【ロス・インゴ ベ~ルナブレス デ! ハポン!】第13話 クイズ! 賭博発見! その10
パンパンッ! とマスカラスマンが手をたたいた。
「作戦会議!」
「ええそうしましょう。とりあえず消す選択肢は『円谷栄治』ですかね」
「いや、『円谷栄治』は残そう。絶対に選ばれない」
「だから消そうって言ってるんですよ」
「バカめ。『円谷栄治』を残しておけば4択から実質3択になる」
「じゃあ『Siri』『最近流行りの子役』『陣内一葉』の3択の中で誰かが枠を買って書き直して勝負ってことですね。しかし、ここは先輩ぶる訳じゃあないんですが2年トリオ。お前たち深山みちると面識ないでしょう?」
リーベルトさん先輩面。
「裏学祭とタッグトーナメントは観たけど」
「ああ、俺が深山みちるの顔面にきれいに膝をくれてやったときな!」
間違ったことは言ってない!
「枠購入はわたしとザコ仮面でやりましょう」
「ああ、そうなんだが、一つ相談したいリーベルト」
「なんです?」
「あの『Siri』の選択肢の中身、多分バルカンだ」
マスカラスマンの言うバルカンとはエル・バルカンのことである。エル・バルカンはマスカラスマンと共にメキシコ流プロレスサークルを立ち上げたマスカラスマンのタッグパートナー、190㎝130㎏の巨体と俊敏性を併せ持つ優れた学生プロレスラーだ。
「バルカンが選択肢の中身として用意されているということは、おそらく深山みちるに選ばれた選択肢は技を受ける、ということになっているのだろう」
「考えすぎじゃないですか?」
「バカめ」
「ちょっと待ってください。お前相槌感覚でわたしにバカめって言ってませんか?」
「故意ではない。その問題は後回しにしよう」
「あとでしっかり話しましょう」
「この趣味の悪いクイズのことだ。おそらくあの選択肢の中身は全員俺たちが知っている人間だろう。それと枠購入。つまり、俺たちが用意した選択肢が選ばれた場合、俺たちの身内が俺たちのせいで深山みちるの技を受けることになる」
「あぁ、ああ、ああー‼ それやりそうですね!」
エル・バルカンまでも匿名の受難の被り物になってしまったか‼ メキシコ流プロレスサークルはやられ芸人の宝庫か‼
「『Siri』以外を買おう。そして絶対に『Siri』が選ばれないほどムカつく選択肢を用意してバルカンを助けるんだ!」
「……プロレスラー的には深山みちるの技の受け身を取れるなんて最高の練習かつデモンストレーションなんでしょうけどね……」
「クッ」
「それか『Siri』を買って絶対に選ばれない選択肢を書けばバルカンは助かりますよね。500円はなくなりますけど」
バカに正論吐かれた。
「これは俺の私情だ。俺が枠を買い取ろう」
「なにかいいムカつきがあるんですね?」
「陣内。枠を購入だ」
マスカラスマンが500円玉をハイジさんに渡す。
「バルカンの枠を」
「バルカンの枠なんてねぇ」
「『Siri』の枠を買い取り、選択肢を『円谷英雄』に書き換えろ」
マスカラスマンが500円払ってバルカンの無事を置きに来た。そりゃそうだろう。この時点で舅がボコりたいほどムカつくとなったら結婚は見直すべきだからな。
そしてバルカン(仮)の選択肢が『Siri』から『円谷英雄』に。最終的な選択肢は
『円谷栄治』
『円谷英雄』
『最近流行りの子役』
『陣内一葉』
に
「それでは深山さんシンクロの回答をどうぞ!」
リーベルト→『最近流行りの子役』
マスカラス→『円谷英雄』
星野→『最近流行りの子役』
桜井→『最近流行りの子役』
雨宮→『最近流行りの子役』
俺たちの中で『最近流行りの子役』へのヘイトが高すぎる。誰かの全問不正解を避けるのなら全員でバラけるか、それとも書き換え選択肢に全員で乗っかるかにするべきなのに! コイツらそんなに『最近流行りの子役』が嫌いか!? それとも深山みちるがそんなに『最近流行りの子役』が嫌いだと思っているのか!? 具体的な氏名は出していないぞ、『最近流行りの子役』!
「それでは深山さん。この中で一番ムカつく選択肢に攻撃してください。ただし攻撃は1セットまで!」
能面とヘッドホンを外された深山みちるがつま先をとんとんして靴の位置を直し、前傾姿勢で4人の選択肢を確認。
「あぁーと、深山さんが『最近流行りの子役』に必殺のミドルキックだぁー」
『最近流行りの子役』、深山さんのミドルキックを食らって横向きに折れて吹っ飛んで倒れた! ピクリともしないぞ、『最近流行りの子役』!
ピーッ!
「レフェリータイム! 医療班!」
どこからかホイッスルの音と聞き覚えのある声が……。
「安心してください! このクイズは受け身のプロと行っています。繰り返します。このクイズは受け身のプロと行っています!」
聞き覚えのある声が場内アナウンス。明星ホイッスルだったか……。『最近流行りの子役』こと受け身のプロは医療班の決死の応急処置を受けているもののまだ立ち上がらない。
「これは没収試合かぁ……?」
ハイジさんが苦虫をかみつぶしたような顔で呟いた。
「そうなったら俺の500円は帰ってくるか?」
「おい、今一人死にかけてんだぞ。恥を知れ恥を」