【もう出ねぇ! 五・七・五の! 在庫がねぇ!】第4話 学祭バトルレボリューション その4
「勝ちとりたいですけどねぇ。僕にはぁ一ついい案があるんですよ」
ヒゲのメガネが頭脳のキレ具合に応じて光り出す。
「つまりカクカクシキジカマルマイン。ゴニョゴニョドゴームバクオング」
ヒゲの ないしょばなし! ▼
「なぁるほぉどぉ……それ……勝負に置きに行けますけどそれルール上ありなんですかね?」
「いいんだよ、どうせ20人しか観に来ていないんだ。と、いうことで頼みますよ、円谷くん」
ドォ~ン! 円谷くんが円谷パパを指さす。
「この円谷栄治が直々にぶちのめす。第2ラウンドも、歌唱力対決だ!」
第2ラウンド 歌唱力対決・延長戦
勝負を置きに来ちゃった。これならば、円谷くんの相手をできるのはもう水原さんしかいない。不幸の置物・円谷英雄のプレッシャーももうない。星野の悪だくみもこれは想定外だろう。ヒゲの悪だくみがここが一枚上手!
「勝負がつまんなくなるだろうが」
「俺はいいと思いますよ。『恋』ダンス、『青春アミーゴ』、『パラダイス銀河』で撮れ高十分なんであとはダイジェストで。どうせ客いませんし」
「おい調子に乗るなよ中野」
ハイジさんvs中野君も別のところでヒートアップ。
「でもぶっちゃけ俺たちには分の悪い勝負じゃないんだよなぁ。なぁ水原」
「あと10曲くらいなら」
「そういう訳で俺たちは一向にかまわん。どっちにしろ、審判団による没収試合にでもならない限り、勝利者特典は覆せないしな。それに今日の調子なら水原と円谷くんの調子はトントン、上手くいきゃ勝てるぜ」
そういえば今回はまだ控えめだがハイジさんも悪だくみ属性。勝たせると怖いのだが……。
「それでは第2ラウンド、歌唱力延長戦どうぞ」
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
第2ラウンド
1位 リーベルトチーム
2位 水原チーム
3位 花屋敷チーム
4位 雨宮チーム
「……勝ってる方がこれはイカンって思うぐらいですからこれはイカンのでしょうが、カラオケ延長戦無限ループで勝ててしまいますなぁ」
目論見通り勝ったというのに、小林氏が困った顔でヒゲをさする。
「でもそれで勝っても円谷くんがすごかったってことになってしまいますよ」
「これはマズい、これはマズい勝ち方だ。かと言って他の勝負はバクチすぎる」
「勝ちに行くなら次も円谷カラオケ無双だし、これなら万が一負けても勝利者特典獲るのは水原さんですから、星野が獲るよりはマシ。あぁーこれどうしよう、勝っちゃって困るってどうしよう。これ以上カラオケ使うと、泥仕合認定で上のお姉さんが早めにご出勤かもしれないし」
「……悪だくみの相性で考えるしかないですなぁ」
「悪だくみの相性?」
「星野さんと陣内さんの悪だくみは、仕掛けの悪だくみ。対する僕の悪だくみはその仕掛けを受け流す悪だくみ。逆境の悪だくみ。背水の陣の悪だくみ。カウンターの悪だくみ。被害者の中でこそ輝くのが僕の悪だくみだ。任せてくれないか?」
「わかりました。任せましょう」
ズビシッ! と小林氏がハイジさんを指さす。
「悪いですけど陣内さん、次の競技決めてくれないですか!? これは舐めプじゃありません。これこそが僕も陣内さんも最も輝ける、最高のフェアプレイで、僕にとってのアドバンテージだ。リーベルトさんだってそうだ。陣内さんの圧力を受けてこそ」
特典献上! ハイジさんが腕組みをし、ギギギィ~と悪い笑み。
「面白れぇ。乗ってやるぜ、その勝負! 第3ラウンドは、千穂! お前にも出てもらうぞ。第3ラウンドは、全員参加の“プロレスクイズ”だ!」
「“プロレスクイズ”だと……?」
「もちろん乗るよな、リーベルト」
「面白いじゃあないですか。エツ!」
良崎の呼び出しで舞台袖からエッちゃんが出てくるが明らかに酸素が足りていない! 着ぐるみを膨らますためのエアーが足りずにしぼんでしまい、巨大なクジラの中で消化された何者かのようになっていて直視に堪えない姿になっている。
「エツ……マスカラスマンを呼んできてください」
良崎もこれでは無理と察したのか、フェルト生地がベタンを頷き舞台袖に引っ込み、『キン肉マン』×新日本プロレスコラボシャツのマスカラスマンとして再登場。
「俺たちにプロレスクイズで敵うと思っているのか? そっちのドラゴン娘は、ドラゴンと言えばマッチョドラゴンじゃなく『燃えよドラゴン』だろう?」
村上千穂がピンと帽子のつばを指ではね上げた。そして最早映しちゃいけないレベルの顔面凶器の形相でメンチを切る。
「そりゃ一番得意なのは喧嘩だよ。一対一だろうと素手だろうとこの場じゃ誰にも負けないよ。それにプロレスだって侠として知ってて当たり前だろうがシャバゾーが」
「はぁ~ん? すみません、北海道のローカルな言葉ですかね? 言葉が雑すぎてちょっと本土では通じにくいみたいです。東京で通じる言葉使ってください、カッペさんには難しい注文かもしれないですけど、申し訳ないですけど東京は標準語なんで。それとも魔法の呪文の一種でしょうか? すみません、同じ学校でもここホグワーツじゃないんです。すみません。人間の東京の標準語でお願いします」
「ッのォガァキィッ!!!!」
素手喧嘩には自信のあった村上さん、口喧嘩では良崎に惨敗。
「これでも年上なんですよぉこっちは~。それとも本当に喧嘩しますか? いいですよぉ、そっちがその気なら乗ってあげてもいいんですが、わたしはおそらく村上さんが相手では喧嘩に専念できません。またイップスにかかってリングで泣き出しちゃうんじゃないかと思うと心配でなりませんから。というかイップスは治りました? わたしは応援していたんですよぉ」
「よし陣内ホウキ持ってこい。あのキレイなツラを次に拝めるのはアイツの葬式の遺影だ」
沸点低すぎんだろ尖りすぎだぞチホ・ムラカミィ! だが、大学に来たばっかりの時ってみんなそうなんだよなぁと思いだした。周囲に誰も知り合いがいない環境、大学。今までの自分でいるべきか、それとも違う自分になるべきか。そう考えると情緒は不安定になってしまうものだ。良崎だって入学時はそうだったじゃないか。
「落ち着け千穂。今は怒りをため込んでおけ。解放のカタルシスは来るからよ」
ハイジさんになだめられ、猛獣のような呼吸を繰り返すスポーティ魔女村上。
「それでは、第3ラウンド『プロレスクイズ』スタート! それではお願いします!」
デゲデデデデデゲデデデデデゲデデデデデゲデデデデ
デンデンデンデンデンデデー
パーロー パロパロパロパロー
カクテル光線と入場曲、炭酸ガスのスモークと同時に、パンチパーマにパンタロンパンツの筋骨隆々の老人が花道から登場!
「うぉおおおお!!!!」
「天藤力龍だァ~!!!!」
「え、本物!?」
「天藤! 天藤! 天藤!」
天藤力龍とは! 日本プロレス界のスーパーレジェンドである! プロレス黄金期、暗黒期の両方を現役で過ごしたプロレスの生き字引であり、プロレス暗黒期も政治家転向や総合格闘技への浮気をせずプロレス一本道、昨年ついに引退してしまった。現在はタレント活動もしているが、この年齢のプロレスラーとしては珍しく大卒であり、わが校のOBである。良崎、マスカラスマン、英雄、村上といった格闘技好き勢の目の色が変わりまるで少年のように! さっきまで顔面凶器だった村上さえも、レジェンドプロレスラーの前では一人の少女だ。
「ガルガルガルガルガルガル! ガルガルガルガルガルルルル~!」
マイクを握って拳を天につき上げる天藤! それにレスする格闘技好き達。
「ザギザギザギザギザギザギザギザギザギン! ドルドルドルドルドル、ドッドドドウドドドウドド!?」
しかし出題を聞き取ることはできない。良崎とマスカラスマン曰く、「酒とタバコとラリアット」のプロレスラー3原則で喉が潰れてやっとレジェンドプロレスラーらしいので、天藤は3つでしっかり喉を潰してレジェンドとなったのだが、その押し寄せてくるハチャメチャな滑舌と発音、だが泣いてる場合じゃない。しかしタレント転身後は、出演する番組では全て字幕スーパーが出ているのでなんて言っているかわかったが、これは本当にわからない。
ピコーン! マスカラスマンがボタンを押す。
「スピニング・トゥ・ホールド!」
ブッブーと効果音。そしてマスカラスマンに闘魂ビンタ! 頬を張られたマスカラスマンが天藤に最敬礼。プロレスにしかわからない世界があるんだろう。
ピコーン! 良崎。
「サソリ固め」
ブッブー。
「ザリザリザリ」
不正解なのに天藤がにこやかな笑みで良崎の肩をタンタンを叩く。天藤おじさん、良崎がお気に入りなのか露骨に対応が違う。やっぱり美人には弱いのか。そして何かを耳打ちすると、良崎が再びボタンを押す。
「テキサスクローバーホールド」
ピンコーン!
「八百長だ! 八百長! 汚いぞ天藤! 卑怯だぞ天藤! リーベルトに答えを教えた! 八百長だー!」
星野がマジで紛糾。天藤おじさんのお気に入りだから贔屓しちゃう、ってだけでこのラウンド取られちゃったら話にならない。しかし天藤おじさんは悪びれる風もなく、舌をペロっと出し、肩をすくめて指を一本立てて星野に見せ、手を合わせて「一回だけだからごめんね」と茶目っ気たっぷり。あの辺がリングでもお茶の間でも愛されるところなんだろうな。





