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【もう出ねぇ! 五・七・五の! 在庫がねぇ!】第7話 学祭バトルレボリューション その7

 学祭第4ラウンド終了。各ラウンド

1位→5pt

2位→3pt

3位→1pt

4位→0pt

 なので、ここまでで


1位 リーベルトチーム-16pt

2位 水原さんチーム‐11pt

3位 花屋敷チーム‐7pt

4位 雨宮チーム‐1pt


 となる。


「みんな、お疲れ様です。お水を買ってきました」


 雨宮さんがペットボトルの水を四本胸に抱えて持ってきて、桜井、星野、英雄に配る。ミスコンの候補本人でありながらマネージャー業務まで……。逆境の中でも健気すぎてその不憫さに涙が出る。自分でもこれはナイなってわかった上で思うけど雨宮さんの体温で少しぬくってる水飲みたい。しかしこういうことを考えてしまうのは星野の打つ手が悉くセクハラネタだからだぞ。『ゴッドタン』とか『有吉反省会』でイジられてるグラドル観てる時ぐらい辛い。グラドルになるくらいだから、学生時代からきっと見た目は良かったりノリが軽かったりナイスバディだったりしたのだろう! しかし芽が出ず歳を重ね、ド深夜の30分番組で5分程度下ネタでイジられ出番終了。おそらく彼女らも学生時代は学校一モテる女子だったりしたのだろう。そんな彼女らに思いを寄せた男子はきっと少なくない。しかし、そんな憧れのあのコがド深夜に卑猥な単語を言うように強制されたりして出番終了。なんと悲しいことだろうか。


「……あぁー!」


 作戦板を覗き込んでいた星野が半狂乱になり作戦板を塗りつぶす。


「勝てん! 勝てんのじゃぁ!」


 ノブぅ~。


「1ラウンドも取れんようじゃいくつも用意した勝ちパターンが一つも使えんのじゃぁ!」


 ノブぅ~!


「星野さん……」


「大丈夫だ雨宮さん」


 桜井がそっと雨宮さんの手を握る。


「星野もそろそろエンジンがかかってくる。俺たちがどうにかする」


「でも、わたしにもっとできることはないの桜井くん!」


「雨宮さんは、ステージで笑っていてくれればいい。それが一番の仕事だ」


「それでも、わたしももっと」


「思い出そう雨宮さん。俺は知ってるよ。俺は幼稚園から雨宮さんを知ってるから。雨宮さんは無敵の優等生だ。運はないけど」


 それが一番キツいんだけどな! 運がないってのは!


「さぁ、笑って。星野がこのままやられる訳ないだろ?」


 おい桜井……ッ。イチャつくなつってんだろうが。桜井がそういう行動をとる度に観客席のザワつきが大きくなる。サキちゃんというものがいながら……。これじゃあ、あんな地味男と付き合ってるくらいなんだから、サキちゃんはよっぽど桜井に惚れてるんだな、だから付け入る隙はないなと思ってた大学男子が、淡い期待を持つぞ。彼氏の学祭に呼ばれてみたら、他の女子、しかも美人の幼馴染とイチャついてる様を見せられる。桜井とサキちゃんの出会いがいつかは知らないが、高校時代だとしたら、高校時代から付き合っているけれど、大学では別々になってしまっているが、桜井と雨宮さんの腐れ縁は幼稚園から大学まで。恋愛感情はなくとも一緒に過ごした時間の量が違いすぎる。時間の量の差で負けてしまう、と感じてしまうのでは……?


「それに俺だって、円谷くんに負け続けるつもりもないんでね」


 キリっと円谷くんにメンチを切る桜井。それを見ているサキちゃんは遠い目をしている。大学に入ってから1年と半年の時間が過ぎたけれど、桜井くんがどんどん遠い人になるね、って顔だ。都内屈指の優良物件彼女を横領するワンチャンス。さみしがったサキちゃんが当てつけに誰かとイチャつくかもしれない。でもおそらく桜井の目にその姿は映らない。今の桜井には勝つことしか見えていない。


「花屋敷チーム、勝利者特典を発表してください」


「はい。では、外に出て『ブラキディオス』で!」




【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】

【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】




 ……“ブラキディオス”。狩猟ゲームのモンスターと同じ名前のこの競技は、“年齢も戦歴もガケっぷちアイドル”、アイドル研究会の花屋敷アサがラストイヤーに残した、e-sportsとスポーツのコングロマリットである! 音ゲーの『剛き紺藍 ~ブラキディオス専用BGM~』をフルコンボした後、ゲーセンにある変なヒーローが映ってるパンチ力を図る機械を殴る、という純粋な闘魂が試される競技! 永遠の挑戦者、花屋敷アサが唯一残した爪痕だった……。その姉の闘魂を今! 妹が勝利という結果にする!


「音ゲーの曲は問いませんが、誰もが音ゲーが得意という訳でもないので、代用できるものがこちら」


①饅頭早食いキックターゲット

②PASMOタッチクロスプレー

③ムエタイ


「ムエタイ?」


「それでは、お願いします!」


 ブ~チャララ~と変な笛と太鼓のリズムでアロハシャツにサングラス、何かをクチャクチャ噛みながら電話をしている浅黒い老人と、精悍な顔つきにトランクスのムエタイボクサーが登場。


「何? チャポーが女と逃げた? ヤツの家族を探し出してムエタイを教えてやれ」


「サイッ!」


 タイマフィアとその持ち駒のムエタイボクサーと思われる。


「『饅頭早食いキックターゲット』は、饅頭3つを早食いした後、ランダムに設定される場所からフリーキックを決めてもらいます。『PASOMOタッチクロスプレー』は、サードからタッチアップし、キャッチャーを躱してホームベース上のPASOMOにPASMOでタッチし、入金が確認出来たら成功です。ムエタイはムエタイです」


 花屋敷ヒナタ、キッチリとコネを作って備えてきてる。というか、姉は一度もラウンドをとったことがなかったからどういう仕掛けをしてくるか全くわからなかったからな。


「桜井、作戦板!」


 星野がやけくそな声で桜井を呼ぶ。


「最後のパンチは英雄にやらせる。英雄が一番、パワーが強い」


「おうよ」


「英雄、出来そうなのは?」


「ムエタイかPASMOだな」


 地上最強の三塁ランナー。


「千穂、行けるか?」


「モチのロン」


 闘魂の化身、ドラゴン。


「ヒゲ。サッカー熱!」


「ヒゲゴラッソ!」


 サッカーのヒゲ! そしてクジの順で

1、花屋敷ヒナタチームのメガバシャーモ→前半『音ゲー』

2、良崎チームの小林氏→前半『饅頭早食いキックターゲット』

3、水原さんチームの村上→前半『ムエタイ』

4、雨宮さんチームの英雄→前半『PASMOタッチクロスプレー』


「シャモッ」


 デケドンデケドンデケドンデケドンデデンデンデン!


「シャッ!」


 ……。音ゲーってさして興味がないのに上手い人のプレイ観ても特に感動しないんだよな。バシャーモがブラキディオスの音ゲーやってるっていうドリームマッチ感はあるけど。

 ふるこんぼ~


「バシャーモ! フレアドライブ!」


「シャァーモッ!」


 ドゴォッ!


『91パワーッ!』


「……」


「……」


「……」


 派手な見た目のわりに内容がないな、この競技! 続いて小林氏も饅頭を早食いしてキックターゲットを決め、パンチ力は『84パワーッ』。続いて村上は素手のムエタイボクサーに『オーバーザレインボー』を決め、『108パワーッ』。


「……」


 最後のチャレンジャー、英雄が片手にPASMOを持って三塁上で待機。


「質問をよろしいでしょうか主将(キャプテン)ッ」


 キャッチャーがホームベース上で直立。


「学祭の最大イベント、アイドルコンテストというこの場ッ! ミニゲームのキャッチャーとしてクロスプレイでタッチアウトを取る。元野球部の正捕手(レギュラー)としてこの状況は理解(ワカ)りますがッ! なにゆえに三塁走者(サードランナー)は帯刀をしているのでしょうかッ!」


「あれが彼の正装なのだよ。君の正装が、その防具(プロテクター)であるようにね。しかし、これはあくまでも野球(ベースボール)規則(ルール)に則るッ! ……理解ったかね羽場くん……。そうなかなかお目にかかれるものではないぞ、最強が地べたを這う滑走(スライディング)! 君が最も近くで見下ろすのだ」


「ハッ!」


 ぐにゃぁ~と英雄を中心に空間が歪む。


「悪いことは言わねぇ。俺の邪魔をせずタッチをさせろ」


「そういう訳には行かない。それでは八百長だ!」


 キャッチャーの羽場くんも食い下がる。野球なら、野球のルールなら勝ちが実現するんだ、あの英雄にも!


「ならば殺害(コロ)す」


 殺害す。一見陳腐な脅し文句にしか見えぬこの言葉ですら、英雄が使えば途端に半端なケガでは済まないと現実的(リアル)な恐怖を煽る、殺害宣言。


「嘘嘘~。殺害しはしないぜ。ただ必死でやるぜ。俺はヤったことがある。ヒステリーなガールフレンドに接するように本塁(ホームベース)を丁寧に守れ。ところで審判、これは衝突(コリジョン)ルールは?」


「エッ?」


「衝突時のルールを知らねぇと」


「コリジョンは、ナシ、です!」


「OK」


 センターへの飛球がキャッチされるのと同時に英雄が本塁突入! 羽場くんは……。


 …

 ……

 ………ワーワー!


「―(なんだコレ?)」

「(俺、死んだのか?)」

「(いや違う、これは悲鳴じゃない、歓声だ)」

「(東東京大会の時か? タッチプレーで最後の夏が終わったあの試合……まさかこれを走馬燈に観るとは)」

「(もう二度と、あんな思いはしたくない! それに力に屈しちゃ男に生まれた甲斐がねェ)」

「(英雄(バケモノ)を止める!)」


 ガバッっと羽場くん、本塁をカバーし返球を待つ! しかし英雄はスピードを緩めない! タイミング的には、英雄はアウト! それでも行くということは……。

 ――殺害(コロ)す。


「オゥラァッ!」


「うわぁあああ!」


 なんの物量も持たない、不意の発声(いかく)。しかし、羽場をカバーからどかすには十分、そして彼の判断は的確(ただ)しかった。羽場くんの走馬燈が見えるくらい羽場くん死去んだと思ったがさすがに殺害しはしなかった!

 ピピッ。

 残金 2087円


「オゥラァッ!」


 バァキィ! 『不正なパンチ』


「は?」


「ふ、『不正なパンチ』だー!」


 パンチ力を図る機械が故障するほどの力で殴りつけるこの男、例え防具(プロテクター)があろうと、野球のルールがあろうと……真正面からこの男と戦うべきではなかった。

 羽場くん、生還!


第5ラウンド “ブラキディオス”


1位 水原さんチーム

2位 花屋敷チーム

3位 良崎チーム

4位 雨宮さんチーム




「また負けた!」


 星野が髪をかきむしり、作戦板にパンチ! こっちはバキッと入り、小林氏の私物の作戦板がパッキリ折れる。しかし左利きの星野が右手で殴っているので、まだわきまえているようだが確実に右手は痛めた。


「え? あぁ、一日目終了だってよ」


 ハイジさんが中野君からメモを受け取る。


「解散。自由行動な」


 解散。


「よし、じゃあ遊びに行きましょうよ、みんなで」


 良崎まさかの首位ターン。余裕があるようで、星野や水原さんに声をかける。

 英雄さん! 今夜、痛恨の“地上最強の皿洗い”。


「いいの? ありがとう!」


「悪いが俺は行けない」


 マスカラスマン、水を差す。


「俺は用意がある。裏学祭のな」


「ッ!?」


 ~~~ッ!

 裏学祭とはッ! 文学部地下闘技場で開催される武道大会であり、大学の最強を決める戦いの祭典である。時間差リングインのバトルロイヤル、『ロイヤルランブル』が開催され、さらに学外の人間も参加するため、正直、表学祭より盛り上がっている。


「あ、俺も早めに会場に入っとくわ」


「わたしも下見」


「じゃあボクも用事が一緒に行こうかな」


 円谷英雄、村上千穂、円谷栄治、裏学祭参戦! マスカラスマン、参戦取りやめない? ケガしてるしぃい~。


「ただし父さん! 今夜は用事があるならパスでもいいけど、皿洗いだ!」


 そこはケジメ。


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