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【もう出ねぇ! 五・七・五の! 在庫がねぇ!】第20話 学祭バトルレボリューション その20

「星野さん」


「ん?」


「力を合わせて頑張りましょう」


「んん」


 雨宮さんが星野の手を握る。もう星野も滅多なことはできないぞ。ここまででもう星野は悪事はやりつくし、トドメの英雄でもうやりすぎた。


「んんー」


 星野がスマホで大学の設備や施設を調べている。


「つまり、こうだ。イカサマを疑われないようなシンプルな勝負でありつつ、無効試合の無限ループで時間を潰されないように大差がつかず、時間つぶしの悪印象がないイメージがいい勝負にする。そうしないと権利だけ振りかざす卑怯な弱いものが夕暮れまでさらに弱いものを叩く……おっとこれは失言だ申し訳ない」


 なんだこの不愉快選手権。


「ということで、次の勝負は! 『あまーいお料理対決』だ!」


 バァシィーン!!


「『あまーいお料理対決』だとぅ……」


「『あまーいお料理対決』の内容は至ってシンプル! あまーいスウィーツを作る勝負だ。作るスウィーツは! “アイスクリーム”!」


「アイスクリーム……」


「あいすくりーむ……」


「aisu-kuri-mu……」


「競技をする場所は! “極地再現! マイナス20度巨大冷凍庫”!」


「星野てめぇバカ野郎てめぇ」


 ハイジさん半ギレ。


「この大学の環境再現のガチさは知ってるはずだ」


 そう、星野と良崎は4月に巨大台風再現扇風機の向かい風を受けながら現金5万円を取りに行く、というゲームをやらされている。


「ガチだからこそ決着も早い寒さ。言っても、一番有利なのはそちらさんだと思うけど?」


「あぁ?」


「村上は北海道の人でしょ?」


「9月に氷点下の備えなんて心構えも出来てねぇんだよ」


 村上がブルース・リーのようにチョイチョイと星野を挑発。


「体験したことがあるのとねぇのの違いを見せてやるよ。わたしなら『ゴールデンカムイ』の世界に叩き込まれても余裕で生還する。わたしは不死身の村上だ」


 そういうこと平気で言えちゃうあたり村上さんは『ゴールデンカムイ』の登場人物としての適性はある。


「それに、ねぇ。女の子は脱げばいいんでしょう的な浅薄な考えはダメだ。厚着してもカワイイのが真の美人! 肌の露出と薄着だけで勝負している奴とは違うんだよ。なぁ、花屋敷」


 花屋敷狙い撃ちは変わらないか……。

 だが極限でこそ試される! 鍛えられる! 星野の言う通りなのだ! 見ている人を刺激するだけならば、ギリギリまで脱げばぁ? と雑な気持ちにしかなれない。しかし簡単に脱ぐような人たちの刺激にはありがたみがない。そして! おそらくマイナス20度の世界とは、もうおふざけ、オシャレなどで魅せる余地などないレベルの極寒(ゴッカン)! ヒーローショーのコスプレなどしていたら死んでしまう。これはもう、装備品を整えるために、時間を費やすことが必須! 「こしゃくな時間稼ぎ」ではない!




【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】

【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】




 前哨戦:極寒リポート

 順:雨宮チーム→水原チーム→良崎チーム→花屋敷チーム


「はい、ということで極寒巨大冷凍庫にやってきました! これからわたしたちはあの中でアイスクリームを作ります」


 雨宮さんがローカルアナウンサーのような異常なテンションでリポート開始。


「あぁスゴイ寒さです! メガネが一瞬で! ウワーすごいですよ! もう何も見えません! 寒い! ちょっと……ダメな寒さですね! 危険な寒さです! メガネが、メガネがとても冷たくて! ちょっと危ないです! あーこれはいけません!」


 驚くべき寒さなのは全員わかっているんだが、「ダメ」とか「危ない」とかマイナスな言葉ばかり並べてはダメだぞ雨宮さん。マイナスなのは気温だけで十分だ。ちなみに雨宮さんは、セリフやカンペが用意されていればそういったものを読み上げる技術は非常に高い。詳しくはウェブで! そういった意味では一番女子アナ適性はあることはあるのだがアドリブがポンコツすぎる。


「今年一番の寒波です!」


 ほらな! よかったはずの地頭さえもぶっつけ本番だと急激にポンコツ化する。


「どうぞ!」


 雨宮さんがハイジさんにマイクをパス。人一倍寒さに弱いハイジさんは既に顔が白い。『ゴールデンカムイ』なら真っ先に死んでいるだろう。


「おぉ~っとぉ痛烈な冷気だ! まさにフリージングコンビニエンスストア! 冷気の伊勢湾台風! 水原銀子もこの表情だ! 仏の水原が今、まさに本物のホトケになりつつある! 氷点下20度、ここで作られるのは果たしてアイスクリームであるのか、それとも怪談が得意な落研のスーパールーキーの新ネタ“全員死亡のミスコン”か! 冷凍庫内はさながら極寒無法地帯! 女子たちが纏った防寒具も、滾る熱気も無駄だ無駄だと貫くディオ・ブランドーの凍てつく視線であります! この冷凍パンデミック! 氷点下! それは、覚悟なきものは決して超えてはならない、超えてはならない三途の川! しかしこれは現実だ! いよいよ最期が近づいてきたのでありましょうか、舌の根が凍ってきてまいりました! 前哨戦ンンン~!? 星野の采配に、全員が怒っております!」


 よくある当事者にならないために司会者に落ち着くための実況と解説のスキル。水原さんも本当にホトケになりかけている。一番防寒の心得がある村上が水原さんに小声でアドバイスをしているが長期戦は難しいぞ! ここでマイクが良崎にパス。小林氏と良崎が小声で打ち合わせ。


「異常気象、激動する世界、これらは全て、裏社会からのメッセージなのかもしれません。生き残れる人類は、ごくわずかと言われています。信じるか信じないかは、あなた次第!」


 ビシィッ!


「今後到来することが確実視される新・氷河期! リーベルトが訪れたのは! 超巨大冷凍庫! 選ばれた人間のみが氷河期に乗り切るための! シェルターと噂されるこの場所に! 初めてリーベルトは立ち入ることを許可された!」


 良崎のリポートと小林氏のナレーション。


「いやぁ~これはスゴイでしょぉ~。学生のカメラが、人類の行き先を左右するこのパワースポットに、入ってきちゃったんだよね、これはもう、あと戻りできないからね! 氷河期を乗り切るノアの箱舟の内部に、今迫っちゃっているわけだからね!」


「人工知能、各種パワースポットに隠された暗号を解読し! 人類への警鐘を鳴らしてきた都市伝説研究家リーベルト! 果たして彼女は、今度は何を提言するのか!」


「新・氷河期を生き残れる人類の選別は、もう始まっちゃってるわけだからね。その選別を行っているとされるのが、世界の裏で糸を引いて操っているとされる、秘密結社フリーメイソン」


「秘密結社フリーメイソン! 資産家や各界著名人が所属しているとされるこの組織は! 存在こそ隠していない友愛団体であるものの! 実際の活動内容にはまだ多くの謎を残している秘密結社である!」


「フリーメイソンのメンバーが我々の周囲にも潜んでいるってことは、もう周知の事実なんだよね。そしてそのフリーメイソンが、新・氷河期に本格的に備え始めたってことが、今裏社会でまことしやかにささやかれているんだよね。その、フリーメイソンのメンバーたちは今、日本のある場所に集い、寒さに体を慣らしているってことなんだよね」


「ここでリーベルトは! 人工知能と新・氷河期の関連を指摘し! 人工知能Siriに、絶対に聞いてはいけないとされる暗号の意味について問いかけてみた!」


「さーばえ」


『すみません、よくわかりません』


「さーばえ」


『そうですね、しかるべき時が来たら、お教えしましょう』


「2回聞いても、Siriは詳しく教えて、くれないんだよね。これはもう、Siriが何かを隠しているってことで、間違いないんだよね。信じるか信じないかは、あなた次第!」


 年末よく見るな、このテの都市伝説。ここで花屋敷にパス。


「えーわた(夜も更けてまいりましたね。ご近所迷惑にならぬよう、音量には気をつけてお楽しみください)


 花屋敷がもう何も面白いこと言えなくなった。


「えー、それではアイスクリームを作りましょう!」


「お前大丈夫か?」


「だいぶ慣れてきました」


「ならよかった」


 雨宮さんは慣れた御様子。


「えー、レシピとしましては、牛乳と砂糖と卵と生クリームとバニラエッセンスを入れた容器をここでアイスになるまでぶん回す、というものです」


「大丈夫じゃなさそうだな」


「あとはぶん回すのを残すのみとなった容器がこちら」


 ヒモが括り付けられた容器×4。


「なんだ、これもお得意の『ゴールデンカムイ』知識か?」


「いえ、レシピとしては間違ってないですよ」


 喫茶店の看板娘水原さんからもお墨付き。


「アイスの出来た人から勝ち抜けです! 容器を途中で開けて未完成だった人は減点。ぶん回す役は交代してもいいです。レッツクッキン!」


 ヒュンヒュンヒュンと極寒の中女子四人が鎖鎌の達人・宍戸梅軒のように容器をぶん回すだけの地味な絵面。やってることは女子らしい「スウィーツづくり」だというのに!


「マスカラスマンはお前それいいな。全然顔寒くないだろう」


「いや、これは本格的な防寒具ではないからな。寒いぞ」


「いや、それでも顔丸出しのヤツらと違ってお前は多少マシだろう」


「マシだろうと思ってたら寒かった時の気持ちったるやないぞ」


「メガバシャーモはどうだ? お前はほのおタイプだから口が裂けても寒いなんて言えないだろ?」


「いやぁ……」


「しゃべんじゃねぇよ! てめぇポケモンだろうが!」


 ローキック!


「でも、まぁあれだな。ここに閉じ込められたとしたら悪いけどこばやっちゃん。お前に死んでもらう」


「なんでですか! デブでヒゲ生えてたら氷点下で生きちゃいけないんですか!」


「そうだ。俺はお前の豊富な脂肪にくるまって助けを待つことにする」


「ひどいですなぁ。僕ぁなんのためにあなたについてきたんだ! そういう時に優先して助けてくれるんだと思ってましたよ」


「まぁ、こん中で女子は別として一番楽に殺せそうなのお前だしな」


「ヒドい……ヒドいと思わないかい桜井くん!?」


 桜井がひかえめに「そうっすねー」とか言ってお茶を濁す。一方!


「星野さん、パス!」


 多忙な女子勢には動きが。雨宮さんがぶん回し役を星野にパス。体力では花屋敷と同格かと思われた雨宮さんが最初にパス。


「重たっ! ……ッタァアアア!!!」


 ぶん回し始めた瞬間に星野が肩を抑えてうずくまり、星野の手を離れた容器が英雄に一直線! スカァン!


「グッ……」


「父さーん!」


 容器が直撃した英雄も目を回し片膝を着く。ちょっとダメージが大きく動けないようだ。


「大丈夫だ栄治……。ただし頭打ったから助けが来るまで俺を動かすな……」


「父さぁぁぁん!」


「栄治ィ……帰ったらスーパー銭湯行こうなぁ……」


「父さぁぁぁん!」


 英雄は大丈夫だろう。それよりも!


「星野!」


「肩外れたかも……」


 ピーッ!!! と中断のホイッスル。寒冷地仕様の威嚇戦隊能面ジャーが試合を中止し、英雄と星野が冷凍庫の外に担ぎ出される。円谷くんも付き添いで出ていってしまった。雨宮さんが容器を拾い、ぶん回しを再開。


「何拾ってんだ雨宮ァ! 中止に決まってんだろうがこんなもん! グズが!」


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