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【もう出ねぇ! 五・七・五の! 在庫がねぇ!】第3話 学祭バトルレボリューション その3

第1ラウンド “歌唱力対決”

・3曲まで歌ってもいい。

・候補本人が歌わずセコンドや自由枠が歌ってもいい

・カバーでもオリジナルでもいい。


 歌唱、と聞いて円谷くんの目つきが変わる。プロ歌手気取りで喉に何かのスプレーを噴射、そして軽く発声練習をしている。おそらく小林氏も、第1ラウンドは歌唱対決と見越して早朝から円谷くんを呼んだのだろう。そしてチラっと水原さんを一瞥。同じように円谷くんを意識していた水原さんと目が合い、両者が悟空vs洗脳されたベジータ戦の時の二人のようにニヤッと笑み。そう、二人はカラオケ名勝負数え歌を繰り広げてきた好敵手同士。この二人がぶつかるってだけで、とりあえず雨宮チームがこのラウンドをとることはない。花屋敷妹チームは、実力が未知数なのでまだわからない。


「自由枠を申請」


 星野が挙手し、中野君に手書きオーダーを渡す。


「雨宮栞菜チーム、第1ラウンド自由枠は、円谷英雄」


 ~~~ッ!


「そう来るかい」


 円谷くんため息。舞台袖から円谷くんの父親で日本最強の男・円谷英雄がゆっくりと登場。雨宮さん、花屋敷妹、水原さん、良崎と握手を交わす。


「よろしく、円谷くん」


「あぁ、よろしくお願いしますよ、円谷さん」


 円谷くんにとっては非常にやりづらい悪魔の置物、父親。なんとなく我々も感じ取っていたが、息子・栄治と父・英雄はあまり仲が良くないのではないだろうか。英雄が10年間家庭にいなかった時期や、身体能力の面での円谷栄治のコンプレックス、そして何より、雨宮さんの援護と強化よりも他チームの妨害と弱化を好む星野が、円谷栄治対策に英雄を選んだということがその証左! 事実、円谷くんのテンションが少し下がったというか、水原さんとの全力勝負に水が刺さったムードになっている。


「それでは歌唱順どうする? じゃんけん? クジ?」


「おぉい中野君、そろそろ客集まり始めるぞぉ。あと編集する側の身にもなれ」


 中野君のこの悪い態度もオープニングが早朝という運営の不手際への間接的な抵抗なのだろう。


「わたしからやらせてください」


 水原さん挙手。


「昨年も一番手でしたし、学祭のオープニングを飾れるようなものをやりたいです。それに、円谷くんにも先手を打ちます!」


 曲のオーダーと引き換えにマイクを受け取った水原さんがキッとマジの顔つきに。


 水原さん1曲目は、光GENJIの『パラダイス銀河』! 懐メロということで他との被りも心配なく、歌詞もオープニングや歓迎ムードに溢れているまさに開幕にふさわしい曲だ。そしてやっぱり水原さんの歌唱力は錆びていない。それこそ、円谷くんでもなければ太刀打ちはできないだろう! そして2曲目はGreen dayの『basket case』! 洋楽歌詞の歌いだしの難しさも何のその、Oasisファンの円谷くんへの鞘当てのような、水原さんらしくない挑発的な選曲! そしてラストは! 『ルパン三世 カリオストロの城』主題歌、『炎のたからもの』! 歌い終わった水原さんがニコニコの笑顔ではなく、不敵な笑みで円谷くんに視線を送る。


「心底優しい人ですね。憑き物は落ちましたか?」


 良崎が円谷くんに問いかけると円谷くんがコクッと深く頷いた。カラオケにおける水原さんの最強の持ち駒は、PRINCESSPRINCESSの『ダイヤモンド』。研鑽に研鑽を積み磨きに磨き抜かれた『ダイヤモンド』は、飽きというものが来ない完成度を誇る。しかし水原さんはそれを使わず『炎のたからもの』。それは昨年、『ルパン三世のテーマ』で勝負に来た円谷くんへのアンサーソング! 水原さんは『炎のたからもの』に込めたのだ! 円谷栄治よ、あなたの敵は円谷英雄ではない、このわたしだと! 「あなたにだけはわかってほしい」と!


「ボクのせいで水原さんに曲を一つ、無駄……とは言わないけれど、消費させてしまった。ここで共倒れは憂ちゃんの狙い通りだ」


 星野の英雄起用、地味に水原さんにも刺さっていた。水原さんのカラオケの持ち味はハリのある声と声量と滑舌。しっとりした曲では本領発揮ではない。だが、優しい水原さんなら、英雄のプレッシャーがかかっている円谷くんの為に一曲使うだろうというこの悪辣! だが水原さんへの直接攻撃ではないから、ギリギリアリになる。本当に地味に汚いな。


「よし、円谷くん次行きましょう。仕込んだアレを使いますよ、エツの酸素が残っているうちに」


「OK」


 なんということだ……。良崎がきちんと自分が頭であることを自覚し、キャプテンシーを発揮している。良崎が曲のオーダー表を渡している間に円谷くんは私物のエレキギターを取り出しセッティング&チューニング。円谷くんがセンター、両脇に良崎とエッちゃんが入り、イントロと同時に奇妙な動きを始める。


「恋ダンス!」


 唄:円谷栄治 ダンス:良崎&エッちゃん。円谷くんの熱演&熱唱、意外と踊れた、というかものすごく練習したであろう良崎、そして視界も酸素も関節の可動域も奪われるエッちゃんスーツで恋ダンスとわかるまでに動くマスカラスマン! やっぱりアイツ運動神経はいい方だったんだな。しかし消耗は激しく、良崎とエッちゃんは気息奄々。素で踊った良崎でさえああなってしまうのなら、エッちゃんの中のマスカラスマンはどうなっているのか。続く2曲目は円谷くんがお得意のOasisの『Roll with it』を腕を後ろで組んで右肩を少し下げるリアム歌いで熱唱。雨宮さん陣営、花屋敷妹陣営を無視するようだが、ここで円谷くんが水原さんにお辞儀しピースサイン。ルール上は円谷くんはもう1曲歌えるのだが、全部円谷くんはさすがによくないと感じたのか、回復が進んできた良崎にバトンタッチ。『北斗の拳』でお馴染み『タフボーイ』でシャウトし、良崎チーム全曲終了。しかしこれはどうだろうか!? 良崎もしっかりと歌を仕上げてきていた。水原さん、円谷くんにはもちろん敵わないが、「あの良崎にしては」としては悪くない。円谷くんもコンディションは悪くなく、水原さんといい勝負ができているのではないだろうか? なにせ、あちらは星野の英雄起用で1枠、損な選曲をしている。それにプラスして良崎は誰がやっても可愛く見える恋ダンスつき。


「円谷くん、ありがとう。助かりました」


「こっちも助けられたよ」


「ところで、あの地上最強の親父は歌はうまいんですか?」


「どうだろうね。ボクの方がうまいと思うよ」


 星野にマイクが渡る。


「来ると思ってたよ円谷くん」


 来るってわかってたから英雄起用したんだろ。


「お前は確かにイケメンで歌も上手い。そんなお前だから、お前が人から向けられる感情は嫉妬から来る嫌悪」


「否定はしないさ」


「だけど、お前に嫉妬してるんじゃなく、一人の男としてライバル視しているヤツもキチンといる。だけどまさかアレ、使わなかったとはね。じゃあ使わせてもらおう! 桜井!」


 桜井がマイクを握り、円谷くんに対して弓を引くような『スターウォーズ EP3』のオビ=ワンっぽい謎ポーズ。なんだかわからないが、挑発していることは確かなのだろう。そして雨宮チーム、最初の曲のイントロが流れ出す。


「!」


 この特徴的なギターコードは! 水原さん最強の手札『ダイヤモンド』に対する円谷くん最強の手札『青春アミーゴ』! 掟破りの『青春アミーゴ』だ! しかし桜井の歌唱力は、まさに桜井これぞ桜井としか言えない、上手いが無難で地味というもの!


「情けないぜ助けてくれ」


 そして円谷くんは一人で『青春アミーゴ』を歌うが、桜井バージョンは桜井が修二パート、星野が彰パートのデュエット。しかし、星野は歌唱力は並、さらにここまでのやり口でヘイトを溜めまくっているので悪く見える。


「Si! おーれたちはいつでーも」


 しかしサビで桜井と星野が躍り出しシンクロ! 歌唱力はバラバラなのにダンスの方は完全に息ピッタリの一糸乱れぬ本家越えの同調! 星野の方は身体能力が追い付かず、踊るのに精いっぱいで後半歌が完全にバテてたが、桜井の方はダンスも歌も尻上がり、あれだけ激しい動きをしながら歌も追いつき、バァーンとしめて円谷くんにオビ=ワン風謎ポーズ。だが、謎ポーズがかっこよく見えるぐらい今の桜井は確かにカッコよかった。歌の途中からフロー状態に入ったのか? これならサキちゃんが惚れるのもわかる。円谷くんの最強の持ちネタだから、と練習したであろう『青春アミーゴ』を仕上げてきた。まだ20人しかいない観客のまばらな拍手だが、そうなるとサキちゃんにも注目が集まるがサキちゃん目がハートになりそうな勢いで拍手。そしてそれを受けて桜井と星野がパァンとハイタッチ。彼女が観てる前であんま他の女子と仲良くすんな。今のところ、女子として星野がサキちゃんに勝っているところは何一つないが、悪だくみの際の連携では、星野と桜井のコンビネーションはバッチリだ。サキちゃんも、星野はあくまで悪だくみ仲間と割り切っていてもいい気はしないだろう。2曲目は『日常』のOP『ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C』、こちらもデュエット曲だが、ヒャダインパートが桜井、ヒャダル子パートが雨宮さん仕様。ここも桜井と雨宮さんが無難にこなすが、メチャクチャカッコよく仕上がっている今! 彼女が観ている前であんまり他の女子と仲良くすんじゃねぇ! 特に雨宮さんは、星野と違って女子としての魅力がちゃんとある女子なので、サキちゃんのヤキモチが心配だし、「それでもサキちゃんは俺の立場わかってるから」と余裕でもかますようなら、一番のクスリが必要になるぜ……。大事にしろよ、都内屈指の優良物件彼女を! 少なくとも目の前で粗末にするようなマネをするんじゃあねぇ! サキちゃんとも今度やってやれよ、カラオケでデュエット!


「……雨宮」


 無難地味では水原さんと円谷くんには歯が立たないと感じたのか、星野は少し不満げ。というか手詰まり? そして雨宮さんを睨みつけ、パペット人形を投げる。あれは雨宮さんが小さいときから可愛がっているアライグマ人形、トッピーだ!


「それで『コブラ』な」


 雨宮さん、顔をコブラの服のように真っ赤に染めうつむいてしまう。


「サイコガントッピーで『コブラ』な」


 本来の3曲目がなんだったか不明だが、星野がオーダーを変更。そして雨宮さんもトッピーを左腕に装着し、サイコガントッピーで『コブラ』を歌いきるが、『ヒャダインのカカカタ☆カタオモイ-C』の時と違って恥ずかしさで声が震えている。ちゃんとサビの「コォ~ブラァ~」のところではサイコガン発射のポーズをとったが、不本意なのは明らかだ。


「これ、最下位雨宮チームじゃないですか?」


「今のところそうだよねぇ。花屋敷ヒナタちゃんチームだけは、父さんが出てきてもなんの妨害にもならないから、普通に本領発揮だろうし。そもそも父さん、一曲も歌わなかったから、なんのために出てきたのかわからないね」


「星野の自滅にも見えるんですがなんかの釣り針ですかねぇ」


「ちょっとイラっと来ちゃうよね」


「!?」


 ヘイトは溜めるが人がいいことで知られる円谷くんからまさかの発言。


「あ、父さんにね。栞菜ちゃんチームの3曲目を最初から『コブラ』にするつもりだったのかはわからないけど、父さんに歌わせる気はなかったんだよ。つまり、父さんは妨害のためだけに来た訳だ。……息子の妨害のためだけに呼びますって呼ばれて出てくる父親なんだね」


「お察しします」


 そして花屋敷ヒナタチームは、姉のようにセコンドがバンドじゃないので生バンドじゃないが、きちんとアニソンっぽいオリジナル曲で勝負。セコンドの音のマジシャン黒子のバックコーラスもあり完成度の高いパフォーマンス。


「第1ラウンド結果発表~。4位! 雨宮チーム。3位! 花屋敷チーム。2位!」


 中野君が溜めに溜めて……


「水原チーム!」


 円谷くん、らしくなくガッツポーズで雄たけび。テンションの上がってしまった良崎が抱き着く。


「シャア!」


 ちょっと苦手な父親を呼ばれ、好敵手(ライバル)水原さんのエールでプレッシャーをはねのけての勝利! 週刊少年ジャンプの三原則『友情・努力・勝利』はなんだかんだで満たすと感動もひとしおなのだろう。


「それでは、勝利者特典の時間です。リーベルトチームは次の競技を決められます」


 良崎、小林氏、円谷くんが輪になって作戦会議。マスカラスマンはどうした? まさか恋ダンスの消耗で……?


「やらせとけ星野。俺がついてるうちはあの小僧はイヤでも俺が邪魔になる。調子に乗ってられんのも今だけだ」


 プッツーン。英雄の言葉で円谷くんの顔色が変わる。円谷くん、これは入ったらダメなスイッチ入ってしまったか?


「親父ィ……」


 ゴゴゴゴゴゴ……


「親父ィ、今日は洗いもんやってくんね?」


 第2ラウンド “洗いもん”!?


「今日、アンナちゃんが首位ターンしたらな!」


 バァーン! 円谷くん、わきまえる!


「今日結果を出せなかったら、父さんは明日は呼ばれない。今日のうちに帰ることができるだろう。たまには、母さんの手伝いをするんだな! 今日一日、“足を引っ張る”ってことがどういうコトか思い知らせてやるぜ。なぁアンナちゃん」


「見直しましたよ円谷くん。しかし、あなたの持ち味は平常心、あまり熱くなりすぎないように」


 良崎もいいことは言ってる、いいことは言ってるんだけど、敬語で偉そうだとフリーザに見えちゃうんだよなぁ。


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