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水泳しかできない  作者: 野菜ジュース
気持ちだけでは築けない信頼
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取り戻した信頼

<取り戻した信頼>


選手の練習時間が近づくスタッフルーム。その一室で、店長と木島がまたしてもヒソヒソと悪巧みの会話を始める。


木島「いよいよやつも終わりですね。選手も2人辞めそうですし・・・・・・これでやっとプールのコースも増えて大人のフィットネスクラブらしくなる。」


『しめしめ』といった憎たらしい顔をする木島。しかし、店長は何故か首をかしげ悩ましい仕草を繰り返す。


店長「どうだろうな・・・・まだまだそんなうまくはいかないように感じるが・・・」


晴人「さぁ!今日の練習を始めるぞ!まずアップから説明する!アップは・・・」


プールサイドでは選手2人に練習メニューを説明する晴人がいた。


翼と翔太はこの日も練習には顔を出していなかった。晴人は自分の思いを全て翼にぶつけた。それでも練習に来てくれないのであれば、諦めるしかない・・・・そこまでの覚悟を持っていた。


すると突然を思わせる勢いで、2人の水着姿の男が更衣室から現れる。


拓也「翼!!翔太!!」


その2人は、ずっと練習に来ていなかった翼と翔太だった。


2人は嬉しい笑顔で叫んだ拓也の横を真顔で素通りすると、そのまま晴人に向かって歩き近づいて行った。そして、晴人の前で立ち止まると、深い表情でその思いである覚悟を伝える。


翼「・・・・・・・・・・次、納得いかない練習があったら・・・・・自分は水泳をやめさせて頂きます。」


その横には、翼と同じく決心の強い表情をした翔太がいた。


2人の決意。その言葉には今まで続けてきた水泳に対する決意を示した気持ちが込められていた。そしてそれは、晴人に対する最後の賭けのような一言でもあった。その言葉に対してどう答えるかの最後の賭け・・・・


晴人「お前達に水泳はやめさせない。もし、また俺を信用できなくなったらすぐに言ってくれ。俺が競泳コーチを辞める。」


晴人の迷いのないストレートな答え。


『そんな簡単に水泳をやめるな』でも『そんな気持ちだったら水泳をやめてしまえ』でもない、説得力ある晴人の本意。『2人に非はなく自分が間違っているのだ』と言うその姿勢がまた、2人の心を強く突いた。その気持ちを聞いた2人は機敏に礼儀正しい一礼をすると、そのまま頭を下げた姿勢で大声を叫ぶ。


2人「宜しくお願いします!!」


その姿を見ながら、何回も大きくうなずくように首を縦に振る晴人。そしてまた、インターハイを目指す4人での練習がスタートをした。


なくしてしまったコーチとしての信頼。それをまた勝ち取り、コーチとしても成長を遂げた晴人。4人は晴人を自分達のコーチとして認めてくれたのだ。


彩香「良かったですねー。水元コーチ。」


その時、彩香が始めて水元をコーチと呼んだ。それはある意味、彩香にとっても晴人をコーチとして認めた瞬間だった。


彩香「後は・・・・・」


ゆっくり目線を女子選手達に向ける彩香。


彩香「彼女達をどーするかですね。」


そんな目線を追うように、晴人が自主練をする彼女達に目を向けた。そして深く何かを考えるような表情を作ると、彩香に目線を戻し思い立ったように口を開いた。


晴人「男のコーチでは、伝わらない事もあるのかもしれない・・・・彩香コーチ。申し訳ないけど一度彼女達と話をしてくれませんか?」


最後の望みとも言うべき女性である彩香の存在。彼女が味方についていてくれている事に甘えた晴人の一言だった。


そんな晴人の態度と気持ちがわかっている彩香が、いつもより真面目な硬い顔に表情を変えた。


彩香「はい。わかりました。」


見つめる視線の先にいる女子選手達は、そんな決意を決めた彩香に気づく事もなく練習を続けていた。


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