【もう出ねぇ! 五・七・五の! 在庫がねぇ!】第8話 学祭バトルレボリューション その8
『ルチャリブレサークル学祭公演!』
マスカラスマン引退宣言!? みんなのヒーローマスカラスマン最後の雄姿を目に焼き付けろ!
14:00~ @第四会議室
去年貸した『ドラゴンクエスト8』返せ
「アッチャ~。完全に忘れてました」
マスカラスマンから受け取ったチラシを広げた良崎が頭を抱えた。
「どうしたのアンナちゃん」
「マスカラスマンに返す3dsの『ドラクエ8』」
コイツいつもマスカラスマンから借りパクしてるな。
「また今度でも許してくれるんじゃないの?」
「いえ、マスカラスマンの冒険の書が……」
これは許されないぞ! 借りパクを超えた借り消滅!
「でもわたしの冒険の書は消したくないので、仕方ないので新品を買って、壊れて全部消えたってことにするしかないんです」
唾棄! 実際は新品だが「壊れた」と言われたDQ8を返されたところで、マスカラスマンは「壊れたなら買い直すしかない」と買い直すだろう。新品のDQ8が二本!
「そういえばマスカラスマンもラストイヤーかぁ。5メートルキングコングニードロップをやってからサークルの公演もやって、裏学祭って死ぬ気ですよね」
いよいよ現実味を帯びる、有照亭小町の新ネタ『学生で死んだプロレスラー』。
「大学でやり残すことがないようにしたいのね」
「それじゃあ、観に行きますか。ルーラ!」
テロレロレロ! ピシュピシュピシュ~ン
「っていうノリでね」
良崎もタメ語でごまかすドドド滑り!
「時間に余裕があるんで寄り道しながら行きましょう」
控室を出るとそこはやはり学祭。学生のボルテージがMAXになっている。
『8人のジムリーダーを倒してバッヂを集め、四天王に挑戦だ! @ポケモンサークル』
『お笑いグランプリ』
『釣り堀』
『ムエタイ』
『ポップコーン @超常現象研究会』
『学内に散らばる7つのボールを探し出せ! 大学ドラゴンボール!』
『ヒーローショー』
『緊急SOS! 先輩の膝の水全部抜く』
『大喜利 @落研』
『デッドオアアライブ 野生の宇宙海賊キャプテン・ボイルド(3年の増田) \1000』
『カムイ外伝 @演劇部』
「アレッ?」
「どうしました小林さん」
「『カムイ外伝』のことをスッカリ忘れていたよ! これ、僕のサークルじゃないか!」
そうなのだ。小林氏は実は『演劇部』の会長なのだ。
「しょうがない。忙しかったから」
多分、小林氏に会長の自覚がないようにサークルの方も小林氏を会長と認めていないだろう。体のいい腹切り要員ぐらいにしか考えていないはずだ。
「イケメーン!」
自転車のチリンチリンを虚無僧のように鳴らしながら、謎のイケメンが歩いてやってくる。
「イケメンどうですかー? イケメン殴れば気分爽快、イケメン一発1200円~。性格よくてもイケメンが邪魔、かわいいあのコの視線を独り占めするイケメン殴れば気分爽快! イケメーン、イケメンどうですかー!」
「わーいイケメン屋さんだ!」
「あ、リーベルトさん! お久しぶりです。僕ももう学祭ラストイヤーですよ~。ファイナルイケメンどうですか? イケメーン」
「イケメン、ミスコン見てた?」
「見てましたよぉ。見てなきゃ僕の顔面が午後までこんなに無事な訳がないじゃないですか~。イケメン屋は午後から開業ですよ」
「桜井わかります?」
「わかりますよ。雨宮チームの人でしょ? あれはモテますよ」
「やっぱりそう見える?」
「モテますね。円谷くんってのもいるじゃないですか。あれより絶対にモテますね。なにせいろいろ適度ですし、ワイワイうるさくなくて聞き上手な感じが女子受けするでしょうね。正直、イケメン屋さん的には、ああいう人がいると一番助かるんですよ。どっちかと言うと彼も見た目悪くないでしょ? イケメンでもないけれど、イケメンかブサイクかの二つでしか分けられないとしたらイケメンの部類。実際フツメンですけど。でも、ああいうギリギリイケメンみたいのが一番モテるんで、イケメンにヘイトが溜まってイケメン屋さん的にはお客が来やすいです。ここ見てください。青くなってるでしょ? これ、さっきミスコン会場から出てきたお客さんがやってったんですけど、あんなにカワイイ彼女がいるのに何やってるんだ桜井! 俺ならもっと大事にするのに桜井! 何故お前がモテるんだ! と殴っていきました」
「だよねぇ。桜井のあの態度はよくない」
「雨宮チーム、今は全然ダメダメだけど、勝ち上がれば勝ち上がるほど桜井の彼女がかわいそうに見えてくるんで」
何かに気付いた小林氏、頭の上に電球が灯る代わりにメガネがスパーク! ナントカセブンとかに変身しそうなほどのスパーク!
「ソイツだぁあああああ!」
「どうしたんですかヒゲ! デカい銃とか渡しませんよ?」
「桜井くんがサキちゃんを雑に扱えば雑に扱うほど、桜井くんにヘイトが溜まり、さらにサキちゃんへの同情が集まる! そしてサキちゃんへの付け入る隙も! 都内屈指の優良物件彼女が他校からやってくるこの学祭の数日間、攻略なんて無理かと思いきや雑に扱われていてワンチャンス! 勝てば勝つほど桜井くんが雨宮さんとイチャイチャし、サキちゃんのヤキモチが募り、サキちゃん攻略のために雨宮さんを勝たせようという流れができる! 4人目のセコンドだったんだ、サキちゃんは!」
「星野、汚いというか、雨宮があまりにも不憫な作戦ですね、それ。雨宮もそれを飲んだのでしょうか?」
「どうかはわかりませんが、彼らが負けている、というのがせめてもの救いですなぁ。一番いいのは作戦じゃなく、自然とこうなってるということですよ。あの三人の良心を信じたい。だがそうなると、やっぱり桜井くんの態度はいただけないですなぁ。この状況、必ず雨宮さんかサキちゃんのどちらかが不憫なんですよ。自然でも作戦でも」
パァンとイケメン屋さんが手を叩いた。
「まぁまぁまぁ。深く考えないことですよ。円谷栄治の口八丁と同じですって。考え始めたらその時点で策に落ちるんですよ。それに首位ターンしてるんですから普通にやればリーベルトさん3連覇ですって。円谷栄治もそうでしょう? 一番いいのはシカトして殴る。ここは気分を切り替えるためにも、イケメン殴って気分爽快!」
なんだこのイケメン。顔だけじゃなくて頭脳も精神もイケメンじゃないか。
「そうですね。では引き続き、応援よろしくお願いします。はい1200円」
躊躇わずに払ったー! ここまでのお応援と助言があったのに!
「毎度」
「ドラァ!」
バァキィ! イケメン屋さんに良崎の右フック炸裂! よろめいて麻雀卓に倒れこむ。
「フ、相変わらずいい攻撃力」
イケメン屋さん、卒業おめでとうございます。
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
@第四会議室
第四会議室に行ったら既にマスカラスマンがキャプテンを務めるプロレスサークルが壊滅させられていた。
「グッ、なんて強さだ」
「……」
ド派手なメイクとド派手な衣装に熱湯入った手桶と柄杓を持った宇宙海賊が至宝・SEEベルトを肩にかけ、マスカラスマンの頭を踏みつけている。SEEベルトとは、時間、場所、ルールを問わず、ベルトを奪った者が即ベルトを巻ける、つまりチャンピオンになれるというベルトである。そのため、良崎だろうとハムスターだろうと戴冠できるベルトなのだが、すぐにベルトを狙われてしまうため、ベルトが有効である学祭中はこのベルトはあちこちの手に渡りながら、所有者は逃げ続けるはぐれメタルとなるのだ。
「グッ、かくなるうえは」
バシャ、と野生の宇宙海賊キャプテン・ボイルドがマスカラスマンに熱湯をふるう。
「グッ」
「……」
ダメだ、熱湯を持っているうちは誰も手出しできない。宇宙海賊がベルトを持ったままゆっくりと会場を去る。
「お湯が、お湯が冷めたらどうにかしてやる……」





