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【それぞれの 思いがあるから さておいて】第3話 アンチマテリアルライフル選手権 その2

「第二ステージ、不動心クイズ~」


 パチパチパチとまばらな拍手。それもそうだ。男子陣は伏せ撃ちスナイプ状態なので拍手できないのだ。


「え~狙撃の道を選んだからにゃ、俺は弾も心も貫き通す。決して曲げない男の道こそ狙撃道。だって狙撃することしか知らねぇから! という訳で」


 高卒ドラフト6位ぐらいで入団して24歳ぐらいで戦力外になったけどセカンドライフのラーメン屋が繁盛した元野球選手のラーメン屋にある額縁みたいなこと言ってる。


「スナイパーには不動の心と、生きて帰った時に会いたい人が必要という訳で、美女カモーン」


 深夜番組出てくるお色気要員みたいな女の子たちがクセの強い手書きの名札を下げて男子の人数分入場。スコープの先に集まり笑顔で手を振る。あれは芸能コースの女子たちだ。


「ハートを射抜かれた! と思う女子に狙撃をどうぞ!」


 バキューン! ×5


 陣内→清楚なミナちゃん

 マスカラスマン→ハーフメガネのカナちゃん

 小林氏→Sッ気のありそうなマドカちゃん

 桜井→天真爛漫なミサキちゃん

 円谷栄治→シャイなリオちゃん


 きれいにばらけたが、ハイジさんが何か言いたげだ。そしてハイジさん、桜井、円谷栄治の彼女&婚約者いる組が、見事に自分の彼女&婚約者と似た系統を選んでいるところに言いようもない憤りを感じる。アイツらは好みの女子と私生活でくっつけたのだ。くたばれ!


「ミナちゃんは得意な物まねとかあるのか?」


「クレヨンしんちゃんです」


「チェンジ。悪いが、得意な物まねがクレヨンしんちゃんの女子は退場してくれ。だったらリーベルトのほうがマシだ」


 何様だ。しかし、芸能コースの子たちと言っても、18歳を超えても未だにこんな学内のお遊びにしか声がかからず、5人もいて顔ではマジで良崎に勝てていないのが本当に悲しい。芸能人は諦めてセカンドライフでラーメン屋やるしかないな。


「それでは女の子の指名が決まったところで、ではどうぞ」


 女の子たちがそれぞれ自分を選んだ男子の方に前進。ゴクリと生唾を飲むマスカラスマン。


「……見えねぇ」


 女の子たちは男子に近づきすぎ、銃身にまたぐ形に! 隣のスナイパーの指名女子は見えるが、自分の指名女子だけ見えない。


「……」


 緊迫した空気が流れる。ピッ! ハイジさんが上をチラ見しようとした瞬間、鋭く空気を切り裂くホイッスル!


「威嚇戦隊能面ジャーだ!」


 良崎の言う通りなのである! 威嚇戦隊能面ジャーは大学屈指の審判団! 全員が能面を被り、リーダー格の赤、サブリーダーの青など全部で5人いる。だいたいの競技のルールに明るく全てをベストに裁く!


「今のは初犯でこのラインからアウトですよっていうチュートリアルだからペナルティはなし」


 マスカラスマンが歯を食いしばる。マスカラスマンだけじゃない。見えないものを見ようとして男子全員がスコープを覗き込む! こんな近くにいるのに!

 ファサァッ。


「……?」


 スナイパーたちのスコープの前を衣服が舞う。


「あぁー暑いぃ~」


「もう服脱いじゃおう~」


 女の子たちが深夜番組のお色気要員のグラドル特有のクソ演技で次々脱衣! それぞれ水着姿に! しかしスナイパーたちには近すぎて見えない生殺し! 


「星野……てめぇ……まぁいいや。どれだけ脱がれても性的ではないという意味ではてめぇの水切りに適した石のような体型も全く見えないも同じだ」


「おい次そのネタで星野イジメたらお前殺しますからね。公式なペナルティじゃなく私刑で行きますよ」


 リーベルト先輩は、後輩星野のコンプレックスをいじられると義憤に駆られてしまう性質がある。あと、そうだな……。普段からこうやって脱ぐのが仕事みたいな人達よりも恥じらいながら雨宮さんが水着になる方が100倍興奮するな。雨宮さんの持つアレなポテンシャルは底が知れない。


「あぁんもう暑いわぁ」


「うわああああマジか!」


 珍しい、というか初か!? 桜井が激しく動揺しているぞ!


「ミサキちゃん京都弁!?」


「どうした桜井。フェチか?」


「フェチです。あああこれやばいな!」


 ミサキちゃん満面の笑み。


「もう、桜井くんかわいいわぁ」


 スコープを覗き込む桜井の頭を指でツンツン。


「クッ、お座敷遊びしてぇ……」


 ハイジさん失笑。


「安心しろ桜井。懐に入れた本妻サキちゃんのロケットペンダントを見ろ。サキちゃんに比べれば大体の女子はザコだ」


「ミサキちゃんは漢字でどう書くの?」


「未来の未に、京都御苑の桜は八分咲きやねぇの咲やん」


 急に助長したな、京都キャラ。


「フゥ……。ちょっと落ち着きました。未咲、ならまだ咲、にはなってない。美しい方の美咲だったら俺のサキちゃんを越えてるかもって思わされるところでした」


「大丈夫だ。悔しいが、お前のサキちゃんクラスは都内に100人もいないだろう」


 はぁ、とミサキちゃんが色っぽくため息をつき、手を団扇代わりにして扇ぐ。


「暑いわぁ桜井くん」


「俺の名を……呼ぶな……」


 理性vsフェチによる不随意の興奮! 桜井の蓑の中はどうなってしまってるんだ!?


「アイス食べたいわぁ」


「わたしも~」


 女の子たちが次々にアイスを要求。


「ハイ! ということで女の子たちが暑がっています! 次のラウンドではポイントと同時に女の子たちにアイスを与えることができます。主なラインナップはこちら」


・あずきバー

・チューペット

・ガリガリ君

・ホームランバー

・アイスソーダ


 なんで棒アイスばかりなんだ……。


「なお、クイズは公平を期すため『歴史』『芸能』『スポーツ』『懐かし』『グルメ』『サイエンス』『桃ネクタイ』『白ネクタイ』『マニア10』の9ジャンルから選べます」


 マニア10とは! 『内村さまぁ~ず』で採用されるシステムである! その名の通りマニアックな問題だが得点は十倍、しかし、マニア10の出題を要求し、別の人が正解した場合マニア10指名者から-10ポイントとなるギャンブルのルールである!


「桃ネクタイと白ネクタイってなんだ?」


「桃ネクタイが考えたクイズと白ネクタイが考えた偏った問題です」


「桃か白のどちらかと思考が被ってればぼろ儲けできるな。しかもマニア10と違ってリスクが少ない」


「リターンも少ないけどね。正解したヤツがジャンル選択権を獲得。誰も正解できなかった場合は、ジャンル指名ローテは陣内、マスカラス、小林、桜井、円谷くんの順。正解したら引き続きジャンル指定が可能。そういうことで最初は陣内から。OK?」


 そうだよな。新潟までの旅時のドライバーがかかっているなら、一番運転の上手いハイジさんはガンセキオープン送りは避けたい。


「OK。じゃあ『歴史』!」


 ハイジさんが歴史を指名。雨宮さんが『歴史』と書かれたドラフト風くじボックスからクイズを抜き、読み上げる。


「問題です。『戦国鍋TV 〜なんとなく歴史が学べる映像〜』の人気コーナー『うつけバーNOBU』のママであり、かつて魔王と呼ばれたが、現在はホトトギスを落としたオカマの戦国武将は?」


 バキューン! ハイジさん回答権獲得!


「織田信長!」


「正解」


 ハイジさん―1ポイント


「ウィー」


 ハイジさんメロイックサイン。


「さぁアイスを上げますか?」


「じゃあホームランバーで」


「さすが陣内! 今夜もバットが火を噴きホームラン!」


 清楚なミナちゃんが慎ましくホームランバーの皮? 包み紙を剥き、ペロペロ舐める。しかし既に溶けかけ。


「あーと陣内さん! これはすごいですよ!」


 清楚なミナちゃんを指名していない他の男子は清楚なミナちゃんがアイスをこぼすまいこぼすまいと懸命な舌使いで食べているさまをガン見!


「こぼれる、こぼれる! ペロペロだ! しゃぶったー! 奥まで! これはライフルの支柱が一本増えてしまうかもしれませんなぁ、陣内さん!」


 小林氏メッチャ楽しそう。これはエロい。それがハイジさんの頭のすぐ上で行われているのだがハイジさんは不動心のスナイパー。動揺すればカウンタースナイプを受けてしまうので観ることができない! 得点した人が一番損してる! ハイジさん、無心。


「連続回答権獲得なんで陣内ジャンルをどうぞ」


「勝負に出てみるか……。『マニア10』!」


 ハイジさん第一回選択希望ジャンル、『マニア10』! 雨宮さんがくじを引く。


「問題です。『戦国鍋TV 〜なんとなく歴史が学べる映像〜』の人気コーナー『ミュージックトゥナイト』に登場し『シズガタケの七本槍』を披露するアイドルユニット、SHICHIHON槍のカタくんとは誰でしょう?」


 バキューン! 円谷くん回答権獲得。


「七番槍の片桐且元!」


「……正解(せいかぁい)!」


 円谷くん―14ポイント

 ハイジさん―-9ポイント


「あぁーとマイナスです!」


「なんだ、カウンタースナイプか!?」


「いえ、女の子に幻滅される可能性があります」


 清楚なミナちゃんの恥じらいや慎みが豹変。氷のような表情で食べかけのアイスをハイジさんの蓑に手榴弾よろしく投げ込む。


「冷てぇってか気持ち悪ィ! マジふざけんなよ! アリがよってくんだろぉうが! ヒアリが来たらどうすんだ! おい、気持ち悪いぃ! あぁーテンション下がっちったよ……」


 ハイジさん大ダメージ!


「さぁ正解円谷くん、アイスをあげますか?」


「さっきのリストが主なラインナップってことは、他にもあるのかい?」


「あるよ」


「とびっきりのジェラートなんかがあるといいんだけど」


「そこまでお前に合わせて周りが行動すると思うなよボンボン」


 急に辛辣! 星野がハイジさんに似てきた。


「明治スーパーカップかな。スーパーカップをDカップのシャイなリオちゃんに」


「え、なんでわかったんですか?」


「うん?」


 円谷くんの婚約者、深山みちるは有志により86のDカップと推定されている。つまり、同じぐらいだろうと予想したのだろう。しかしさすがの円谷くんもそれは言えず。


「さぁ円谷くん、ジャンル選択権獲得です」


「芸能! 今度はシャイなリオちゃんにコールドストーンアイスをご馳走しよう。いや、コールドストーンアイスはボクの歌声を食べさせてあげたいから鹿児島のしろくまにしようか」


 円谷くんは最近嫌われすぎてぶっ壊れたのかヘイト溜めのスキルを上げるようになってしまった。昔はひょうきんなお兄さんだったのに今は見る影もない。


「問題です。『戦国鍋TV 〜なんとなく歴史が学べる映像〜』の人気コーナー、『戦国サポートセンター』でいつも羽柴秀吉に指名されるオペレーター竹中半兵衛を演じ、アニメ『交響詩篇エウレカセブン』では声優として……」


 バキューン! 桜井回答権獲得。


「山崎樹範」


「正解ー!」


 桜井―3ポイント


「宇治金時!」


 桜井クイ気味に宇治金時! 京都弁のミサキちゃんがはんなり宇治金時を口に運ぶ。


「ほんまに桜井くんのお陰やわぁ」


そして深夜のグラドル特有のクソ演技やクソリアクションではなく、確実に桜井を刺すために京都っぽいはんなりさと京都弁で攻め立てる。もはやそういうプレイだ。しかし桜井は見ることはできない。だが桜井に京都弁が刺さりまくっている! 見られなくてもいいのだ桜井の場合。京都弁さえあれば!!


「これサキちゃんにチクんないでほしいんだけどサキちゃんに京都弁覚えてほしい」


 桜井がここまで自分をさらけ出すのも珍しい。だが俺は嬉しいよ。また桜井との壁が一つ減り、溝が浅くなった。弱点や隠し事を共有してこそ、人と人は友に成るのだ。ああ、誰にも言わないさ。これからもよろしく、桜井玲!


「桜井がジャンル選択権を獲得です」


「グルメ」


 雨宮さんが『グルメ』ボックスから問題を抽選。


「問題です。『戦国鍋TV 〜なんとなく歴史が学べる映像〜』の人気コーナー『戦国ヤンキー 川中島学園』2話で校舎の屋上に陣取る上杉軍が一心不乱に食べていた定番アイスとは!?」


 バキューン! ハイジさん回答権獲得。


「じゃんぼもなか」


「正解ー! アイスはどうする?」


「アイスの前にどのジャンルでも『戦国鍋TV 〜なんとなく歴史が学べる映像〜』からめるのやめろ。偏ってんのが特徴の桃ネクタイと白ネクタイじゃなくても『戦国鍋TV 〜なんとなく歴史が学べる映像〜』に偏ってっから」



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