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【もう出ない 五・七・五の 在庫がない】第6話 関越道0ビヨンド~新潟×離島~ その6

 熱烈プレイ中! VC『ポケットモンスター 金/銀』! @関越自動車道


「照り返しヤベー。次で休む」


「……」


「……」


「……」


「そうっすね」


 そして『金/銀』プレイに専念するため、助手席が星野から桜井に交代。もう『金/銀』プレイ中のヤツらは『金/銀』プレイ中のヤツら同士でポケモンの話しかしない。


「ウソッキーどかすじょうろってどこだっけ?」


「調べます」


「いや、雨宮、わたしが調べる。まだ今月ギガそんなに使ってないし」


「助かります」


 運転してるハイジさんに返事をしろ……。そして、VC『金/銀』をプレイし、既にクリアしている運転手のハイジさんと助手席の桜井は後ろの会話に参加しない。桜井は生きた攻略本として会話にも参加できるのだろうが、参加したが最後、ハイジさんが孤独になってしまうとわかっているのだろう。何気な気遣い、こういうところだぞ、都内屈指の優良物件の彼女を持てる理由。


「陣内さんも疲れてるでしょう」


「いや疲れちゃいねぇよ。だって朝、予期せぬ休み時間があったからな」


 と、大遅刻した女子勢にチクリと放つが、VC『金/銀』に熱中している女子勢は、限りなくシカトに近いリアクション! ハイジさんキレてもいい。VC『金/銀』熱中組は全員免許を持っているので、誰か一人ぐらいペナルティ運転してもおかしくない。特に大遅刻をした女子勢、その中でもひときわ反省が薄く、2連遅刻の星野あたりはやってしかるべきなのだが、星野は初心者。即ち助手席の負担が大きくなり、無理にVC『金/銀』を中断すれば運転への集中力も欠き、助手席の負担はさらに増える。そうなるくらいなら、ハイジさん→桜井→ハイジさんのローテが運転し続けるのが一番ラクなのだろう。ハイジさんも愛想をつかしたのか、チクリと言いはするがシカトに対してはもうリアクションしない。


「桜井」


「はい」


「お前に教えておくことがたくさんある」


 そして失態続きの星野は大学番長の座すら失いつつあることに気付いているだろうか。


「次のSA、刺客いるから」


「……刺客?」


 良崎が反応。


「アレッ? 聞こえてた?」


「聞こえてますよ。刺客いるんですか?」


「いる」


「ってことは、佐渡島が地獄ですね。星野、雨宮、刺客がいるってことは、刺客を倒せばなんらかのご褒美や救済措置があるということです。つまり、そういうものがないとやってけないぐらい佐渡島がきついということです」


 経験値は多い。


「いけんじゃない?」


「じゃあてめぇが行け」


 ついに半ギレのてめぇ呼ばわりが出てしまった。次のSAで運転手を桜井に交代すべきだな……。




【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】

【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】




「ヘイ、ガァイズ!」


 SA到着。そして、休憩前に刺客と遭遇してしまった。


「キョウ☆ヘイでぇす。今日は、あの学内で話題の『演劇サークル』との対決シリーズです!」


 めっちゃ腹立つ軽いノリのバカが俺たち、じゃなく自前のカメラに向かってポージングとオープニングトーク。ああいうタイプか……。大学まで入ってんのに広告収入目指す系の……。決して広告収入で稼いでいることを楽して稼ぐこととは思わない。むしろ広告収入で稼いでいる人たちはスゴイとも思う。だが、やっている内容は大人向けではない。炎上芸は大人向けかもしれないが、自らに火をつけながら走り続けるなんて、それは血を吐きながら続ける、悲しいマラソンですよ。広告収入で稼ぐことが楽して稼ぐことと思って目指しているかもしれないが、親は……成功すれば、それは喜ぶだろうが……。楽して小銭を稼ぎたいなら、あくまで大学生の小銭稼ぎとしてなら、広告収入で稼ぐより、覆面調査員(ミステリーショッパー)の方が楽だぞ……。


「ちょっと時間ありそうですから、タバコ吸ってきますわ」


「ああ、行ってこい」


 オープニングトークが長引きそうなので桜井タバコ離脱。目で追うと、喫煙所で小林氏と合流したらしく、『キン肉マン』のペンタゴン&ブラックホールの四次元殺法コンビのように腕組みをしてこちらを見る。そして小林氏が放ったなんらしかの冗談に笑う桜井。桜井スゲェな。もしかしてアイツが都内屈指の優良物件彼女を持っているのは、ヤツ自身が都内屈指の優良物件彼氏だからでは……?


「そういう訳で、衝撃の展開にご期待を!」


 このバカも頑張ってるのは認めるよ……。

 喫煙所の小林氏が何か手で指示を出し、ハイジさんがヒョイと手を上げ返事。するとどこからか、『演劇サークル』お抱えの特殊なスキルを持った人材が登場。キョウ☆ヘイと我々の分、二つのテーブルと特大中華鍋が高速設置! この鍋はまさか……。


「この鍋に見覚えは?」


「ありません」


「てめぇにゃ聞いてねぇから黙ってろ。なぁ? マスカラスマン」


 キョウ☆ヘイにめっちゃ厳しいな。


「これは……。ダイブ系か?」


「ご名答。ダイブ系だ」


 ハイジさんの言葉が少なくテンションが低い。キョウ☆ヘイに取れ高を与えないためか。


「陣内先輩初めまして。キョウ☆ヘイでぇす」


「おう」


「先輩方みたいなスター目指して頑張ってるんで。俺の名前、覚えといた方がいいっすよ」


「いや、俺らがやってんのは広告収入で稼ぐためじゃねぇから。俺らはサークルの人数が足りなくて、宣伝の為に水原ってヤツがブログを書いてただけだから。今は、慣例で会長がブログを書くことになってるが、人数が足りてる今、別にもう俺は廃止でも構わないと思ってる」


 相手がつまんないヤツだからハイジさんつまんない人になっちゃった。


「廃止でいいと思ってんなら書かなくていいじゃん」


「会長は俺じゃないぞ。マスカラスマンだ」


「え、そうだったの?」


 星野さんの失態が止まらない。


「そうだよ。俺が引き継いでんだよ、水原さんの会長ブログを。さすがの俺でさえ心が折れそうになるぞ。水原さんのブログはレベルが高すぎた」


「水原がその気になったらブログでかなり稼げるはずだ。アンティーク喫茶ブログでも書きゃ実家の客も爆増だろうな。あとさっきから先輩先輩って言ってるが、俺は再入学で一年生だから特に先輩という訳でもない」


 ハイジさんがつまんない人になっちゃったぁ! この相手では面白くする必要がないと判断されちまった!


「でもマジ、先輩たちも一緒に広告収入で食ってくの目指しましょうよ。いいセン行くと思いますよ。リーベルトさんとかマジ、ギャグセンありますし、名前もサムネで人目ひくじゃないですか」


「なんですか? ケンカしますか? ケンカですか? カメラ止めるんならいいですよ。めちゃくちゃ面白いケンカしますよ。こっちは7人いますから。プロレスラーと元剣道部がいますし。……まだカメラ動いてんでしょ? 黙っちゃっていいんですか?」


「すいませぇん。ペースに飲まれましたわ。俺らしくなかったすわ。さすがっす」


「お前何年生ですか?」


「一年生(ルーキー)っす。でもリーベルトさんもルーキー時代からやってたんでしょ?」


「でしょ? ってことはよく知らないってことですね。よく知りもしないのに、刺客として用意されてこっちのふんどしでやらせてもらう立場でありながら、割と頭が高いですよねぇ」


「……」


「どうしました? この大学にはもっとメチャクチャに口ゲンカ強いお姉さんもいますよ」


「いるんすか……」


「彼女の存在も知らないようではまだまだですね。まぁいいでしょう。刺客が来たんなら、こっちはいつも通りやり返します。みんなもう少しキャラが立っていたし、やりがいのある相手でしたねぇ。なんでしょう、こっちのエンジンがかかってないのかもしれないですけど、こんなにモチベーションが低いのは初めてです。好感度気にしているうちはこんなこと言えないでしょうけど、癇に障るからやる気が出ないってこともあるんですよ。お前一年生なんですって? 一年生の夏休み、この時期にこういう活動を一人でやってるってことは、前期もそうしてすごしたのでしょう。人間関係を構築する一年前期に孤立するようなことをすると4年間孤立しますよ。あなたがわたしをどういう人間と思っているかは知りませんが、わたしは一年の前期にはもう今と同じような人間関係はもう築いてました。いいんですね?」


 フルボッコ!


「まぁまぁ。キョウ☆ヘイくんはアレだから。ご存知の通りルーキーだから。だからまだ、本番じゃない、あ、新潟県の佐渡島に行く俺らにとって本番じゃない群馬に設置されたわけだから」


 追ボッコ!


「よし、じゃあこばやっちゃん戻ってきたから始めるか」


 まだ始まってもいなかったのか……。そして小林氏と桜井が談笑しながら戻ってくる。


「じゃあ今回の旅一発目の刺客! キョウ☆ヘイくんです。キョウ☆ヘイくんは一人で活動している立派なエンターテイナーだ。フレッシュな一年生。今日は刺客、ということで群馬県に来てもらってます。競技は、『ソルトダイバー』!」


 キョウ☆ヘイくん、自己紹介の余地すら残されず。


「ソルト……塩? ふざけるな……ふざけるな!」


 マスカラスマン憤慨! ソルトダイバー……名前から察するに、以前行った『きな粉ダイバー』のきな粉が塩になったバージョンだろう。きな粉ダイバーとは! 中華鍋一杯のきな粉に顔を突っ込み、顔の触感だけできな粉の中に埋められたアイテムが何かを当てる競技である! 競技中は中華鍋からどんどんきな粉が零れるため、第三者により、柄杓からどんどんきな粉が追加される。ちなみに、前回きな粉に埋められていたアイテムは、ハイジさんが光が丘のフリマで買ったジバコイルの指人形(ハイジさん曰く「色が剥げるぐれぇの殺菌済み」)だった。塗りつぶされたゴーグル、耳栓の装着が体の保護や競技の都合上必須であるが、マスカラスマンとテストで使われた受け身のプロ兼死んでもいい人たちは顔面の凹凸がすべてきな粉で埋まり、競技後三日は顔のどこかからきな粉が出てきたという。それが今回は塩!


「プロレスラーに塩だと!? 冗談じゃない!」


 マスカラスマンだけは、キョウ☆ヘイくんのために無理してテンション上げてあげているんだなとわかる。心底正義感だ、マスカラスマン! そして、プロレスラーにとって塩は天敵! 塩試合、塩レスラーという言葉は「つまらない試合」「つまらないプロレスラー」を差す俗語であり、「しょっぱい」と使われることもある。プロレスの試合ではないにせよ、「マスカラスマンが塩試合」「マスカラスマンしょっぱい」などと言われるのはマスカラスマン的にはよろしくない。


「そうだな。プロレスラーに塩はよくない。だが、俺はこの先も運転があるから、塩ダイブは避けたい。お前らも避けたいはずだ」


「そうですねぇ……」


 そうなのはわかってるけど塩ダイブはさすがにできない。良崎も歯切れが悪い。


「……でもマスカラスマンに塩は本当にやめてあげたいんですよ。プロレスラーとしてはマジでいいプロレスしますから、プロレス好きとしては、本当にいいプロレスラーを塩扱いしたくはないです」


「そうなると、マスカラスマンも回避だが、個人的には、桜井も残したい。運転の交代要員だ。ヒゲも運転がある。そうすると、今回のダイバーは女子に絞られるわけだが……。今回のソルトダイバー、前回からもわかるように、非常に事後処理が面倒くさい。みんな覚えてるな?」


「覚えてます」


 みんな覚えてる。キョウ☆ヘイくん以外。キョウ☆ヘイくんだけ話に入れない仕様!


「そう考えると、消去法でだ。一番面倒くさいのは髪の毛だからだ」


 女子の髪長さ

 雨宮さん(セミロング)→良崎さん(セミショート)→星野さん(ショート)


「星野だな……」


 天を仰いだ星野! 悪夢のような現実が、そこには待っていました。天罰! 星野、群馬に死す!


「これ死ぬよね?」


「お前の家系に高血圧で死んだ奴いるか? いや、ちょっと待て。おい、ユダ! ユダいるか!?」


 機材担当ユダがひっそり登場。機材担当なので黒子に徹し一言もしゃべらない。


「血圧計ある?」


 スッと差し出す機材担当。


「じゃあちょっと星野の血圧待ちで、ハーフタイム! 一次解散!」




【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】

【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】




「星野の血圧が残念ながら正常だった。予定通り、ソルトダイバーを決行する」


第六話

ソ

ル

トダイバー


「まぁ浅間山のお膝元だから。きな粉ダイバーからソルトダイバーへ移ったデメリットは、この際目を瞑るが、メリットしては水に溶ける素材なので洗うのが楽です」


「デメリットの方が明らかにデカいでしょ。血圧高かったらわたしやれてなかったんでしょ!?」


「やれてない。ヒゲなんかもうデブの時点で危なくてどっちにしろやらせられない。でも、今回は水に溶ける素材だから。一応これな」


 +水泳帽。


「SAにガッツリ洗髪できるような設備はないよ」


「早くしねぇとラプラス捕まえらんねぇどころか今日も群馬で終わるぞ」


「わかったよ……」


 星野さん、ゴーグルと耳栓と水泳帽を装着。恰好だけは本当にダイバーだ。海のない内陸県だけど。キョウ☆ヘイくんも準備万端、ハイジさんに鍋の前まで誘導される。


「そいじゃあ、ソルトダイバー、キックオフ!」


 耳栓越しでも聞こえるぐらいのハイジさん今日一の大声。キョウ☆ヘイくんは見せ場を作りたくて即ダイブ! そして塩辛さで悶絶! 一方星野は、キックオフ直後のダイブ直前にハイジさんに肩を叩かれ、装備を解除。ハイジさんが人差し指を立てて静かにしろと命じる。


「?」


「それでは、先に行きましょう」


「!?」


「あのガキの面白ければ何してもいいでしょう的な迷惑行為には学内からクレームが多かったらしい。しかも面白くないらしい」


 小声。「らしい」ってことは、ハイジさんもキョウ☆ヘイくんの投稿するモノは観ていない御様子。


「そういう訳で、キョウ☆ヘイくんにペナルティソルトダイバーだ。気づくまでやってろ。独力でやれてると思ってるようなガキも、ナトリウムが足りて他人の有難みを知り、少しはマシになるだろう」


 放置。


「それにいくらお前でも、塩にダイブなんて俺がさせん。危ない危ない。それに染めてるぐらいだから髪を大事にしてんだな、ってのもわかってるつもりだし、ってか、ピアス外させなかった時点で気づけよな」


「陣内ィ……」


 星野さん、塩ダイブしてないのに目からしょっぱいものが……。


「いくらお前が天動説の地球ぐらい平たい体型してても、女子は女子だから」


「本当に、最近調子乗っててすみませんでした」


「わかればいい。追加の塩が来ないと勘づかれる前にヅラかるぞ」

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