【転校生-! お前を殴らにゃ 気が済まん!】第10話 小林くんの記憶補完計画 うろ覚えヴァンゲリ その8
「お、雨宮。大丈夫か?」
「ひっ」
この日初めてマスカラスマンに合流した雨宮さんが怯えた。きな粉人間と化しているか、それともプレッシャーがきついからか。
「雨宮、調子はどうだ?」
星野がマスカラスマンとの間に割って入りクッション役に。
「星野さん。もう大丈夫です」
「そっか。ならよかった。で、一つ提案なんだけど、次0号わたしか桜井で代わろうか?」
「え」
「わたしここまでなんにもやってないし、多分次はそんなにおいしい場面じゃないからさ。『ヴァンゲリ』0号パイロット的においしい場面は、横取りにならないように雨宮に返すよ。『ヴァンゲリ』0号の再メンテのテストにもなるし」
「じゃあ、星野さん代わってもらってもいい?」
「オッケェイ」
『ヴァンゲリ』1号筐体パイロット‐良崎・リーベルト・アンナ
『ヴァンゲリ』0号筐体パイロット‐星野憂
『ヴァンゲリ』2号筐体パイロット‐マスカラスマン
星野が『ヴァンゲリ』0号筐体に搭乗。星野、確かにここまで何もせず悪い印象だけ残して忸怩たる思いはあったのだろうが、本人で言っていた「0号パイロット的においしい場面」即ち、『ヴァンゲリ』3機が初のそろい踏みというおいしい場面が意図せず星野に横取りされた。
「ピンチ! 停電に乗じて地球侵略を目指す怪獣クモ! 『ヴァンゲリ』が戦う! バルカン砲で吹っ飛ばせ! がんばれ防衛軍! 地球を守れ! さぁ、次回もみんなで見よう。そして幸か不幸か、ここはボーナスステージだ」
さっきハイジさんと良崎が密談していた通り、ここの目玉は『ヴァンゲリ』ではなく怪獣クモの特撮、操演! よって『ヴァンゲリ』×3は真っ暗な中でひたすら怪獣クモの操演をしばらく見守る。確かに半端なかった。パねぇ技術力ではあったが、食傷気味! そしてこの怪獣は原作でも最弱だったのでノーダメージで軽く撃ったら勝利。ダメージ演出がないので雨宮の代わりに再メンテ『ヴァンゲリ』0号のテストプレイヤーになった星野は、身代わりでダメージを負ってオイシくなることもなく、ただただ、初めての『ヴァンゲリ』×3を横取りしてしまった事実しか残らなかった。雨宮も星野も不憫。
「星野さん、お疲れ様」
「雨宮……」
「?」
「ゴメン……」
そしてここまで、彼女の咲ちゃんを無断借用された以外何もしていない真の何もしてないマン、桜井も沈黙。
第拾壱話
静止した謝罪と仲で
「ハァ……。もう次か」
マイクを渡されたハイジさんも何気に疲労の色が濃い。しゃべり続けてるからかな、結構な声の張り具合で。
「次々と叩きつけられ、爆破される地表! 基地が危ない! 宇宙怪獣と『ヴァンゲリ』の死闘が続く! 『ヴァンゲリ』頑張れ! 必殺『ヴァンゲリ』ナイフが光る! さぁ次回もみんなで見よう。さぁもうもめずにパイロットは入れ。雨宮と星野は乗りたい方。もめるならじゃんけんな」
無言で雨宮が『ヴァンゲリ』0号筐体へ。と同時に遠くでッドォーン! と特撮スタッフによるナパーム爆破。半端ねぇ高さの火柱が上がった。『ヴァンゲリ』×3に軽微なダメージ演出。
「おい雨宮大丈夫か!?」
「いい具合のメンテになってますよ!」
雨宮さん、初めてダメージ演出を耐えきる。
「っていうか特撮スタッフふざけんじゃありませんよー! 今のがアレでジャブでしょ?」
「ああ、ジャブだ。しかも当たらなかったジャブだ。敵さんは宇宙空間に陣取り、でっけぇ体を少しずつちぎって地球に落とし位置を調整し、最終的に全身での体当たりで基地をぶっ壊すつもりだ。どう計算してもその確率はシックスナインだ!」
ピコーン! シークレットファクター回収!
「だが奥の手はあるぜ。『ヴァンゲリ』3機を使って敵さんの着地地点を割り出し、受け止めて急所を壊して勝つぞ」
「無理ですって! 当たってないジャブであのダメージ演出は直撃したフィニッシュブローは全員終わりですよ! 演出の出力弱めなさいよ!」
「さぁ次回もみんなで見よう!」
「嫌ですよ! じゃああのでっかい銃持ってきなさいよ! 宇宙を狙撃しましょうよ『ヴァンゲリ』2号で!」
「決まりでは遺書を書くことになってるが……」
ピコーン! シークレットファクター回収!
「よぉし紙とペン持ってきなさい! ついでに弁護士もですよ! ちゃんと遺書が成立するように弁護士に見てもらわないと! 絶対に陣内さんの名前は書くって決めてたんですよ、今回に限らず以前から! 今回はヒゲの名前も書かないと!」
良崎の拒絶を黙らせるようにまた宇宙怪獣のジャブの発破。
「うわうるせ! これ受け止めるって言ってますが、『ヴァンゲリ』配置位置の根拠は?」
「金持ちの勘だ」
ピコーン! シークレットファクター回収!
「メインコンピューターが無理って言ってんのに金持ちの勘で99%の無理を覆せるつもりなんですもん! このことも遺書に書きますからね!」
「まぁ、成功したらステーキご馳走すっからさぁ」
ピコーン! シークレットファクター回収!
「こっちはいい加減大人なんですよ、疲れた体にステーキは重い! どうせステーキならいい肉食わせろバカ野郎!」
「とは言いつつもぉ、金持ちのマジ警告をするとステーキは拒否しておいた方がいい。なぜなら俺はガチ金持ちで飛騨牛のステーキを食ったことがあるからだ。アレは霜降り過ぎて脂がひどすぎて食えたもんじゃない。うちの妹なんか、肉をくわえたまま俯いたら歯の間からビシャーって脂がしたたり落ちてきたんだ。よだれじゃなくて脂がだぞ! 飛騨牛はやっぱりすき焼きだな。もう飛騨牛のすき焼きなんかうますぎてもうやべぇぞ。よく漫画とかで、金持ちのお嬢様がマックとかジャンクフード食って『庶民の食べ物もおいしくて捨てたもんじゃないですわ!』みたいな場面や美談があったり、そもそもそういう金持ちが安い飯を食って驚くっていうそういうのがメインの漫画もこのグルメ漫画戦国時代にはきっとあるんだろうが……。言わせてもらう。いいか、テメーら凡流家庭のヤツらが俺ら金持ちが贅沢して食いに行くもん食ったらうますぎてひっくり返るぞ!」
「ああいう絵に描いたような金持ちのクズもいる一方で、彼の妹は同じ家庭なのに高卒で働いて自分の力で稼いでいたんですよ……。そうやって稼いだお金で買ったビーフジャーキーはきっとあのクズが親の金で買った飛騨牛のすき焼きよりも、うまくはなくとも価値はあるでしょう。まぁ、その妹も今はニートですけど」
第拾弐話
ステーキの価値は





