。


立ち去る拓也を見送ると目線を今度は拓也から彩香へと変える。そして、何かを決めるように大きくうなずく。

晴人は、最後の望みを彩香に託す事を心に決めたのだ。

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