【もう出ない 五・七・五の 在庫がない】第10話 関越道0ビヨンド~新潟×離島~ その10
「ウゥシ。次は強盗マスク、お前の番だぞ! 今度は、塩が嫌だのとは言わせない」
小林氏、勝利の美酒で荒ぶり、恒例の泥酔格闘技でマスカラスマンに挑戦。塩を撒き、座布団を敷き詰めた特設リングで小林氏が四股を踏む! ちなみにデンモクの残機は1、ビール瓶は5。
「いいだろうヒゲ。IWGPは、バロンドールより、遠いぞ」
相撲(サッカー馬鹿)vsプロレス馬鹿、激突!
「えー、盛り上がってるところですが、告発があります。これを言うのは気が引けるけど、告発せざるを得ない」
「おぅどうした星野」
「わたしは雨宮を告発する!」
「ハハハ!」
ハイジさん爆笑。
「その前に一つ、告白したい」
「おぅ」
「雨宮からわたしはあるものを盗んだ」
「何を? 心を?」
「形あるものを荷物から盗んだ」
マジ泥棒。
「それがコイツだ」
星野がボクサーのグローブのようにアライグマのパペットをはめている。かなり年季が入っているようでけば立ち、色がくすんでいる。そして最早ボロ布と呼んで差し支えない布をスカーフのように巻いている。雨宮さん撃沈。崩れ落ちて何も言わなくなる。恥ずかしさでメガネが割れそうになってる。
「雨宮に代わって供述すると、こちらのパペットは雨宮が、イマイチ自分のキャラが立っていないことを気にし、初めての泊りがけでぬいぐるみを手放せないあざといカワイイキャラを確立させようと、この旅に持ってきたもの! しかし、訴えたいことは、このパペットは本当に雨宮が大切にしているものらしいという事。その思い入れまでは偽っていないと信じたい」
薄汚れているのはパペットではなく雨宮の心!
「しかし雨宮は、これでは無理だなと判断し、コイツは連れてきていない、ということにすることにした。しぃかぁしぃ彼女はミスを犯しましたぁ。ンフフ、彼女、これで行けるかどうか昨日、わたしとリーベルトに相談してしまったんですねぇ」
星野の唐突なクオリティは低いが古畑とわかる古畑からのハイジさん腰砕け!
「え、これで? アッハッハッハッハ!」
ハイジさんがパペットを星野から受け取り手にはめる。
「アッハッハッハッハ。フハハハハハ!」
ツボに入ったようだ。
「そんな彼女を、どうか許してやってあげてくださぁ~い」
「雨宮、なんか言う事はあるか」
「ありません」
キリッ!
「全て、星野さんの言う通りです」
キリリッ!
「わたしがその子を大事にしていることも事実ですし、そんな子を利用した悪しき心も本当です。そして、なかったことにしようとしたことも本当です」
キリリリッ!
「ですから、なかったことにしてください」
「コイツ名前何?」
「トッピーです」
「ワーイ、僕トッピー! ぬいぐるみの国と、えー……カンナちゃん! カンナちゃんの」
ハイジさんが楽しみ始めてしまったぞ。そして素で忘れられる、雨宮さんの下の名前!
「カンナちゃんの部屋を行き来してカンナちゃんの津々浦々を見てきたんだい! 一緒に寝たこともあるよ! ねぇカンナちゃん!」
「あります。ですから」
「何をやるにも一度許可をとってから! 律儀で真面目でたまに冒険したら大体ミスって誰かに心配される雁字搦めのガチガチちゃんがカンナちゃん! そんなカンナちゃんのところに今日から新入りが入ったんだ! マスターボールに入ったライコウくん!」
「はい、ですからもう」
「ぬいぐるみの国も、リーマンショックで綿を減らされてそう簡単に子供を増やせない高齢化が進んでいるんだ。まぁ、僕は下半身がないっていうか、僕の下半身はカンナちゃんの手首だからって、ヒいてんじゃねぇ!」
そりゃヒくさ! セクハラの域に入ってきた。
「そりゃあ僕はきったねぇぬいぐるみだけど」
「ちょっとそれはやめてください。本当に思い出のある大事な子なんです!」
「キャラ立ちのために利用しようとしたくせにイジられるとキレちゃうサイコパスなカンナちゃんが大好きだい! 逆立ちだってできるぞ! そしてスポッと抜けると……」
トッピーを外すとハイジさんが小指と薬指をくっつけ、中指と人差し指をくっつけ、親指は単体で立て、指先は床に向けている。親指がトッピーの右手、中指&人差し指が頭、小指&薬指が左手だろう。
「マンハッタントランスファー!」
スタンド名 マンハッタントランスファー
本体 ジョンガリ・A
【破壊力 - E / スピード - E / 射程距離 - A / 持続力 - A / 精密動作性 - A / 成長性 - C】
雑すぎて伝わらないモノマネ! 笑っているのは、もう良崎だけです。
「でもこれでトッピーのキャラは立ったよな?」
「わたしのキャラが立ってほしかったんです。これじゃあわたしもトッピーも、薄汚れたキャラじゃないですか……本当に申し訳ない」
「そうだよ。俺がスベったみたいじゃん」
「いえ、トッピーにです」
「でもこれ、スベった責任は告発した星野でいいよな」
星野がオーバーリアクションで態度悪くなる。
「なんだよォ。都合の悪いことは全部わたしのせいかよォ」
「じゃあどうにかできるか?」
スッとトッピーを差し出し、星野が受け取りスポッとはめる。
「ワーイオイラはカンナちゃん大好きパペットだよォー! カンナちゃんってサイコーだよねー! あれぇ? こんなところで、カンナちゃん発表会があるぞぉ。僕が見なきゃ誰が見るってんだい!」
にゃんこスター大好き星野、またも道連れで雨宮さんを地獄へいざなう。
「えーと」
「マスカラスマンベリアルは抜き」
雨宮さんマジ困り。
「リーベルトさん助けてください」
雨宮さん最高に賢い判断。ここでは道連れをもう一人増やすのが最善だ。そして良崎はフスマを開け、スリッパを一足持ってきて自分の両手にそれぞれパペットのようにはめる。
「おぅ雨宮! チャンピオンへの挑戦まであと三日だ。俺がカットマンをやってやる。よぉーし自慢のパンチを見せてみな」
パス、と雨宮さんが良崎のスリッパンチングミットに軽く遠慮がちなパンチを一発。
「おいどうした! 世界はそんなじゃとれないぞ! ほらワンツー!」
「ワンツー!」
パァンパァン!
「OK! ワンツーからのスリーだ!」
「ワンツーからのスリー!」
パンパンパァン!
「OK! あとはあっちで激闘中のサッカー力士とプロレスラーを倒してですね」
「もうマスカラスマンベリアルで許してください! これ以上やったらわたしは泣きます。うぅごめんなさぁい……」





