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【転校生-! お前を殴らにゃ 気が済まん!】第1話 雨宮さんを諦めず、最後まで見捨てずにやろう その1

「こんちはー」


「うぃー。おい星野、コイツどうなってんの。コイツ『ドラゴンボールZ』強すぎるだろ」


 ハイジさん、ここまでですでに桜井の使うセルに5連敗。


「それは置いといて」


「置いとくのかァ」


「雨宮がちょっと様子がおかしんだよね」


「そうなのか?」


「免許の試験落ちちゃったらしくてね」


「あぁ、それは重要だ。このサークル免許ほぼ必須だから」


「落ちちゃってね。変なサークルに出入りしてるみたいなんだよ」


「俺ら以上のか?」


「ヒッピーサークル」


「……マジかぁ」


 ハイジさんと桜井は両者立ち上がり、ムムム顔で腕組みしまだ玄関から上がっていない星野に詰問開始。


「今まだヒッピーサークルのところにいるんか?」


「多分……」


「桜井、お前の意見を聞こう」


 桜井ため息。


「雨宮さんは一度ぶっ壊れたからなー。今更変なことしだしてもおかしくない感じはある」


「なんかあったのか?」


「陣内さん今それ聞く?」


「ちょっと聞きたい」


「俺と雨宮さんは幼稚園から同級生なんだけど、雨宮さんはずっと優等生でそもそも俺が第二希望でこの大学来てんのに雨宮さんはここを一番下の滑り止め中の滑り止めにしてたのに全落ちでいつまでも経っても運の悪さで桜井と同等の学力って悩んでるだろうし」


「マジか」


「中学までは女子なら雨宮一択みたいにモテモテチヤホヤされて学力も優秀で剣道も上手くて、でも高校入ったら見た目は他校から二枚看板が来たせいで事実上圏外3位扱い、学力はトップ争いをしてたのに剣道部の他の部員が不祥事起こして活動休止になってポケモンにはまって以来それなりのそれなりになった」


「もしかしてお前らの高校って制服水色だった?」


「普通の紺色ですよ。なんでですか」


「いや、そういうイタいヤツらがイタい青春送ってるようなイタい高校はイタいぐらいに明るい水色の制服着てるじゃんマンガとかだと」


「紺ですよ。まぁ、剣道部休止までだったら絶対に道を踏み外すことはなかったでしょうけどアレでタガが外れましたね」


「真面目な性格とハイスペックと不運でぶっ壊れたか……。マスカラスマンタイプだな」


 ウムとマスカラスマンも頷く。


「道理でシンパシーを感じるわけだ」


「マスカラスマンのそういう無駄な共感と過保護が雨宮のぶっ壊れに拍車をかけたわけだから責任を感じないでもないが……。とりあえず様子を見に行こう。どっちみち一度は引き取った以上、俺たち先輩はヤツをぶっ壊したまま親元に返すなんてことはしてはならない。たとえ人生の内の18歳から22歳の間の4年間を通過されるだけのサークルであっても先輩という立場上雨宮の人生、そしてこの後の責任を持てるようにする義務がある。ヒッピーサークルはマズいな。たとえ演劇サークルが雨宮を放出することになっても雨宮の現在の所属が演劇サークルであるうちは一度演劇サークルで話を聞いて一緒に解決できるか、できないかの検討、一緒にはやれないのならやれないという意思を聞いてそこらを俺らの責任としよう」


「ああ」


「それじゃあ星野。案内してくれ」



【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】

【帰ってきたうぉくのふぉそみつ】





「……ありゃ思ってた以上に重症だったな」


「アイデンティティを見失ってましたね。いや、そもそも雨宮さんのアイデンティティを俺たちが決めつけることが間違ってたのか」


「桜井、お前あれどうだよ。幼稚園からの幼馴染だろ」


「みんなで焚火囲ってギターはダメですね。見るに堪えないんでどうにかしましょう」


「会議だな。リーベルト、星野両名は雨宮の監視の強化。過ちに手を出しそうだったら殴ってでも止めろ。決定的な何かを今はまだ何もさせるな。とりあえずお前ら二人が見てるってことでプレッシャーをかけて行動力を削げ。なんかあったら俺か鬼畜お姉さんか権藤教授に連絡な。リーベルトはこばやっちゃんどっかで見かけたらここ来るように伝達。桜井、ボード」


 ドン。と桜井が棚から作戦板を持ってくる。


「フゥー……どっちにしろそろそろ方向性を決めないと一番つらいのは雨宮だってわかってたんだ。この機にどうにかしよう。今の雨宮はこうだな」


・美人

・メガネ

・成績と釣り合わない要領の悪さ

・太ももはエロい

・胸もエロい

・がんばろうとする気持ちはわかる

・マスカラスマンの過保護が重荷

・円谷栄治ファン


「……気の毒すぎて言葉も出ねぇな。とりあえずマスカラスマンは口を出すな。俺と桜井で詰めていこう」


 本人を目の前にして罵倒するよりもよっぽど不憫な言葉が、その場にいないのに憐れまれるこの言葉だ。


「エロいキャラで行きますか」


「それお前的にどうなの?」


「そりゃ嫌ですよ、俺はまだ乳歯が生えてる時の雨宮さんの顔だって覚えてるんですから」


「それに下手に優等生でメガネなのにエロさをチラつかすとそれはエロではなくてスケベの趣になる。でも今どうにかしないとヒッピーどもにハメハメされちゃうかもしれないぜ」


「気持ちわりぃな」


「というかどういうキャラで行くかって話じゃねぇんだよ。雨宮がキャラとか気にせずに生きていくにはどうするか、いらねぇプレッシャーを感じずにもう少し図太く生きていくにはどうするかって考えてやりたいんだよ。最悪、本人が望むならそういうプレッシャーと同時に演劇サークルをリリースさせることも視野に入れて」


「もしかしたらヒッピーになろうとしてるのもヒッピーをキャラ付けにして戻ってくるつもりでやってるのかもしれないですね」


「ヒッピーで帰ってくるぐらいなら今のまま帰ってきてほしいんだがな。とりあえず、今、少し不安定なのはわかってるからそこもケアするってことで今のままで帰ってきてほしい。そういう訳であの男を呼んだ。この作戦板に書いてある男だ」


 まさか……。


「それでは入ってもらおう。……“お前のルックスマジヤバい。髪の毛サラサラお目目パッチリ、リアルプリンスモテモテゴッド、甘いイケメンボイスが響けば女が紅潮、ゲイが発情、世界の果てでもマジモテる。全年代全地域対応型万能イケメン。笑顔を見せれば女性からは新婚生活に黄色信号が灯るくらいの黄色い歓声”」


 まさか……!


「“ところ構わず媚び媚びへつらう八方美人のインチキコウモリクズ野郎、スズムシの声を持ったウジ虫の性根のヘラヘラコメツキムシ、チャラチャラチャラペラ薄らペラ、おべっか使いの恩着せがましいゲスごんぎつね。お前の母ちゃんインチキ霊感商法と蔑まれたのは今は昔、今や母親父親そして自身も新妻も、家族ぐるみでインチキ霊感商法、せっかく身についた超能力は対策容易で既にみんなが攻略済みのゴミクズ産業廃棄能力、もうみんな気づいてますよ、お前が弱いことぐらい。カモりカモられ超能力者界の見た目と名前だけは立派なクソザコトノサマバッタ、イケメン金持ちお家柄、三つ揃えば少女漫画でも嫌われる男の三拍子。騙されてないヤツはみんなお前がマジで嫌い。知れば知るほどお前が嫌い、杉並区の恥、ヘイト界の王子様、嫌われ王国人間国宝、みてくれのいい化けの皮でツギハギした風船を毒ガスで膨らませた薄っぺらの張りぼてカス野郎”円谷栄治さんです」


 極限まで悪いテイストにした総合格闘技風のアオリと共に円谷栄治が入室。最悪円谷くんはそれでいいかもしれんが俺たちは彼の家族も嫁ぐ人も知ってるんだぞ。家族が不憫だ。


「やぁ。円谷栄治だ」


 自分の名前を言うだけであいさつになる男、円谷栄治!


「婚約おめでとう」


「フフ、これが噂の婚約ミサンガさ」


「桜井にお前のキャラをわかってもらうために少し雑談をしたいんだがプロポーズの言葉を教えてもらえねぇか?」


「円谷栄治の伝記に、妻として登場してくれないか? だ」


「アハハ。……? マジなの?」


「本当は普通に結婚してください、って言ったよ。飾らない言葉ほどネイキッドに心が伝わるからね」


「おかしいな、さすがにここまで変じゃなかったよな? 円谷くんは。桜井、ここまでヤバくはなかったんだよ、この前までは」


「ちょっと今日は飛ばしすぎたかな」


「なぁ、おい。ここにいる全員はな、円谷くん、お前を見くびらないし買いかぶりもしない。それに言うほどお前のことが嫌いなわけでもない。ビクビクするな。俺の言ってることがわかるな?」


「ありがとう。自然体になろう」


「ああ。ここでは辛いことは忘れてゆっくりしてけ」

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