【もう出ねぇ! 五・七・五の! 在庫がねぇ!】第9話 学祭バトルレボリューション その9
@文学部地下闘技場
「あ゛ぁーいあ゛るよあ゛るよ~、裏学祭の特等席のチケットあ゛るよ~」
「パンフ入荷待ちでーす」
相変わらずの熱気が、裏学祭の入場順発表でさらに過熱する。
「深山みちるとエヴァがいないですねぇ」
「でも英雄は、本戦3人目。村上は36人目」
「英雄厳しいですね。ハンデで刀ナシって書いてありますし。深山みちるもエヴァも予選落ちはないでしょうから、本当に引退ですかね」
ウワァーアアと場内から突如歓声があがる。
「エキシビジョンマッチを始めます! 学内、二つの“最大手”が存在していることは、矛盾ではないかもしれないッ! だが最強は決めねばならない! 東の“最大手”お笑いサークル『セントラルお笑いサークル』、西の“最大手”お笑いサークル『パシフィックお笑いサークル』のサークル内グランプリ王者が激突! 『お笑い学祭シリーズ』開幕! 青コーナー! 俺たちはお笑い芸人はない、、お笑い職人なのだ! ひな壇よりもギャグよりも、舞台が命のお笑い道、『セ』王者ミツビシ! 赤コーナー、ここまでの経歴一切不明! 異色の男女コンビ、ソフトムーン!」
ネタ用にスーツを着こんだ東の王者ミツビシ。そして歌姫風の露出度の高い服装にギターを持ったそこそこ美人の女子とグラサンにアフロの西の王者ソフトムーン。構図としては硬派のコント師vs完全にキャラ&リズム芸丸出しの男女コンビ。割れるぞぉ。
「先行じゃんけんホイ」
ミツビシのタカギがじゃんけんに勝利、後攻を選択。
「アホだなー」
「そぉうだよアホだよー」
「アホだなー」
「それがっどうしたっアホだよ~」
……? 後攻のミツビシ、そして佐渡島でミツビシのコント力とコント愛を見せつけられ、ミツビシファンになってしまっていた俺たち、硬直。
「え、今更そんなネタを?」
「自前のネタですらない」
だが会場はウケている! だって懐かしいんだもの! ネタのフレームはパクりだが、中身はきちんと作ってきてる。フレームは借りものだが中身はしっかりしてる。だが、それでいいのか!? 『パシフィックお笑いサークル』! というか、ネタのフレームパクってるヤツらに負けてしまったのか? それとも、この学祭での『東』との一騎打ちのために、ミツビシが最も苦手とするタイプを送り込んだのか?
「アッホだなぁ~」
ネタ終了と同時に、ズゥ~ンと、上りに上がった観客のボルテージが落ちてくる音が聞こえるくらいウケてた。
「ミツビシもネタを変えることが出来ればいいんですが、コントでは衣装とセットがありますから直前で変更できませんもんね。しっかりやれ、ミツビシ! ここでジャッキ・チェンに走っちゃダメです」
「大丈夫だ。アイツらはブレない」
ドン! と、プロレスの覆面を包帯とサポーター代わりにして顔中にガーゼを貼ったマスカラスマンが戻ってきた。
「アイツらのお笑い道と俺たちのプロレス道は似ている」
「そう言われたらそうですが、お前、また予選で負けたんですね」
「予選で村上と当たった」
「ザコだなぁ~」
「そうだよザコだよ~」
「ザコだなぁ~」
「それっがどうしたザコだよ~。って誰がザコだ」
「マスカラスマン選手」
「否定はできないが積極的に言うな。だが、ミツビシは今、逆境だ。つい俺たちもマネしてしまったぞ」
「場の空気は持っていかれましたね。頑張れ、ミツビシ!」
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
ミツビシ、ミツビシらしい人力舎が好みそうな正統派コント。ドッカンドッカンウケた訳ではないが、キチンとした構成、ネタの中に張り巡らされた伏線、演技力のいずれもパーペキ。自分たちらしい、巧い笑いをキッチリカッチリとやり切った。インパクトでは敵わないが……。まるでかまいたちvsにゃんこスターを見ている気分だ。
「審査員7人の採点が終わりました。」
ミツビシ
ミツビシ
ミツビシ
ミツビシ
ミツビシ
ミツビシ
ミツビシ
「満票で、東のミツビシ勝利~!」
笑い声の量では負けてたんだけどな。審査員投票ではなく観客投票では負けていただろう。ミツビシのメンバーはいずれも控えめな喜び方。作りこんだコントなら、あの一発ネタには勝って当然という気持ちだろうか、それともウケてたのは敵の方だったという悔しさか。
「それでは記念品の贈呈です」
鬼畜お姉さんがにこやかにミツビシのリーダー、タカギにチャンピオンベルトを差し出す。
「おいあれは俺たちのSEEベルトだぞ!」
そうなのだ! 鬼畜お姉さんがタカギに記念品として贈呈したのは、受け取った瞬間大学のはぐれメタルと化すSEEベルト!
「ネタは面白かったわ。文句なしよ。わたしもミツビシに入れたもの。でも、本気でお笑い芸人を目指すならネタ以上のこともやりましょう。ネタのステップはクリア。さぁ次のステップよ。荒療治だけど、ネタ以外もできるようになれば、大学もあなたたちを全身全霊で応援して送り出せるもの。大学のパンフやサイトでも紹介できるわ」
鬼畜お姉さん鬼畜。しかし、鬼畜お姉さんはマジでミツビシのファンである。ネタしかできないようでは確かにミツビシはそこで頭打ち、芸人にはなれず、趣味で地下芸人しかできないだろう。これは試練なのだ。SEEベルトを持っている以上、ミツビシにはイヤでも注目が集まる。学祭中に別の場でネタを披露する機会があれば、シンプルに考えて注目度は上がるのだ! ネタ中に乱入されてベルトを強奪される可能性に目を瞑れば!
「さぁ、60分猶予を与えます。ここにいる人は60分、ミツビシを追わないでください。さぁ、頑張って、ミツビシ! 60分以内にSEEベルトがミツビシから強奪された場合、大学首脳陣の刺客が回収に行きます」
そういえば鬼畜お姉さんがSEEベルトをミツビシに渡したということは、鬼畜お姉さんの放った刺客が野生の宇宙海賊キャプテン・ボイルドからSEEベルトを回収したということ! 権力者って怖いな。





