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水泳しかできない  作者: 野菜ジュース
はじめての大会
19/71

果たしたい目標

<果たしたい目標>


ピッピッピッィィ~・・・・・・


出発員「よーい・・・・・」


ピッ!!!


女子選手達の運命を分ける出発のシグナル音が静まり返ったプールに響き渡った。

1番目の泳者は舞、続いて美月、更に華と続き、最後は沙羅。


その泳ぎを見ながら、晴人もストップウォッチでタイムを刻んでいった。


晴人「ダメだ・・・・・このままじゃ切れない・・・・・」


1人1人のタイムをストップウォッチで確認する。そして、最後の沙羅が泳ぎきると、手持ちのストップウォッチでそのトータルタイムを見た。


晴人「全然だな・・・・全国中学校のタイムになんか到底届かない。」


肩を落とす晴人を見て、すぐに彩香が聞き寄った。


彩香「ベストタイムはどうなんですか?」


その質問にも、晴人は残念そうな無言の顔で大きく首を横に振った。


レースを終えて、すっかり肩を落とし落ち込む女子選手達。そのまま静かに、サブプールの方へと消えて行った。それを見た晴人は、深く悩む表情を見せると静かにゆっくりと観覧席を立ち上がり、女子選手達を追いかけるようにサブプールへと向かった。


彩香「あれっ?・・・・水元コーチ!!?」


彩香は、いつの間にか観客席から消えてしまった晴人を探し、周りを見渡しながら独り言を呟いた。




レースを泳ぎ終わった選手は、サブプールを使ってレースの疲れを取る為に泳ぐ『ダウン』を行う。晴人がサブプールに着くと、そこにはそのダウンも出来ずに座り込む4人の姿があった。サブプールまでやってきた晴人が、4人を見つけるとゆっくり歩み寄りよる。


晴人「みんな・・・・・残念だったな・・・・」


気の使ったコメントも出来ず、とにかく一言言いたかった晴人は、ストレートにその言葉だけを伝えた。


沙羅「簡単に言わないで!!!私達がどれだけこのレースに賭けてたと思ってるんですか??」


八つ当たりにも思えるその台詞。その言葉は、今までの沙羅らしく力強く激しくもあったが、いつもとは違い涙に震えた悔しさも込められていた。


美月「ここで、切り替えたかったんです・・・・ずっとベストタイムが出なかったレースを、ここで終わらせたかったんです。」


舞「みんなで気持ち揃えて、絶対ここではベスト出そうって・・・」


華「もうベストタイムが出ないレースはやめようって・・・・・ここで全て変えようって・・・・・」


全員が涙を流しながら晴人に訴えかけた。


『コーチにはついていかない』


その言葉は、ただやる気がないからではなく、コーチを信用できないから。それがしっかり伝わる紛れもないやる気を、その涙から感じられた。ずっと戦い続けてきた水泳、自分達なりに努力を続けてきた水泳、それでもずっと結果が出せない大会が続いて・・・・ついには最後の目標としていた今回の大会でも結果が出せないでいて・・・・・・その結果で全てを壊されてしまったようで、4人はとまらない涙を流し続けた。


沙羅「私達・・・・もうダメかも・・・・・諦めちゃうかも・・・・・」


あれだけ強気で、負けん気があった沙羅が、始めてもらした弱気の一言。その一言で、その場の空気が一瞬にして、誰も喋る事が出来ない諦めの雰囲気へと変わった。


晴人「みんな・・・・ジャンケンって知ってるよな?」


そんな重い空気の中、押し黙る選手達の前で、晴人がいきなり場違いな『ジャンケン』の話を始めた。


晴人「ジャンケン3回勝負!!1回負けて、2回目も負ける、だけど3回目だけは勝った!!それでも2対1でジャンケンは負けだ。でもそれって本当に正しいと思うか?お前達はどう思う?」


涙目そのままに、わけもわからずただ晴人を見つめる4人。誰も答えないのを見ると晴人がその話の続きを語りだした。


晴人「俺は違うと思うんだ。2回負けたって最後の3回目で勝ったんだ!!それなら、3回目に勝った人のほうが勝ちなんじゃないのか??」


意味もわからず、涙目を丸くさせる選手達。晴人は真剣な顔を作ると、そんな4人に、目と目を合わせた。


晴人「水泳ってそういうものだと思う・・・・・・何回負けたっていいじゃないか!!本当に勝負したい、全国中学校がかかった最後のレース・・・・・そこで勝てればいいんじゃないのか!!?今日、全国中学校のタイムを切ったって全国中学校に出場出来るわけじゃないんだろ!!?最後に勝てれば、最後に笑えればお前達の勝ちなんじゃないのか??」


確かな事を言っている、相違ないたとえ話。そして、その話を理解した選手達が、その言葉に引き付けられていく。


晴人「もし・・・・・もしまだ諦めずに・・・・水泳を続けて、全国目指す気持ちがあるのなら・・・・明日からの練習を俺にやらせてくれ!!!俺は・・・何があっても、最後のジャンケンには勝たせてやるから!!!!」


それを言い切ると、もう一度しっかり女子選手一人ひとりと目を合わせあった。

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