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【転校生-! お前を殴らにゃ 気が済まん!】第3話 小林くんの記憶補完計画 うろ覚えヴァンゲリ その1

 エレベーターを降りたら地球防衛軍基地の格納庫みたいなところにいた。俺たち全員。天井の照明器具を見る限り文学部地下闘技場にセットが組んである様子。このメンバーで呼び出されたからハイジさん関連だろうな、とは思っていたが俺たち全員文学部地下闘技場の遠くにいたのに……。


「よく来たな」


 格納庫の上の高いところにハイジさんと小林氏が立っているが、立ち位置が逆だ。いつもはハイジさんメイン、小林氏がサブなのだが今日は小林氏メイン。


「今日からお前たちにやってもらうのは、『小林くんの記憶補完計画 うろ覚えヴァンゲリ』だ。まぁ簡単に言うと小林くんが最近見たアニメの内容をどれくらい覚えているかをうろ覚えで再現してもらうっていうアレだからお前らが偶然このアニメを観てると滞りなく終わる可能性があるが、直接答えを言ったりすると威嚇戦隊能面ジャーにより厳しく罰せられる」


「小林さんが?」


 ここはやはり、弁が立つ良崎が切り込む形。


「お前らがだよ」


「そもそも今あの人、今日から、って言いましたから、合宿になって今日中に終わらない可能性すらありますもんね」


「そういう訳で油断しているお前らが乗ったエレベーターに特殊なガスを流して眠ってもらってる間に運び込ませてもらったが」


「それニュースで観ましたよ!! ×××の王子が空港で×××されたやつじゃないですか!」


「だけど運ぶ、とかそういう身体に触れる作業は女子の分は女性工作員にやってもらったので安心してくれ。そういう訳でお前らにはこの黒メガネのヒゲのシナリオに運命を仕組まれてもらう! では、スタート!」


第壱話

ん、襲来


 ガタッと闘技場全体が揺れ、少し遅れてドーン! と爆音。遠くの音なので少し遅れてきますよ、というディティールか。すげぇなこのアトラクション。道理で我が大学の就職率がいいわけだ。


「えー、状況を説明すると、今、怪獣が来てるのでロボに乗って倒しに行ってくださいという状況です」


「怪獣とかロボって言っちゃうレベルで覚えてないならその人この先何も覚えてないですよ」


 小林氏がメガネをグラサンにかけなおし咳払い。


「ヴァンゲリに乗るなら早くしろ。でなければ、帰れ!」


 マジ演技モードの小林氏はドスの効いたいい声。


「呼んどいてそれぇ!? 帰っていいなら帰りますよ!?」


「説明を受けろ」


「便利なセリフと態度の横暴さだけは覚えてるんですねぇ……。他のことは何にも覚えてないのに。道理で卒業できないわけですよ」


「陣内、星野を呼べ」


 小林氏がハイジさんを顎で使ったぞ!


「あぁ?」


「予備が使えなくなった」


「使えるか? しょっぱな星野は危険じゃねぇか? 俺としてもまずはリーベルトで様子を見たいところだが」


「構わん。死ぬわけではない」


「……そうか。威嚇戦隊能面ジャー! 星野を捕らえろ」


 ハイジさんの合図でオブジェクトの陰からスーツに能面がおなじみの凶悪執行部隊、威嚇戦隊能面ジャーが出現! 映画泥棒の様なスムーズで美しいモーションで星野に迫る。


「おぅい星野。お前の先輩はフヌケだなぁ。残念ながらリーベルトは自分が怖い目や痛い目を見るくらいならお前を差し出すようだ。じゃあ星野。いいか、あのだっせぇ服を着てお前には怪獣と戦ってもらうがお前のその貧相な胸ならさほど性的にも映らないし、お前の先輩は胸の内が貧相で優しさとかないみたいだからお前が代わりに行け」


「え……あれ着るの?」


 星野マジ引き。


「わたしはスイカに水あげたいんだけど」


「そういう細かい部分をヒゲは覚えてないんじゃないかな」


「……そっか。まぁ確かにそうだよね。わたしなら他と比べてさほど性的に映らない」


 逃げちゃダメだッ!


「星野、お前は勉強でもしていなさい。わたしがやりましょう。わたしはロボ1号のパイロット、リーベルトです!」


 可愛い後輩・星野のコンプレックスをいじられると義憤に駆られてしまうのが先輩リーベルト。


「ただし、この時点であのピチピチは着ていなかったはずなのでここではあのピチピチを着たくはないです。その条件で出ましょう」


 リーベルト、出陣!

 威嚇戦隊能面ジャーに促され、良崎はゲーセンにある体感型のゲームみたいなヤツに乗せられ、VRを装着。大学首脳陣機材担当ユダからロボ1号筐体の動作説明を受けている。


「ハイ、ということでリーベルトがロボ1号で出陣するぞ。地上の映像はこちら!」


 ドドン! とオーロラビジョンが点灯! 黒Tシャツでジャミラ状態になった女性がまったくの無表情で市街地(模型)を破壊している。ものすごい小幅で歩き、時折腕を振り上げてはビルにチョップ! そして爆炎でうっすら画面が見づらいくらいの砲撃を食らいまくってる。それを観て星野が立っていられないほどの大爆笑!


「あれ桜井の彼女じゃん!」


 マジ?


「下の名前が(サキ)だからかな」


 桜井が冷静に分析。

 何番目かの使徒サキなんとか=咲ちゃん! 雨宮さんはなんかヒヤヒヤしている。高校の同級生があのざまは確かに不安になるな。


「アレは本当に撃ってる訳じゃないですよね? 合成ですよね?」


「砲撃は合成だが市街地セットは咲ちゃんがマジで今、別スタジオでぶっ壊してる最中だ」


「ならよかった」


 彼女が砲撃を食らってるわけではないと知って桜井安堵。良崎はまだロボ1号の動作説明の最中だが、そうしている間も咲ちゃんの破壊は止まない。


「いやぁでも咲ちゃんまで引っ張り出されると次は親か?」


 親も引っ張り出した前科があるからな、ハイジさんは。桜井家は桜井がハイジさんに気に入られたせいで安らげなくなってしまった。


「チッ、リーベルト遅ぇな。このペースだと次の回の分のセットも咲ちゃんぶっ壊しそうな気配なんだけど」


「咲ちゃんをキャスティングしたのは陣内?」


 ようやく笑いが収まってきたのか星野が尋ねる。


「んあ、俺……じゃないぞ。運命にそう仕組まれてたから。小林くんの死海文書では、最初に出てくるのは咲ちゃん、ってなってたから咲ちゃんが出てきたわけだよ。ちなみに資料映像として『ヴァンゲリ』を観てもらったが、ピンとこないようだったのであれは別で観せた映像を参考に本人はキングジョーのつもりでやってるそうだ」


☆『ヴァンゲリ』ディティール その1

最初の怪獣役咲ちゃんはキングジョーをモデルに暴れている。


「その咲ちゃん呼ばわりはちょっとやめてほしいかな」


 桜井、彼女イジりが少し嫌なご様子。


「せめて名字で」


「そうか。ちなみに咲ちゃんはアレは素面(シラフ)でやってます」


☆『ヴァンゲリ』ディティール その2

キングジョーをモデルに暴れている最初の怪獣役咲ちゃんは素面(シラフ)で町の模型を壊して回っている。


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