【ごーしちご ごーしちごーごー このブタ野郎!】第6話 24時テレビ 最終夜
「おちおちソバも食えんな、この街は。どうも権藤教授=サン。あけましておめでとうございます。ジンナイ・カズハです」
「ドーモ、ハイジ=サン。ゴンドー・ツネチカです。おぉう、やっとるか」
救援部隊到着! 鬼畜お姉さんがオールナイトパチで三重、円谷くんが大混雑の明治神宮参りで天が我らを見放したかと思ったが意外すぎる人物が!
「あけましておめでとうございます権藤先生」
「おぅ」
白髪オールバックに銀縁メガネ、見た目はヤクザ! 中身は子供! 学生をあだ名で呼ぶ(例:陣内一葉→ハイジ)フレンドリーさから生徒からの支持率ナンバーワン! そして何気に演劇サークルの顧問なので、救援部隊しては妥当っちゃ妥当か。
「……」
「ソバがあるのか?」
「……はい」
「じゃあ水原、俺にもくれ」
「……はい」
水原さんが震えながら権藤教授にどんぶりを差し出す。権藤教授はまずはにおいをかぎうむと頷き、割りばしを割ってズズと一すすり、素材の味を楽しんで、七味やネギを足していく。大人だ。大人のソバ道。だが水原さんは震えている。
「ところで水原ァ……あの鍋の下にあるのはなんだ」
ゴゴゴゴゴ……
「アッハイ」
「もよや、俺のMGⅡではあるまいな」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……
水原さん正座。
我々が今回お勧めしたい商品はこちら! 某大学の権藤教授が開発したヒト型兵器MGⅡ! なんとこれ、戦えるんです! 超人強度にして約100万パワー! これだけじゃありません! なんと30分以上連続使用するとオーバーヒートして戦闘機能を失う代わりに鍋を沸騰させるくらいの熱を放出するIHヒーターとしても使えるんです! 大晦日の格闘技と年越しソバはこれ一台でバッチリ! お申し込みは、念力で!
「俺が使った」
「一葉さん……」
ハイジさんが今にも怒鳴り出しそうな権藤教授と泣きそうな水原さんの間に割って入る。一応庇ったか。しかし「これでお湯沸かせるんじゃないですかね?」って言ったのは良崎だ。
「水原ァ! 貴様盗みを働いたか!」
「俺だ! 俺だって言ってんだろコラァ!」
ハイジさん逆ギレ!
「てめぇがカギかけねぇからこうなったんだろうあぁん? 大体なぁ、大学の金でくだらねぇもん作ってんじゃねぇぞ水原とマスカラス路頭に迷わせる気か? 教育者らしくしろ!」
「MGⅡは俺の趣味だ! 俺の金で作ったものだ文句は言わせんぞ!」
「お前の給料は大学から支払われてるんだろうが!」
「ウゥヌ! だが壊されるほどか!」
「30分で壊れるようなもんしか作れなかったのはあんたの実力不足だろうが」
「それは正直、スマンかった。だが30分で自動に腕がもげるようになんか作ってはいないぞ!」
「それは正直、スマンかった」
「誰がやった」
「マスカラスマンだ」
「烏丸ァ!」
マスカラスマン、正座。
「それは正直、スマンかった」
「烏丸貴様誰に向かって口をきいている」
「俺はダメなんですか! 陣内はよくて俺はタメ口聞いちゃダメなんですか!」
「ダメだ」
「申し訳ありませんでした。リーベルトが飛びつき式腕拉ぎ十字固めを見たいと言うのでついかけてしまいました」
「リーベルト! 貴様がやらせたのか!」
良崎さん正座。
「それは正直、スマンかった」
「素直に謝ればよい」
クッとマスカラスマンが息をもらした。
「俺はダメなんですか! リーベルトはよくて俺はタメ口聞いちゃダメなんですか!」
「ふぅー、まぁよい。崩せ」
正座をしていた水原さん、マスカラスマン、良崎が足を崩す。
「俺も少し熱くなりすぎた。ソバを茹でられるくらい熱くなるMGⅡを作った俺だから熱くなるのも許してくれ。すまん、本当にスマンな」
笑いづれぇ。
「ハイジの言っていることもあながち間違っていない。カギのかけ忘れも金の無駄遣いも一理あることはある。それに俺だって新年早々怒鳴り散らしたくもない。ほら、お年玉だ」
権藤教授がコートの懐からポチ袋を取り出し全員に配る。なんかオチがあるのかと思いきやまさかの6人全員に1万円ずつ! なにこのツンデレ!
「『24時テレビ』を観てお前らのことがふと心配になってな。あとは、まぁ、その、なんだ」
「どうした」
「いや、もしファンがいたらすまないんだが、孫が『カウントダウンTV』を観ていてな。そして俺はaikoが大嫌いなんだ。歌唱力もさして高くないし、妙なフシの歌い方で誤魔化してるだけで曲はどれを聞いてもほぼ同じだし、顔もよく見ると……うむ」
なんも言えねぇ……。
「特に毎年新年一発目の『カウントダウンTV』で干支のぬいぐるみを投げるaikoが嫌いなんだ。恒例行事を作って翌年の出演もキープしているように見える……と言えば聞こえがいいが、本音は心底aikoが嫌いなだけなんだ」
なんも言えねぇよ……。
「……」
「……」
「……」
「妙な空気にしてすまなかった。だが本当に嫌いなんだ」
どんだけ嫌いなんだ。
「話は変わってこれは俺がガキの頃の話だがな。俺がまだ秩父に住んでいた頃に、山奥にまだ終戦を知らない旧日本兵が住んでいるという噂が立ってな。仲間と一緒に線路を伝って山の奥まで探しに行ったもんだ。陸橋で列車に追いかけられたり、ヒルのいる沼に腰まで浸かったりしてな」
「……」
「で、ここでハイジがそれって『スタンドバイミー』のパクりじゃねぇか! ってツッコむハズなんだが……」
「ちょっと今それめんどい」
「そうか。だがハイジ卒業後のこの話のオチ担当の後任を見つけねばならないと思っていてな。お前らの中から選びたいと思っていた」
ちょっと今それめんどい。本当にお年玉なかったらこれ権藤教授お荷物以外の何物でもないぞ。状況が悪化してるだけだ。『さんまのカラクリテレビ』のビデオレターの方がよっぽどマシだ。
「さて、俺はこれから車で帰るが、お前らはどうする。渋滞はしてるだろうが送ってやるぞ」
わーいヤッター。
【自己批判】
実質的な打ち切り。