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【転校生-! お前を殴らにゃ 気が済まん!】第2話 雨宮さんを諦めず、最後まで見捨てずにやろう その2

 急遽勃発! 雨宮さん進路指導作戦会議!


「円谷くんから見て雨宮はどうだ? どうだっつってもお前はたいして知らねぇだろうが……」


「メガネの子だろう? あの子とは学祭の時に少し話したことがあるよ。彼女は自分に武器がないこと、武器があっても自分で売り出すハートの強さがないことを悩んでいる様子だったかな」


「あ、ふざけないんだ」


「一人グレかかってるんだろう? ボクだってもうアラサーなんだよ。来年には一国一城の主だ。しっかりしてないといけないんだから」


「あ、それ今相談していいかな?」


「ん?」


「やっぱ親と同居ってのは嫌がられるよな」


「それはこっちで斟酌しなきゃダメだよ。特にうちの両親はクセが強いし。親に一緒に暮らせって言われてないなら新居は自分たちで構えるべきだ。新居を用意できるぐらいの夫としての甲斐性ってもんを示さないと自分が情けなくなるからね」


 マジメかよ。っていうか俺は知ってるから。円谷くんは本当はマジメ。マジメだが逆境を覆すべく無理に努力しすぎてぶっ壊れた。マジメな自分の性格に壊されたという点では雨宮さん、マスカラスマンと同じだ。むしろマジメな性格なのにぶっ壊れずに人生を楽しめてるのは水原さんくらいのもんだ。


「栞菜ちゃんの場合は」


「?」


「彼女の下の名前は栞菜ちゃんだったろう?」


「素で忘れてた」


「承認欲求が全く満たされていない。承認欲求って言葉を使うと最近では構ってちゃんや目立ちたいだけの問題児と思われがちだが人間として何も問題のない気持ちだ。キミたちの基準で何かが足りなくても、栞菜ちゃんが真摯に向き合っている限り誰かがねぎらいの言葉をかけてあげなきゃいけない。もう少し頑張れる、もっとやれる子だとポテンシャルを評価していても、それを引き出すための手段がハッパをかけるだけでは成長もできないよ。よく頑張ったね、このステージはもうクリアだから次はもっとレベルの高いことをやってみようと、アメとムチを使うことも大切だ」


 おいおいマジメだな!


「この中で誰かが栞菜ちゃんを褒めたことが一度でもあったかい?」


 全員悲痛な顔で沈黙。この説教は良崎と星野にも聞かせるべきだった。


「そういうことは今まで全部水原がやってたな。ああ。ああクソッ……水原がいなきゃ俺たちは後輩一人のSOSすら気づかず救えないか……」


 責任を感じ始めてしまった。


「でも今日ボクは演劇サークルの体制の問題の改善に来た訳じゃないしどうせ部外者だ。その問題は後々どうにかしよう。ボクにできることがあれば後日声をかけてくれ。直近の課題は栞菜ちゃんの奪還だ」


「ああ、そうだな。どうやって取り戻そうか」


「演劇サークルの流儀でやったらどうだい?」


「俺たちの流儀か……」


 バァン! とドアが勢いよく開かれて息を切らせた小林氏が入室。


「話は……リーベルトさんから、ハァ、聞きました! フゥー……。演劇サークルの流儀……演劇サークルの最大の武器! 彼女がいますよ。演劇サークル史上最高の育成成功、リーベルトさんが!」






「よし。射貫け!」


 パシュン! と鋭い音と同時にヒッピーサークルの焚火が特殊スライム弾を用いた狙撃で強制沈火! 突然の暗闇に監視にあたっていた良崎と星野も目を白黒させている。その二人にスポットライトを当てる。


「え?」


「は?」


 演劇サークルお抱えの特殊なスキルを持った方々の高速設置により良崎と星野の前には机とコップと牛乳が。そしてまだ状況を理解できない二人を挟むように、牛乳の入ったグラスを持ったマスカラスマン、ハイジさん、桜井が照明の範囲に入り、二人を促すようにコップの牛乳を口に含む。そしてならう良崎と星野。準備が整ったところで少し離れた位置で円谷栄治がビカッとスポットにライトに照らされる。ツカツカと靴音をたてて芝居がかった仕草でもうなにがなんだかわからなくなってるヒッピーサークルの周りを歩き、そのうちのパニック映画で木陰にいちゃつきに行き最初に殺されるタイプのヒッピーからギターを奪い歩きながらチューニング。そして牛乳スタンバイOKの演劇サークルの前に立つ。


「えー、先日婚約しまして、この先一生を共にする彼女のためにどうしても歌いたい歌があります。まぁ彼女は今この場にはいないんですが、聴く相手が誰でもいいくらい歌いたい。歌わせてください。聴いてください」


 ギターをジャラーン。


「Slip inside the eye of your mind……」


 円谷くんの歌いだしと同時にガブハァと良崎が牛乳を噴射。


「ちょっと何が起きてるかはわかんないけどコイツクズですね! あんだけ言っておいてコピーはありえない! 自分の言葉で勝負をしろ、タヌキめ! それでもせめて伝わる日本語で歌いなさいよ!」


 良崎のキレっぷりはなんかニュートラルって感じだな。合わせたバッティングで置きにいってる感じがある。最悪でもファールにはできる感じか。


「確かに愛を語っておいてコピーはクズだな」


「OASISって、洋楽語りたがりのにわか洋楽ファンのガキが聞くやつだろ?」


「浅い愛だな」


 ヒッピーサークルにも円谷ショックが伝播していく。ザワついてきている。ヒッピーのザワつきと罵倒にハイジさんと星野ももう一分一秒の状態に! しかし円谷くん、なんと完奏! まさか完奏できるとは思っていなかったのか円谷くんも戸惑いの間。


「それでは次の曲に行こう」


 懐からハーモニカを取り出してファヒファヒ鳴らしてからファーファファファーファーと長らく鳴らし、足をタンタンしてリズムを取ってからギターをジャァーン!


「龍在大地 聚満正気 驚醒東方醉夢」


 バフバフバハァーン! とハイジさん、星野、桜井が陥落。あの歌はジャッキー・チェン主演の映画『プロジェクトA』の主題歌『東方的威風』だ!


「不懼強敵ー!」


 ビブラートの効いた素晴らしいシャウトにマスカラスマンも陥落。


「ボクにできることはここまでだ」


 ギターを地面に置き、タバコに火をつけ哀愁漂う姿に。


「帰っちゃうのか?」


 ハイジさん。


「ああ。ここからはキミたちしかどうにもできない。じゃあ、また来るよ、栞菜ちゃん」


 円谷くん、そんなに悪い奴じゃないんだけどな。なまじ器用なばかりに損な役回りの芸人ばかりやらされる。そして去り際に雨宮さんを一瞥してニコッ。

 こんなんで大丈夫か? でも俺たち流だしやれることはやったな! という自負を持っていたら雨宮さんは後日無事に帰ってきた。俺たちに改める機会をくれたんだな、雨宮さんは。


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