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水泳しかできない  作者: 野菜ジュース
大人のクレーム
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昔の教育と今の教育

<昔の教育と今の教育>


何とか落ち着きを取り戻した2人をプールサイドに上がらせる晴人。上がるとすぐに、翔太はプールの奥の隅でふてくされた様に座り込んでしまった。大久保は、プールにある大人のお客さんの為に用意されたプラスチックで出来た肘掛け椅子に腰をかけ、晴人との話合いを始めた。


大久保「結局、あなたの教育がなっていないんじゃないですか?」


お客と店のスタッフ、そんな関係を利用した説教じみた大久保の態度。そんな大久保の言葉に、もちろん言い訳も弁解も出来ないスタッフである晴人。


晴人「すみませんでした。しっかり教育はしているのですが・・・・・・・本当に申し訳ございません。」


とにかく平謝り。そんな晴人の態度を見て、大久保が調子に乗るような態度を見せる。


大久保「だいたいね・・・・・・今回の件をなくしても、いつも彼らを見ていて思っていたんだよ!!練習前の態度・・・・練習中の態度・・・・練習後の態度、全てに礼儀が感じられない!!」


晴人「もちろん私としても、泳ぐだけではなく『しつけ』もしっかり教えていこうと思っているんですが・・・・今の子はなかなかうまく行かなくて・・・・・・」


相手の話に合わるような態度で大久保を落ち着かせる。それでも納得がいかない大久保は、変わらず激しく文句を言い続ける。


大久保「それじゃぁ彼のあの態度はなんだね?ふてくされて座り込んでいるじゃないか!あんたも教育者ならね!私に謝るより先に、彼の所に行って首根っこ捕まえて私の前に突き出し、彼に謝らせるべきなんだよ!!!そういう基本的な教育も出来ないのに、ちゃんとした水泳指導なんて出来るんですかね??!」


さすがにその発言には、イラッとした晴人。少しだけ相手をこ馬鹿にするような発言をする。


晴人「そんな首根っこ捕まえるなんて・・・・本人に理解させた上で誤る行動を起こさせないと、教育なんて出来ないんじゃないですかね・・・・・・」


平謝りだった晴人がちょっとした隙に見せた、少し反抗的な態度。その態度を瞬時に察知した大久保は、収まり始めたその気持ちをまた荒々しく震わせ晴人にぶつけた。


大久保「なんだねその態度は!!それが出来ないからこんな事態になっているんじゃないのか!!」


またしても逆上する大久保を見た晴人は、『しまった!』という顔で一瞬肩をすくめる。


大久保「だいたいね、学校にしろ何にしろ最近の教育は甘すぎるんだよ!!そんな甘い教育をしているから、過保護な親や、甘えすぎの子供が増えてしまうんだ!!!」


晴人は、一瞬だけ道春を見つめるとあの時のトラブルを思い出した。それでも、改善された道春を思い、また大久保に向き直り意を決して言い放った。


晴人「それが今の教育なんです!!暴言や力だけで押し付ける教育は、もう今の時代は教育とは言わないんですよ!!!」


睨みあう晴人と大久保の目と目。大久保はその目をそらし椅子から立つと、小さな声を漏らしながらため息をついた。すると、もう熱くけんかをするのも馬鹿らしいと思ったのか、落ち着いた態度に変えプールに向かい歩き始めた。


大久保「俺が子供の頃は・・・・あんな態度する奴は引っぱたいて、引きずりまわされていたけどな。」


晴人「もう時代が違うんです。今の時代、学校の先生でも水泳のコーチでも子供に手を上げたら会社を首になりますよ。」


その言葉を聞いた大久保が、プールに向かう足を止め晴人にまた横目を向けた。その目は、さっきまでの苛立ちがうそのような、驚くほど落ち着いた優しい目をしていた。


大久保「人と人との繋がり・・・・・それが薄れてしまっているから、手を上げるだけで文句も言われ、問題になってしまうんじゃないですかね・・・・・・あなたも、あの選手との信頼関係に不安があるから手を上げる事ができないんじゃないですか?」


その思いを伝えると、またプールの方に向き直し、ゆっくり歩くとプールの中に入り静かに泳ぎ始めた。


なんだか何かを教えたいような・・・・・・・そんな態度の大久保だったが、泳ぐそのコースはやはりいつも選手が使っているそのコース。それを見た沙羅が、投げやりのような言い方で晴人に訴える。


沙羅「・・・・・どーするんですか??結局うちらのコースで泳いでいるじゃないですか!!1コースしかあいてないですよ。」


そんな沙羅を見た晴人は、選手の前で心通わせるような笑顔を作る。


晴人「仕方ない!今日は我慢して1コースで練習しよう!!」


それを聞いた選手達が、愚痴るように迫る。


美月「え??1コースで8人泳ぐの??さすがに狭すぎませんか・・・・・?」


翼「まったく自分勝手だよな・・・・・何様なんだよあの人は・・・・」


拓也「明日はあの人が来る前に、練習を始めちゃおうぜ!!」


そんなみんなの声を聞いて、座り込んでいた翔太は立ち上がると素早くゴーグルを付け直し足早にプールに飛び込む。プールから浮き上がるとみんなを睨みながら力強く言った。


翔太「明日も同じような態度されたら、今度こそ俺がバシッとどけてやるよ!!」


沙羅「宜しく頼みます!!頼りになりますね翔太さん!!!」


晴人はそんな会話を笑顔でする選手達をプールサイドから見ながら、なんだか少し大久保の言っている事も正しいような、思い迷う複雑な気持ちになっていた。

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