【もう出ない 五・七・五の 在庫がない】第15話 関越道0ビヨンド~新潟×離島~ その15
♪~
「アブソリュートマンの、絵描き歌~」
〇(マル)かいて〇(マル)かいてツンツンツン
グルッとカーブで囲みましょう~
スッと通った奇麗な鼻筋
ニコっと微笑む勇者の余裕~
バナナかな? バナナじゃないよサンゴだよ~
竹がニョキニョキ生えてきた~
黄昏の時は光か闇か
その目が問うは正義か悪か
最後にランプをつ~けた~なら~!
アッという間にアブソリュートマン!
(「ジャラッ!」)
「みんなも上手に描けたかな? オット、自己紹介が遅れたね。私の名前はモリタ・ジン。SF作家だ。アブソリュートマンとは無二の親友、だがこれはみんなに内緒だぜ。私はいつも彼に最前線の特ダネを教えてもらって一番乗りで現場にいるんだ。アブソリュートマンの正体なんて、私が知りたいくらいさ! さぁていったい誰なんだろうね! そして! 春休み、私の親友アブソリュートマンが、映画館で大活躍するぞ!」
『劇場版アブソリュートマングロリアス』
「映画では、末の後輩アブソリュートマングロリアスの助太刀に、アブソリュート6兄弟の長男アブソリュートマンと、次男のアブソリュートミリオンがやってくるんだ。映画には私と、あの懐かしのセリザワ・ヒデオも登場するぞ。絶対に観なきゃね。さぁ『劇場版アブソリュートマングロリアス』、みんなで観よう!」
“特報”
小林氏とマスカラスマンがリヤカーをビーチまで牽引。荷物を積み、ようやくスタートかというところで、沖に不自然な波が立つ。ハイジさんと英雄だけがそれに気づき、手でひさしを作って沖に目を凝らしている。その不自然な波は徐々に大きくなり、こちらに近づいてくる。雨宮さんはマスカラスマンベリアルの覆面を取りに行っているので気づいていないが、良崎と星野も何か違和感を覚え始めたようだ。
「キャアアアアアア!!!!」
「キャアアアアアア!!!!」
良崎と星野がらしくなく、女子っぽい甲高い金切り声の悲鳴。
「おいおいおいおいなんだアイツはおい女子はこの場を離れろ! マスカラスマン!」
ハイジさんがバチッとスーパー陣内2に変身し、戦闘態勢を取る。波の中から現れたのは男性、190cm、髪は茶、筋肉モリモリマッチョマンの変態だ。そう、変態なのである。一糸まとわぬフルの変態! 顔は日本人だが日本離れした彫りの深さと巨体と筋肉量! 口をヘの字にし、一切表情を変えずこちらに向かってくる。
「こっち来んな。殺すぞ!」
直視しちゃった良崎と星野が、ハイジさんの命令通り雨宮さんを連れてどこかに逃げる。よかった、雨宮さんが直視してなくて。してたらもうストレスとショック続きで心を失ってしまうよ。
「……」
完全に上陸したフル出しの変態がサーチでもするかのようにジーと英雄、ハイジさん、小林氏、マスカラスマン、桜井を眺める。そしてハイジさんに歩み寄る。ハイジさんも長身な方だが相手は190cmの筋肉モリモリマッチョマンの変態! 体格差も明らかな上にハイジさんはもうかなりビビってる。
「随分と夏フル出しなカッコじゃあねぇか。ふざけてんのか? 靴下なら貸してやるぞ。サンダルでも靴擦れ予防でいつも履いてるからな」
「お前の着ている服をよこせ」
「脱げるかボケ」
ハイジさんは今海パン一丁である。海パンとあと靴下なのでこっちも変態か変態ではないかと言えば変態寄りなのだが、相手はマッパである。そしてハイジさんが来ている服は海パンだけなのでそれを変態に渡すと、ハイジさんがマッパになってしまい、変態が二人に増える。
「もう一度言う。お前の着ている服をよこせ」
「……」
アレ? これなんか見たことある気がする。男性、190cm、髪は茶、筋肉モリモリマッチョマンの変態が、無表情のマッパで現れて、突然服をよこせというこの展開。まさか……? ハイジさんが応じないと判断したのか、変態マッチョマンが無理矢理にハイジさんに丸太のような手を伸ばす! 『コマンドー』でアーノルド・シュワルツェネッガーが担いでいた丸太のような腕を!
「やめろ! 英雄! 助けてくれ!」
マッパのマッチョマンの変態に海パンを奪われそうになる、これはマジで怖い。ハイジさんでなくてもビビって逃げ腰になるのも仕方ない。
「おいマッチョマン。こっち見ろ」
英雄が栓を開けたての瓶コーラの口を指で塞いで振りまくり、プロ野球の優勝チームのビールのように変態マッチョマンの顔面に白い泡をぶっかけ!
「コイツが本当にシャンパンファイトだぜッと! ……?」
コーラの目つぶしからの顔面パンチ! 変態マッチョマンはコーラで目を洗われながらも英雄の右ストレートを巨大な掌で受け止め、英雄の拳を握りしめて英雄を睨みつける。
「英雄が……」
「止められた……!?」
英雄のバカ強さを知ってるハイジさんとマスカラスマンがマジ驚き。小林氏が腰を抜かし、洋画のモブのように足をシャカシャカさせて逃げようとしている。これもしかしてマジなのか? マジでこの変態マッチョマン、転送されてきた何かか!?
「ナニ触った汚ぇ手で触るんじゃあねぇ! オラァッ!」
転生されてきた疑惑のある変態マッチョマンの下っ腹に英雄の伝家の宝刀・ヤクザキック! 変態マッチョマンが仰向けに吹っ飛ばされ、砂の上に尻もちをつく。丸出しのアレも砂まみれだ。
「英雄!」
「おうよ」
ハイジさんが英雄に流木をパス、英雄が流木を刀のように構え、ギュワッと目を見開く。
「『ブレードランナー』!」
超能力名:『ブレードランナー』
所有者:円谷英雄
【破壊力 - E / スピード - C/ 射程距離 - C/ 持続力 - C / 精密動作性 - A / 成長性 - E】
自らの視界に縦100、横100、奥行100の罫線を引き、100万分割のマスとして見切る英雄の超能力である!
「超能力使うほどの相手なのか?」
「陣内さん! こんな話は聞いていない! 危険手当もらいますよ今回僕ぁ!」
小林氏もシッチャカメッチャカの倒置法になるビビりよう。
「ちょっと待て。……アイツ蹴られたところ赤くなってないか?」
「あ、なって、ますね」
「マシーンだったら赤くなんないよな?」
「なんない、ですね」
しかしまだ人間未満オウム以上のオウム返ししかできないほどビビってる。
「英雄さんが気づいてないわけないんですが」
「そりゃ気づいてないわきゃねぇだろ……。よく見えるようになる能力なんだぞ」
「でも、うっかりカッコつけちゃって引っ込みがつかない場合もありますよね。パンチも止められちゃってるし、流れと空気と武器を持った条件反射かもしれませんよ」
……。英雄はもうかなりカッコよく流木を構えている。雑魚相手には使ってやることすらしない『ブレードランナー』も使っちゃってる。『ブレードランナー』まで使ったということは、それなりの相手のはずだ、変態マッチョマン!
「そうだ英雄。その変態がマシーンだろうとなかろうと、お前のパンチの止めるぐらいの相手ではあるんだ。マシーンであろうとなかろうと、雑魚ではないはずだぞ。英雄! クラッシュ!」
「……マシーンじゃないなら、服をやれば丸く収まるんじゃないのか? いや、マシーンでも服を欲しがってんならやれば丸く収まらないか?」
英雄さんからご提案。やはり英雄さん! 超能力使って引っ込みつかなくなっているようだ。
「一葉坊、服をくれてやれ」
「英雄ォ……。俺今これ一枚なんだよ……」
「海パンじゃねぇ服、その辺に置いてあるんだろ?」
「あれ浴衣だぞ。コイツ着られるの? サイズの問題もある」
「サイズなら、むしろ浴衣ならフリーサイズだろ。それにそもそもサイズがあってるからお前の服欲しがったんじゃねぇのか?」
「どうみてもお前かこばやっちゃんのサイズだろ。だから怖ぇんだよ。なんでサイズ合わねぇ俺の服脱がせたがって欲しがってんの? っつったら、そりゃあ変態だからだろ」
「くれてやれっつってんだろ。お前の服の控えは宿行きゃあるだろうし、宿の浴衣でもお前は大丈夫だろ」
「そういう問題じゃない。俺の服を欲しがってる変態の手に俺の服が渡ることが問題なんだ。それにな、陣内家の家紋入りの浴衣ってのは安いもんじゃあねぇんだよ。俺にとってははした金だが、それが高額だってことはわかってんだよ」
「小僧!」
「わかったよくれてやるよ! でも下着だけは勘弁してくれ」
「おい、下着だけは勘弁してやれ」
かなり譲歩したのだが、転送されてきたマシーン疑惑のある変態マッチョマンは顔色一つ変えない。首を縦にも横にも振らず、直立不動でギロッとハイジさんを睨みつける。
「ほらよ!」
ハイジさんが半泣きで浴衣と帯を投げる。すると転送されてきたマシーン疑惑のある変態マッチョマンはその場でキュっと浴衣を着る。ガタイのデカい外国人風のヤツ浴衣を着ると力士っぽい。そして遥か彼方の沖に目を凝らす。
「アイムバック」
「英語下手かよ」
ザッザッと貫禄のある歩き方でどこかに向かって歩き出す変態マッチョマン。一難去ったか。
「なんだぁアイツは。服をカツアゲされちまったぞ!」
英雄さん他人事。用心棒としているはずなのに!
「お前ももう共犯だからな。海パンで宿に服取りに帰れるかよ! 変態マッチョに服をカツられましたで宿に帰れるかよ!」
英雄がシュボッとタバコに火をつけ、他人事のように煙を吐く。
「その火でも押し付けてやりゃあマシーンかどうかの区別ぐらいはついたんじゃねぇか?」
「それでアイツが生身だったら俺は犯罪者だぞ」
「マッパで服カツアゲするヤツの前では根性焼きぐれぇは霞んで消えるわ」





