目標のレース
<目標のレース>
プールから見上げる広い観客席。
大勢の人達が必至で応援をしながら俺達4人のレースのスタートを待ち続けている。
その熱気と活気がびしびし伝わり、自分が泳ぐクロールへの不安がより一層高まってきた。
ピピピィ・・・・・ピィィイ~・・・・・・!
レーススタート前に鳴る審判長の高らかな笛の音。
目標だった、高校3年夏のレース。
そのレースがついにスタートするのだ・・・・・・
今日までの苦難な出来事の数々を、頭で思い振り返る・・・
その日々を思い出しながら自分の気持ちを高ぶらせるために、何度も水着の上から太ももを強くたたいた。
本当に・・・俺達4人で良くこのレースを迎える事ができた。
ばらばらだった俺達・・・
信用してもらえなかった俺達の水泳・・・
叶うとも思えなかった俺達の目標・・・
ずっと築けなかった、コーチとの信頼・・・
一人のコーチとの出会いで、その全てが前向きに変わり、夢をあきらめずにここまで来ることができた。
数々の衝突や問題。その全てを乗り越える手段をそのコーチが与えてくれた。
ピィィィィ~・・・・・
そんな感傷に浸っていると、審判長の2度目の笛の合図が耳に入った。まだ、思い出にふけるには早い。とにかく今は、そのコーチに結果を見せなければならない。俺達の目標を実現させなけらばならない。振り返るのはそれからだ。
2度目の笛の合図で、静まり返る観客席・・・・
後は審判長の出発合図を待つだけだ。
出発員「よーい・・・・・・・・・・」
ピッ!!!!!!!
ついに・・・・高校最後の目標に向けた、チャレンジのレースがスタートをした!
その一年前・・・・