【転校生-! お前を殴らにゃ 気が済まん!】第4話 小林くんの記憶補完計画 うろ覚えヴァンゲリ その2
「ん? あぁ、そう。じゃあ皆のもの! リーベルトの準備ができたぞ!」
「ちょっと待った!」
桜井、決死の“待った”!
「咲ちゃんとリーベルトさんがやりあうってことですか?」
「いや、それはない。『ヴァンゲリ』1号が出撃し次第」
そもそも『ヴァンゲリ』ってなんだよ。その略称で覚えちゃったのか小林氏。誰も使ってないその略称で。
「咲ちゃんご帰宅です。あとは別撮りした咲ちゃんデュエルフェイズで『ヴァンゲリ』1号との戦闘ミニゲームに入るが、さすがに他校の学生にいろいろやると軋轢が生まれるので、咲ちゃんの健康や精神、名誉に重大に関わることはないが……。そうだな。桜井。お前はありゃマジでいい子を彼女に持ったな。見た目もリーベルトにひけを取らないし、ノリもいいし、よく笑うし、でも品がある。一緒にいると楽しいだろ。あれならお前の高校で雨宮がザコ扱いだった理由がわかるわ。あの子は優良物件すぎる」
「俺だって自慢したかったですけど、角が立つじゃないですか。先輩よりいい彼女持つとさ」
「ハハッ、こぉいつぅ~」
「まぁ本当は陣内さんに目をつけられたらこうなると思ってたからあんまり言わないようにしてただけでもう手遅れになっちゃったんだけどさ。まぁ多少は咲ちゃんとリーベルトさんのキャットファイト見たかったかな!」
「ハハッ、こぉいつぅ~。じゃあ咲ちゃん打ち上げに呼んでもいいか?」
「別に咲ちゃんがいいって言ったらいいんじゃないですか?」
ハイジさんと桜井マジで仲いいな。桜井がこんなに気さくだとは思わなかったが、案外キレ隠しで一時的にテンション高いだけかもしれない。
「はいよー。じゃ、そういうことで。『ヴァンゲリ』1号、リフ……あ、ゲームシステムはPS2『ジョジョの奇妙な冒険 黄金の旋風』のシークレットファクター制を採用しているので、原作の再現度が高まれば高まるほど補完度が上がっていって早く帰れます。これリーベルトに言い忘れてたから後で星野が説明しておいてくれ。じゃあ『ヴァンゲリ』1号、リフトオフ!」
ガシャッ! シャー……ズッダァンッ! と効果音が入ると、オーロラビジョンの映像が咲ちゃんの市街地破壊から咲ちゃん真正面映像に。別撮りの咲ちゃんデュエルフェイズだ!
「うわぁぁぁ誰コイツ!?」
『ヴァンゲリ』1号のコクピットから至近距離の咲ちゃんと対面して良崎びっくり!
「リーベルト! それは、桜井の彼女の咲ちゃんだ。俺らみたいに辺境にでかい面積持ってるわけじゃないが、都心のなかなかのお嬢様女子大の生徒だ」
「ははははは!!」
「いいか、まずは歩くことだけ考えろ」
「えっ、操縦のレクチャー受けてるのにそこ再現するんですか? この機体を『ヴァンゲリ』と記憶している人がそのくだりを覚えているとは思えないんですけど」
「でなければ帰れ!」
「それお前のセリフじゃないでしょう!」
「もう少し頑張れよ! ラジコンみてぇなもんだろうが!」
「あぁん!? お前ラジコンで地球守れって言ってんですか!? ラジコンならわざわざ乗らなくたっていいじゃないですか! 安全な地下で操縦させなさいよ! それにスキーだって最初は転び方から教えるじゃないですか! 転び方教わってないですよ!」
「バカめ! 本来ならゲーセンじゃ誰も操作なんか教えてくれないんだぞ! ここにマスカラスマンがいたら出る前から転ぶこと考えることバカがいるかってビンタされるぞ!」
地球防衛軍=ゲーセン。
「ゲーセンでラジコンいじくって地球守るバカいないですって!」
そうこうしているうちに咲ちゃんが画面に手を伸ばし、画面が一度赤く光って大きく振動するダメージ演出!
「痛い痛い! なんですかコイツ! あぁ痛い痛いってこれ!」
「落ち着けリーベルト! 掴まれているのはお前の腕じゃない!」
「わたしの腕が捕まれてるとかそれが問題なんじゃなくて現に痛いってのが問題なんですよ! うわ痛い痛い! リアルに痛い!」
「限界か……」
「限界ですよ! そのヒゲはなんにも覚えちゃいないですよ!」
スッっと小林氏が立ちあがった。
「なんかの汁使いませんでしたっけ?」
「よぉしきた! シークレットファクター回収!」
ピコーンと効果音が鳴る。
「シークレットファクターを回収して補完度が上がるとこの音が鳴る」
「そうか。よし、リーベルトさん、汁!」
なんだ「リーベルトさん、汁!」って。バカかよ。
「確か直接肺に取り込むんですよね!?」
ピコーン! シークレットファクター回収!
「あんな風呂の残り湯みたいの飲めませんって! あと離しなさいよ、咲ちゃん!」
良崎がVRを装着したまま筐体をキック!
ピコーン!
「よしきた! 『ヴァンゲリ』1号敗北でシークレットファクター回収!」
咲ちゃんが真正面から手を伸ばし、『ヴァンゲリ』1号の顔面、即ち画面をわしづかみ! そしてその掌底から光の槍が! 轟音を立てて『ヴァンゲリ』1号の頭を貫き衝撃で筐体が揺れる!
―――
―――……ホギャア、ホギャア
「おめでとうございます。元気な女の子ですよ」
「……アンナ。この子の名前はアンナにしましょう」
「アンナ! いい名前だ!」
―――
「おお、アンナはプロレスが好きだなぁ。将来はプロレスラーか? お転婆に育つぞぉ」
「フフフ、元気なのはいいけど、お転婆すぎるのも困るわね」
「なぁに、元気すぎて悪いことなんかないさ。元気があれば何でもできるッ! ってね!」
「ウフフ、この親にしてこの子アリ、ね」
―――
「……」
「アンナ……ごはん、ここに置いておくわね……。ねぇ、アンナ。お母さん相談に乗るから……」
「……」
「お父さんも心配してるし、みんなで一緒にプロレス観ましょう? 浪人なんて誰でもしてるから、気にしないで……」
―
「ハハハ! おぅーいリーベルト。旅に出ようや」「バカ野郎!」「すごいわアンナちゃん!」「ボク、エ゛ッちゃんだよ」「エッちゃんの嫌いなものはミミズと悪とリーベルトだ」「イェーイ、リーベルトー!」
……そっか、わたし、笑えるんだ……。
「うわっ、びっくりした!」
良崎の走馬燈が見えるぐらい「良崎死んだ」と思ったがさすがに生きてた。
ピコーン! とシークレットファクター回収の直後のッドーン! で咲ちゃん爆発!
「終了~!」
第弐話
知らない、アニメ
「いやこれ全然覚えてなかったなぁ~」
「これ小林さん本当に観たんですか? 本当に『ヴァンゲリ』でしたか?」
「観たことは確かだよ」
「旧劇ですか、新劇ですか?」
「……?」
「それによって誰が死ぬとか誰が痛いと変わってくるんですけど、っていうかアレはマジで痛かったのでどうにかしてください」
威嚇戦隊能面ジャーの威嚇で詳細を聞き出せなかった『ヴァンゲリ』1号パイロットのリーベルトさん。しかし既に次に備えてオレンジのカラーリングの別の『ヴァンゲリ』筐体が。その奥には赤と黒の『ヴァンゲリ』が2体あるのでつまりその辺までは小林氏も何となく覚えてるんだろう。白いのがなくてよかったが、そこらはまだシークレットなのかもしれない。白いのが出るとやばいぞ。
「次は覚えてますよ。第4使徒シャムシエル! 第4使徒シャムシエルですよ」
「ああ、第4使徒シャムシエルな!」
「第4使徒シャムシエル!」
ロボと怪獣呼ばわりからの第4使徒シャムシエルって、もうこれ実は全部覚えてるけどバカのフリしてる嫌がらせだろ。
ピコーン! シークレットファクター回収!
「お、こばやっちゃん第4使徒シャムシエル正解~」
「ハハハ! 第4使徒シャムシエル!」
楽しそうなヒゲとノッポのトップ2。
「あ、言い忘れてた。これ鳴ったら再現度が上がって早く帰れるんだってよ」
星野から良崎へ。
「そうなんですか? オラァッ!」
からの流れるような右ストレートが小林氏へ!
「すまんなぁヒゲ。ワシはお前を殴らなアカン。殴っとかにゃ気が済まへんのや」
「悪いね。こないだの騒ぎでコイツの妹、ケガしちゃってさ!」
ピコーン! シークレットファクター回収!
「いぇーい」
いい連携でシークレットファクターを回収した良崎と星野がハイタッチ。ハイジさんと桜井、良崎と星野はマンツーマンな先輩後輩のいい形が作れてるのに、一番まともそうなマスカラスマンに面倒見られてる一番まともそうな雨宮さんのところが一番まともじゃない関係。
「こんなのありましたっけ?」
「鳴ったってことはあったんだよ」
「記憶にないなぁ……」
覚えがないのに殴られた小林氏、痛む頬をさする。そしてこれからどうするんだ? これだと小林氏がこれから『ヴァンゲリ』1号に乗る流れだぞ。
「非常招集、先、行くから」
何かを思い出した雨宮さん、ビシィッ! とハイジさんに言ってみる。
ピコーン! シークレットファクター回収!
「オッケ~イ、じゃあ雨宮が『ヴァンゲリ』0号パイロットな」
墓穴! これはメガネを割られる流れ!





