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【それぞれの 思いがあるから さておいて】第5話 声優同好会殲滅戦 ~リアル野球BAN 練馬夏の陣~

「ウィース」


「ウィ」


「母ちゃん、あっついな」


 立ちションしてたところを刺されて殉職した刑事みたいなハイジさんのあいさつ。


「まぁ、夏と冬の休みは声優同好会が野球で絡んでくるってことで、先手を打って野球して『演劇サークル』の今年の夏の野球はもう終わろう」


「それいいですね。アイツらはもうこの夏は好きな声優の声を聴いて泣いて喜ぶ家族を想うムショの中みたいな生活を送ればいいんです」


「そういう訳でチーム分けな」


白組

陣内

小林

星野

桜井


紅組

良崎

マスカラスマン

円谷くん

雨宮


共通

羽場


「……羽場? アレ? コイツ声優同好会じゃないですか?」


 良崎が服を着てはにかむ類人猿を指さした。


「人を指さすなぁ! 失礼だろう」


「え、これヒトなんですか? ゴリラでしょう」


「限りなくゴリラに近いヒトだ。それでは羽場くん! 君の情報を」


 羽場くん、ハイジさんからのパスに備えて少し微笑む。


「知っている人は少ないだろう。俺が教えてやる」


 羽場くんガッカリ。


「羽場くんの現状は見た目はゴリラだが、ゴリラ容姿をイジられることで今は心優しいゴリラ容姿ネタのいじられ役に収まることでサークル内のポジションを掴んで姫を囲ってるオタクゴリラだが、実は高校野球夏の地方予選を激戦区東東京でベスト8を2回、正捕手で出場している。つまりこのゴリラが両チーム共通のキャッチャーな訳だ。キャッチャーいねぇとリアル野球盤できねぇから」


「は……」


 何か言いかけた羽場くんをハイジさんがズビシィッ! と指さし、人差し指を羽場くんの口元に持って行って沈黙を強要。そして懐から何かを取り出し、羽場くんの手にそっと乗せ、両手で握らせる。クシャ、と何か紙幣(シヘイ)のようなものが潰れるような音がした。


「……な?」


「ウス……」


 うつむいて握らされたモノを見ている羽場くんをハイジさんが睨み上げるような上目遣い。羽場くんだんまり。


「でもコイツ、リークするんじゃないですか? 声優同好会に」


「大丈夫だ。事前に声優同好会には池袋東口でフラッシュモブを行うとニセ情報を流してある」


「東口……?」


「ロメロスペシャルの像があるところだ」


「ああ、あのヤバいところですね。亀の子タワシをリードで繋いで歩いてるおじさんとかいるところですか」


「ああ、よく―――の街宣車が爆音やってるとこだ」


「そこで今日、声優同好会の時限バカ弾が一斉に起爆するんですね。なおさらリークするんじゃないですか? ゴリラのスマホ取り上げないと」


「いや大丈夫だ。俺は羽場くんを信じてるから」


 羽場くん、仲間に取り付けられた時限バカ弾ご存じなかった! 目を丸くして驚いている。何か言いたげだ。しかし、再びハイジさんが懐から何か取り出しクシャッと握らせる。そして上目遣いで……


「な?」


「……ウス」


 このままじゃ阿部慎之助もビックリの高給取りキャッチャーになるな。ミットに黒い金と密約を握った野球選手、羽場。


「そういうことで、特番でお馴染みリアル野球盤で行こう。まぁ、これならそんなにパワーなくてもころがせばどうにかなるし」


「でもまんまパクって面白くなるかぁ」


 リアル野球盤とは! 懐かしのオモチャ野球盤を模した疑似スポーツである! お正月と夏に行われる、褐色、赤、黒などの棒を屈強な男たちが握りしめ、振り抜き、白いものを遠くに飛ばす競技である。もう少し詳しく説明すると、ピッチングマシーンから投球される弾を撃ち返し、グラウンドやフェンスに設置された、一つ塁を進める「1BH」、二つ進める「2BH」、三つの「3BH」、問答無用で得点の「HOMERUN!」に当てる、乗せるなどで塁を進めるものである。何も書いていないゾーン、ネット、「FINE PLAY」「ダブルプレー」のパネルに当たるとアウトとなる。なお、ランナーは透明ランナー制が採用されている。それ以外の投球時のカウント、アウトカウント等は通常の野球と同じである。


「盛り上げシステムはもちろんある。アウト賭博だ!」


 あぁーとそれはいけません!


「自分のアウトを敵に献上することで、守備に就いている選手を実在の名選手に置き換えて守備力を強化できる。アウト1つを賭けた場合、全てのポジションと全ての選手がシャッフルされた賭博(ガチャ)。2つ献上で“内野”“外野”のどちらかを選び、選手ガチャ。3つ献上で名簿から選手を指名できる。献上したアウトは敵に加算される。つまり、白組がアウトを3つ献上して選手を指名した場合、白組はその時点で3アウトで攻撃が1イニングなくなる上に、紅組が6アウトまで連続攻撃できるってぇ寸法だ。ちなみに、ガチャで出た選手をつかわなくてもいいと思った場合は使わなくてもいい。一度守備に就かせた選手は一度までなら守備位置を変えられる。ベンチに下げたらもうその選手は出せない。適性のないポジションに就かせた場合、守備力が下がる場合もある。選手のラインナップは鬼畜お姉さんと権藤教授が選んでるから俺も知らない」


「まぁ、それなら面白いですね。じゃあ先攻ジャンケンしますか」


「いや、お前決めていいぜ。お前練馬地元だろ」


「そうですけど」


 東京都練馬区出身、良崎=リーベルト・アンナ。


「じゃあ、ホームチームなんで、後攻で」


「OK。ガチャは?」


「とりあえずなしで様子見で行きましょう」


 ※安全を期すため、キャッチャーの類人猿にはイヤホン越しにコースと球種は伝えています。


 プレイボール、と鬼畜お姉さん。


「俺行っていいすか」


「どうした桜井」


「円谷くんの配球読み崩してぶっ飛ばしてやりたいんですよ」


 モテ男同士の謎の確執!


「ハッハッハ! ボクの名前、栄治(エイジ)の由来を知らないと見えるね桜井くん! ボクの栄治は、あの伝説のピッチャー沢村栄治から来てるんだぜ!」


「ふかすな」


「ボクの地元、井草の上井草スポーツセンターには沢村栄治のパネルがあるんだぜ」


 その程度ならふかしてないんだろうなと判断したのか誰もそのネタを追わない。そして桜井が右バッターボックスへ。円谷くんがマイクにささやき、黒い金を握って賭博に身を投じるキャッチャーのイヤホンへ。

 第1球!


「ッ!」


 インハイにストレート! しかし、速度は常識的、というか、コースがばらけるが、速度や球威は完全初心者の女子にも優しいバッティングセンターレベル。そもそもフィールドも広くないしな。

 第2球! ッカァーン!


「!? ……!」


 桜井渾身のフルスイングは、三遊間を抜けツーベース! 一番打者がいきなり得点圏とはなんと幸先が良いことか!


「オッケェーイ今すぐ返してやるぜ桜井」


 ハイジさんが右バッターボックスへ。今までの声優同好会との野球勝負では幾度も都外ホームランを打ってきた強打者である。


「いきなり面白いシチュエーションじゃあないですか。アウト賭博! 1つ」


 あぁーと良崎、いきなりアウト賭博(ガチャ)! 賭けるアウトは1つ、即ち白組の攻撃が4アウトまで続き、1イニング目、紅組は2アウトで終わる。そして賭けるアウトは1つ。完全ランダム賭博(ガチャ)だ。鬼畜お姉さんがくじボックスを持ってマウンドへ。そして白組ベンチにも見えるように良崎がくじを引き、畳まれた紙を広げると……


「センターに英智(ヒデノリ)を!」


英智(ひでのり) 元中日ドラゴンズ

 鉄壁落合野球を支えたフィールディングのスーパーサイヤ人。バッティングは少し物足りないが、その分守備に特化しており圧倒的守備範囲と強肩を誇る。落合監督をして「プロ」「(英智が取れなかったフライは)誰にも捕れない」と言わしめ、岩瀬を筆頭とするリリーフ陣と共に、守備固めとして試合終盤でゲームを支配した。引退セレモニーでホームから外野スタンド中段に投げ込んだ遠投パフォーマンスはあまりにも有名。


「いきなり英智引いたのか」


 どこからか威嚇戦隊能面ジャーが出現、センター付近のアウトゾーンが広がり、センター定位置+前進守備ぐらいのアウトゾーンに。センター返しはもうできない。


「……オイ、ガキコラ! それからイケメンのクズ!」


 ハイジさんがバットを日時計のように高く掲げる。


「ホームランこそ至高の打撃。ホームランに勝る打撃はねぇ。ホームランの前にはどんな鉄壁のフィールディングも無意味! 進塁打? バント? 盗塁? いいか、んなもんな、ホームランが打てりゃいらねぇんだよ! センターに英智がいようが、ライトにイチローがいようがホームランを打てば守備範囲も強肩も無意味!」


「言ったな!? ガチャ1つを3回!」


 リーベルト3連くじ!

 くじを開いた瞬間、円谷くんがらしくなく飛び出し、プラトーンのような大絶叫!


「いよっしゃあああ!」


 タッグトーナメントで優勝した時もあんなにはならなかった。


「サードに宮本慎也を!」


※宮本慎也 元東京ヤクルトスワローズ

 あのノムさんも全幅の信頼を置いた鉄壁のフィールディングを誇る神宮戦隊守備隊長。「自衛隊」の異名をとり、2つのポジションで通算10度ゴールデングラブ賞を受賞。2011年にはサードで失策1、守備率で世界記録を更新。また、大学・社会人を経てプロ入りした選手では史上二人目となる2000本安打を放ち、2000安打達成者の中では唯一400犠打を記録している。非力な打者とされながらも鉄壁の守備で定位置を掴み、後に打率3割も記録して打撃開眼など、中日ドラゴンズの井端弘和、弟子である読売ジャイアンツの坂本勇人ら同時期の「背番号6の遊撃手」の代表格でもある!


「そしてショートに今宮健太を!」


※今宮健太 現福岡ソフトバンクホークス

 絵に描いたような常勝最強軍団・福岡ソフトバンクホークスのセンターラインを守る若鷹。高校通算62本塁打の打撃、MAX152㎞/hの速球を投げるフィジカルエリートは、プロでは長打力こそ鳴りを潜めたものの、犠打でパ・リーグ記録を作るなどきっちり攻撃参加、高い身体能力での遊撃守備は、名手で知られた前任のホークスのショート、川崎宗則を凌ぐと評される将来のレジェンド候補であり、その華麗な守備で報道ステーションの今日の熱く盛り上がったシーンをお伝えする『熱盛(アツモリ)』の常連である!


 続いて開けたくじで円谷くんがショーシャンクの空に状態の歓喜!


「レフト福本豊!」


※福本豊 元阪急ブレーブス

 シーズン100盗塁、通算1000盗塁を記録した世界の盗塁王。あまりにも盗塁するために、クイックモーションが日本で本格的に誕生、先発ローテーション制度と並ぶ投手運営の革命をランナーとして成し遂げたレジェンドオブレジェドである! 通算2500本以上の安打、207本塁打のパンチ力と投手の癖を見抜く観察眼、「気合」と語る盗塁論、3S(スタート、スピード、スライディング)を兼ね備えた理想的1番バッター! 17年連続規定到達、全試合出場8回と、このテの俊足の外野手にありがちな大きな故障もなく、通算12度のダイヤモンドグラブ賞と、走攻守を併せ持つ歴代プロ野球最強クラスの選手である!


 現在の紅組

投手:ピッチングマシーン

捕手:羽場くん

一塁手:通常

二塁手:通常

三塁手:宮本慎也

遊撃手:今宮健太

左翼手:福本豊

中堅手:英智

右翼手:通常


 左中間と三遊間という空間が概念ごと消えた。


「あの守備だろうと6アウトまでは攻撃できるんだ……。まだライト線はがら空き! それにホームランさえあれば!」


 しかし打球は福本豊の守るレフトへ。


「右に転がしてくぞ」


「任せとけ」


 ネクストバッター星野!


「らぁ!」


 宮本慎也の守るサードへのゴロ。


「ッラァー!」


 バァキィ! 桜井の側頭部に星野が八つ当たりでホセ・メンドーサレベルのコークスクリューパンチ! カーロス・リベラが一撃で(ピー)になったヤツ! 星野は月に一度、どうしてもやりきれないことがあると桜井の側頭部を殴らずにはいられなくなってしまうらしい。二人の付き合いはもう5年目らしいが、桜井がいろいろクールなのってそれが理由で、実はクールなんじゃなくて(ピー)だからじゃないだろうか。


 その後も凡退。攻守交替! 


「9連ガチャだ!」


 ハイジさんアウトをぶん投げる! 紅組の攻撃が12アウトまでに。その結果。


白組

投手:ピッチングマシーン

捕手:羽場くん

一塁手:小笠原道大

二塁手:立浪和義

三塁手:村田修一

遊撃手:松井稼頭央

左翼手:福留孝介

中堅手:新庄剛志

右翼手:高橋由伸


 赤組12者凡退!


「ガチャ投入!」


赤組

投手:ピッチングマシーン

捕手:羽場くん

一塁手:落合博満

二塁手:小坂誠

三塁手:宮本慎也

遊撃手:今宮健太

左翼手:福本豊

中堅手:英智

右翼手:イチロー


 リアル野球盤はとんでもない投手戦の相を成す! 攻守ともにモチベーションを失い、ヒマなやつは共通キャッチャーの羽場くんを除き、SNSで池袋駅東口で爆発する声優同好会の時限バカ弾を見て冷笑する、という本当に「声優同好会にからまれない」という最低限の目的を果たすのみに至った。

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