コースを使えない選手達
<コースを使えない選手達>
翌日の選手練習時間。18時30分になると同時に、狙っているのがばればれの態度で現れる大久保。そして、もちろんといったわかりやすい動きで、選手が使うべきそのコースに素早く入った。
彩香「あっ・・・・・・すみません・・・・・」
気づいた彩香がすぐに声をかけるも、無視した気づかない振りの態度で泳ぎ始めてしまう。
プールサイドでただただ呆然と泳ぎ続ける大久保を見つめる晴人。その横に近づく店長が、晴人の耳元で小さな声の言葉を漏らした。
店長「くれぐれも・・・・・・問題にならないように!!」
あてつけがましいその言い方。晴人は一瞬その店長に目を合わせると、すぐに集まり始めた選手達のほうに駆け寄っていった。
沙羅「水元コーチ!またあの人私達のコースで泳いでいるじゃないですか!!どーいう事ですか?」
翼「この大切な時期に・・・・・なんであんな人にコースとられなきゃならないんだよ!」
選手の苛立ちもピーク。晴人はそんな選手達の苛立ちを、押さえ込むように語る。
晴人「落ち着けお前達!今は我慢するんだ・・・・そして、あの人にみんなの誠意を見せるんだよ!!ぶつかり合っても何も解決しないぞ!!あの人に理解してもらえるような態度がお前達に必要なんだよ!」
晴人なりのやり方で、選手に気持ちを伝える。それでも、そのコースを取られたという事態しか目に映らない若すぎる彼らは、強がりの態度しか示せない。
美月「伝えるも何も・・・・聞く耳持たずの態度じゃないですか!!私達には時間がないんです!!」
拓也「勝負の夏が迫っているんですよ!いい環境で練習できなきゃ・・・・・せっかく良くなってきたタイムも、これ以上速くなりませんよ・・・・」
晴人「だからこそ、自分達でいい環境を勝ち取るんだよ!!あの人なら誠意を見せれば伝わる!!態度で見せるんだよ!!」
怒鳴り散らし強引に大久保さんの前に突き出す、そんな押さえ込むような態度で理解はさせない。
説得をして分からせ、自分から大久保さんの前に行き、誤る態度を起こさせる。それが出来ないと本当の謝罪とは言えない。
以前大久保に言い放ったその言葉、まさにそれを実行に移すような晴人の態度だ。
それでもまだその気持ちが伝わらない翔太はそんなやり取りを無駄に思ったのか、頭をかきながらプールに近づき、誰に言うわけでもなくみんなに叫んだ。
翔太「あ゛~!!!もうめんどくさい!!時間がもったいねーから早く1コースでも練習始めちゃおうぜ!!」
道春「そうだよ!あの人だってこんな行動、その内飽きて2・3日もすればどいてくれるはずだよ!!」
晴人が伝えたいその事は、まったく伝わっていないこの状況。それでも、その場しのぎの1コースでの練習に望んでくれる選手達にほっと肩をなでおろした。泳ぎ始める選手達を見ながら、彩香が晴人に近づく。
彩香「これじゃぁ・・・・・・毎日が不安ですね・・・・・・・・」
解決せぬまま進んでいくその事態。溜め込まれていく反感は、爆発力が増していく。誰かがその地雷を踏むのか、それとも自ら溜まった思いを爆発させてしまうのか。どちらにせよ、日を追う毎に溜め込まれていくその苛立ちは、大きなトラブルとして爆発してしまうのは目に見えて分かっていた。
晴人「ああ・・・・・何とかしないとな・・・・・・」
答える晴人の心の中では、ぎりぎりのやり取りを続ける選手達への不安が確実に募り続けていた。




