【もう出ない 五・七・五の 在庫がない】第9話 関越道0ビヨンド~新潟×離島~ その9
恒例! 宿のメシ後レク!
「桜井はなぁ。いいヤツなんだけど、一緒に遊ぶとなると面白くねぇんだよな」
「え、俺面白くないんですか?」
「面白くないよ。だってお前何やっても無難にこなすじゃん。円谷くんのように器用万能ではあるが、決して円谷くんのような無駄な派手さがあるわけではないからヘイトは溜まらないが、何やってもお前が勝つってわかってると面白くねぇよ。そりゃあお前の彼女のサキちゃんは鼻高々だろうさ。えー何やっても桜井くんスゴーイ! ゲーセンで120連勝スゴーイ! えぇー? ポケモンも出来ちゃうの? えぇー運転もうまいのぉ? もうお料理も任せられちゃうしハウスキーピング全部任せられちゃう結婚したーい! あの都内屈指の優良物件彼女が! ダオラファッキンゴナファック! 桜井に死を! 幸いにも円谷くんと違ってヘイトが溜まらない地味な顔面で謙虚な姿勢だから許せるが、もし驕ったりするようなら桜井に死を! ソイツが一番のクスリだぜ!」
でもその都内屈指の優良物件彼女とファ……やることはきっとやってんだよな。うわ、桜井マジファッキンだな。ファッキン!
「ハァ……」
ハイジさんのストレスがヤバイ。酒が入っているとはいえ、今日一日、ずっと助手席で助手をしてくれた桜井にこの暴言!
「だが桜井。そういうことで、お前の程を知りたい。お前が一番得意なのは、ゲームだな?」
「いやぁ……」
「言葉を選ぶってことは、俺たちが桜井にゃあ敵わねぇや! って思ってるゲーム以上に得意なもんがあるってことだな! ガールハントかな! そろそろクスリが必要になるぜ……悪党と驕りモテ野郎によぉく効くクスリがな」
そういうハイジさんも学内屈指の彼女・水原さんを持っているじゃないか。いや、待てよ……。見た目は良崎や鬼畜お姉さん、雨宮さんと比べれば地味だが、キャプテン・アメリカのようにどちらかといえば美形の部類、スレンダーだが星野と違ってキャプテン・アメリカの精神ほど真っすぐな体型でもなく、性格はキャプテン・アメリカのように優しく性格ならば間違いなく学内一、料理・運転・カラオケ・ブログとスペックも高く、見た目×性格×スペックの総合値では、昨年までの水原さんの彼女力は学内No1……? 陣内にも死を! ソイツが一番のクスリだぜ!
ハイジさんが芝居がかった仕草で指パッチン。すると広間の照明が落ち、フスマがスパァンと開いて、後光を浴びメガネをギンギラギンに輝かせた小林氏が小脇にPS4とコントローラーを2つ抱えてやってくる。そして桜井にコントローラーを差し出す。
「このヒゲにウイイレで勝てるかな? このヒゲのサッカー馬鹿っぷりは地味だが筋金入りだぜ。サッカー専用の手書きノートが20キロぐらいある。フォーメーションから選手名鑑、ウイイレでのシミュレーションから攻略まで」
ノートの量の単位が冊じゃなくてキロ!
「さて、心構えと結果から4つのパターンが予測される。一つは、ヒゲをナメた桜井がわざと負ける。二つ、ヒゲをナメずに全力を出した桜井が、ヒゲのサッカー熱に敗北。三つ、ヒゲをナメた上に勝つ。四つ、全力を出した上で勝つ。このうち……許されるのがどれかわかるか?」
桜井vs小林 ウイイレ対決
1、桜井が舐めプで負ける→桜井驕り→「ソイツが一番のクスリだぜ!」
2、桜井が全力で負ける→桜井許される
3、桜井が舐めプで勝つ→桜井何様?→「ソイツが一番のクスリだぜ!」
4、桜井が全力で勝つ→桜井許されるがイラッとは来るかもしれないがリスペクトにつながるかも
雁字搦め!
「やりましょう」
桜井がコントローラーを受け取る。
「ただし、練習試合を少しやらせてください。CP相手でいいので」
「よし、やれ。それでお前の力量もわかるから、本番でナメたプレイをすればわかるしな。ヒゲもウォーミングアップはしとけ」
メガネキラーン。
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
マン レッド(小林)vsMDホワイト(桜井)
名前の元ネタ的にどちらも強豪ではある。
「……」
「……」
小林桜vs桜井玲。喫煙ダブルチェリー、真剣過ぎて何も言わずキックオフを待つ。絶対に負けられない戦いがそこにはある!
「賭けるものが必要になるか」
一番のクスリ以外にぃ!?
「闘魂電話でしょうね」
「闘魂電話だな」
「俺も闘魂電話に一票」
「じゃあ闘魂電話で決まりだな」
しかし喫煙ダブルチェリーの答えは一つ! 真剣! 敗北の先にあるものはすべてを受け入れるのみ。
「闘魂電話の相手は、リザルト次第で決めるか。じゃあかけさせたい闘魂電話の相手挙げて行こうぜー!」
「鬼畜お姉さんに一票!」
「サキちゃん!」
「水原さん!」
「権藤教授」
誰が相手でも地獄! 桜井が負けてサキちゃんに闘魂電話になると、ノロケ電話になって地獄を見るのは俺たちだ。そんなことになったら一番のクスリのくれてやるハメになるぜ!
「キックオフ! さぁ負けるなヒゲ! 負けるな負けるな! 桜井がウザいんじゃない! 単純にあれだけサッカー熱のあるお前が負けてたまるか! サッカーが好きなんだろ!? でも運動が苦手でプレイは出来ないんだろ!? だからこそ負けるな! 気持ちと知識と、サッカー頭脳でぇ負けるなぁ!」
これで負けたら小林氏不憫すぎる。
「ちなみにこちらヒゲのノートです」
段ボール!
「え、これスゴイですね。こんなにサッカー好きだったんですか?」
「好きだけどプレイできないから、恥ずかしくて少し隠してたらしい」
「サッカーガチ勢ですね!」
「これは……本当に好きでなければできないぞ。俺のプロレスノートでもこんなにはならない。いや、すまない。見栄を張った。俺はプロレスノートなんて書いていない。小林氏にもし、身体能力が……。もし、深山みちるや村上千穂レベルとは言わないまでも、俺レベルの身体能力があれば、相当のプレイヤーになっていたかもしれないな。並大抵の努力じゃない。いや、努力なんて思っていたらできない。サッカーへの引力としか思えない。引力即ち愛!」
「これはヒゲを勝たせてあげたい。桜井のちっぽけな温情じゃなくて、サッカーの神様というものがいたら」
小林氏の重みスゲェ。全員が、桜井へのヘイトじゃなくて単純な小林氏への応援で団結。
「おっとぉクロス入ったぞ!」
「行け行け行け行け!」
「最低でもシュートで終われ!」
「あぁー。あぁぁあ!?」
「いよっしゃあ! 前半18分、ヒゲPK獲得ゥー!」
「よぉしここ一発……行ったァー!」
ヒゲ1-0桜井
「この一点! 守り抜いて戦おうなんて思うなよ! ッッッヒゲクリアァー!」
「あぁー!」
「敵ながらアッパレ! 見とれるほどオシャレなループだ……」
「あんなシュートがウイイレで打てるのか」
ヒゲ1-1桜井
「これは桜井、舐めプじゃないですね。桜井も全力です」
「なんか、泣けてきますね」
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】
「もしもし、アントニオ猪木です。えぇーアレは東京駅でですね、私共が旗揚げをしてそして日本プロレスの末期というかね」
ヒゲ3-1桜井
桜井、闘魂電話決定! だが桜井は舐めなかった。舐めていたらあの表情はできない。そして勝った小林氏の方が抜け殻になりかけてる。死力を尽くしたのだ。全力を超える、死力を! 雨宮さんの言う通り、泣ける勝負だった。
「うん。そう、俺負けたんだ。え、あぁ、ウイイレで。うん、今新潟の佐渡島にいるから。星野か雨宮さんに代わろうか? え、陣内さん? 陣内さん、代われます?」
「よし」
闘魂電話の相手は桜井の彼女にして都内屈指の優良物件彼女・サキちゃん。そして我々は、最高の名勝負を、もう終わろうとしているこの“平成”の時代を代表する名勝負を見せてくれた桜井に、ペナルティ闘魂電話よりも、慰め闘魂電話として、相手をサキちゃんにした。理解のある彼女なのである。
「陣内です。サキちゃんお久。元気でやってる? 桜井くんはね、ウイイレで負けました! マジマジ。ハハハ。そぉうだよサキちゃん。世の中にはねぇ、桜井くんを負かすような男もいるから、そういう時は、優しい言葉をかけてやんな。だが、まず負けねぇよ。相手は人間辞めるかプロになるかってレベルのサッカー馬鹿だからよぉハハハ。じゃ、桜井に代わるな」
「うん、マジ強ぇよ小林さん。マジで悔しい。うん。負けちまったよサキちゃぁん!」
……。……!!! 名勝負をしたことはリスペクトに値するが、あんまり長引かすな。一番のクスリが必要になるぜ……ッ!





