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【ごーしちご ごーしちごーごー このブタ野郎!】第4話 24時テレビ その3

「……」


 さっきまでマスカラスマンが座っていたところには黄色い頭巾の簡易エッちゃんが。先の牛乳対決で勝利したマスカラスマンは、確かにエッちゃんを迎えに行くと言うその栄誉を授かった。しかし校内のどこかではぐれてしまい、エッちゃんだけがこの場に駆け付けることとなった。マスカラスマンはこの寒くて暗くて怖い大学のどこかで震えているだろう。俺たちも震えている。寒い。ちなみにエッちゃんがフルエッちゃんじゃなく簡易なのは、中にいる何かがまだ体調に不安を残すためすぐにトイレに行ったり嘔吐したりできるようにするためだ。


「本当はな、本当はだよ。鬼畜お姉さんが来る予定だった」


 寒さに震えながらハイジさんがポツポツと懺悔を始める。


「リーベルトがシェフの恰好をしてるのもそのせいだ。シェフリーベルトさん冬のお料理リベンジっていうのをやる予定だったんだよ。やっぱね、新旧学園アイドルの先輩の方が後輩に料理を教えていくってのは画として映える。学園アイドルのバトンが受け渡される意味合いでもいい映像が取れるはずだった。なのに……」


「それ、鬼畜お姉さん本当に来るって言ってたんですか?」


「行けたら行くって……」


「あー……来ないヤツですね」


 スマホをいじっていたエッちゃんが何かに気付いた。


「これ鬼畜お姉さんじゃないのか?」


 “ナゼ三重だけ!? 全国で唯一パチンコがオールナイト営業!”

 “大晦日だけ三重県ではオールナイトでパチンコが楽しめる!”

 “新年一発目の運試しに他県からこの日のためにやってくる人も”

 “中には40時間打ち続ける人も”


「あ」


「あぁ」


 ネットの記事とそのオールナイトパチンコの様子がSNSで流れている。そして満面の笑みでラムちゃんコスプレをしている鬼畜お姉さんがドル箱をかなり高く積み上げており、記念撮影に応じている。

 “パチサーの姫発見!”

 “ラムちゃんが電撃で台におかしな影響を与えている”

 “ラムちゃんvsラムちゃん”


「そうですね……」


 俺たち<パチンコ


「きっとスゲェ勝っちゃったんだよ。負けてたらきっと来てくれたよ」


「お金かかってますもんね。勝ってる台からは、なかなか離れられないってお店に来るお客さんも言ってました。あ、LINEで確認取れました。間違いなく鬼畜お姉さんです」


 水原さんのLINE画面に「三重です☆」とかなりテンション高めで踊っている。


 新年一発目のパチで勝ちまくっている。そりゃあ新年一発目の運試しであれだけ勝ったら後輩との苦行なんてどうでもよくなっちゃうだろう。それにラムちゃんコスでオールナイトパチに挑んでるくらいだからあんまり来る気もなかったのだろう。みんなわかってるけど言わない。そういうことを最近俺たちは覚えた。言わない。敢えてね。


「と、いうことで救援部隊は来ない」


「はい……。あ、あけましておめでとうございます……」


「おぅ……」


 そういえば新年でした。本当に今までで一番辛い年越し。


「方針を決めよう。無理にテンションを上げるか、それとも辛い辛いと思ったまま辛いまま朝まで過ごすか」


 一つの文に三回も辛いって含まれた。


「頑張っちゃうぅ~? ヒャッハー!」


「さすがにそこまでは無理ですね」


「お前本当に殺すぞ」


「じゃあ年越しそば打ちましょうか。鬼畜お姉さんがいなくても水原さんもいるしそれくらいなら出来るでしょう」


 水原さんは料理上手な喫茶店の娘。そして良崎もやっとやる気を出したか。


「そば粉とかはあるんですよね」


「ある」


「じゃあ水原さん。頑張りましょう」


 良崎が意気込んで袖捲りをするが寒かったのかすぐ戻す。


「おそばならエッちゃんの胃腸にも優しいでしょうし、いいアイディアね!」


 水原さんも頑張ってテンション上げる。女子二人が粉と水をコネコネし始めたが残された男子は特にやることがない。


「なんもやることねぇな。誰かなんかおすすめの××××でも知らねぇか」


 フヘヘヘとハイジさんがベンチに横たわりダメなことを言う。水原さんというものがいながら。


「洋物でいいんなら―――――っていうのがいましてね」


「こばやっちゃんそれガチのヤツじゃんよぉ。それに知りたくもなかったよぉ、お前の性癖をよぉ」


「金髪か?」


「食いついてんじゃねぇよ! お前はマスコットだろうが!」


 ハイジさんがエッちゃんの延髄に蹴り一閃。


「海外の××はスポーティじゃないといけないらしいな」


「そうなの?」


「ああ。犯罪を想起させる内容になるといけないから必ずスポーティなモノになるらしい」


「ああ、道……いや、俺は見てねぇからな?」


 そばをこねる水原さんの背中を一度チラっと見るハイジさん。冗談とは言え言いだしっぺになってしまったので罪悪感はちょっとあるようだ。


「道理で洋物は楽しげにやってる訳だ」


 小林氏! そういうの見てること確定!


「あ、陣内さん。大切なこと忘れてました」


 ボーイズトークを聞きかねたのか水原さんが流れを断ち切る。


「おそばの生地は出来ましたがお鍋がありません」


「……マジ?」


「マジです」


「六人もいながらここに至るまで誰も気づかなかったかぁ……」


 六人寄っても文殊の知恵に至らず。


「しょうがない、探しに行きましょう。マスカラスマンも学校のどこかでまだ怯えてるはず。怖くておもらししちゃってるかもしれません」


 良崎が強引にストーリーを作る。良崎なりのやる気だ。


「いや、マスカラスマンは勇敢で賢い男だから役立つものを探しているはずだ」


「お前酒飲んでんじゃないですよ! イメージ悪いでしょう! お前はマスコットじゃないですか!」


 牛乳でズタボロになっている胃腸にお酒を流し込むエッちゃんに良崎がローキック。とりあえずいつものスタートの流れか。


「うしっ」


 ハイジさんも膝を叩いて腰を上げ、体を伸ばしてストレッチ。


「じゃあ行くか、大学探検」


【自己批判】

ネタはある、と豪語して書き始めた12月編(2週目)だったがこれを小保方氏のスタップ細胞と同じものとみるかフェルマーの最終定理やサグラダファミリアと同じものとみるかはあなた次第だ。

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