【ロス・インゴ ベ~ルナブレス デ! ハポン!】第11話 クイズ! 賭博発見! その8
「……ッ! ……それはまるで夢の景色のように……美しい眺めだった……フンハッ!」
コタツで寝ていたマスカラスマンが噴破ッ! と起き上がり、ぜーぜーと荒い呼吸をしている。
「どうした?」
『ドラゴンボールZ』をやっていたハイジさんがマスカラスマンに尋ねるが、既に桜井に5連敗しておりかなり気が立ってる状態だ。
「……え?」
「いや、だからどうした?」
「夢の中で陣内さんが話しかけてきてます」
「え、何お前気持ち悪ぃっ!」
「え、何がですか?」
「お前に敬語使われるとか初めてだわ」
「いや、割といつでもそうですよ」
???
「なんですかこの空気」
確かにマスカラスマンがハイジさんに敬語は今までなかった。しかも陣内さん呼び。非常に珍しい状態である。
「おかしな夢もあったもんですねぇ。あれ、もう起き……エヘッ、エヘッ、声が低い。ん? わたし声がマスカラスマンみたいになってないですか?」
「いやお前マスカラスマンじゃねぇかよ」
「いや違いますよ」
「じゃあ烏丸椿か?」
「いや良崎ですけど? なにこれ。新手のドッキリですか?」
「それはこっちのセリフだよ。気持ち悪ぃっ」
シケた空気。マスカラスマンが急に血相を変えてスマホを取り出し、いろいろ操作してから自撮り。カシャッ。
「え、これわたしですか?」
写真には驚いた顔のマスカラスマン(ミル・マスカラスレプリカ装着)が。
「もしかしてわたし、夢の中で、入れ替わってる!?」
――「このままだと大学が終わる!」「おいリーベルトてめぇ俺の足ヘシ折ってみろ!」「もっともっと大学に、血の雨が降るぞー!」「主将よりも優れた会員など存在しねぇ!」「あの男は~‼」「あの女は~‼」「フヌケたか貴様らは‼」「俺たちはどこにいても、絶対にわかる!」
それはまるで悪夢の景色のように…
ただひたすらに……
惨たらしい眺めだった……
2017年 お正月『うぉくのふぉそみつ』
“俺様の名前を言ってみろ!”
「つまり、今のお前は体はマスカラスマンだけど中身はリーベルトな訳だ」
ハイジさん、小林氏、桜井の男子陣で集まりホワイトボードに状況を記す。
マスカラスマン(肉)←リーベルト(魂)
リーベルト(肉)→どこ?
マスカラスマン(魂)→どこ?
リーベルト(肉)って書くな。なんか卑猥だから。
「てめぇはマスカラスの皮を被ったリーベルトな訳だ」
「噴破ッ! めっちゃ動きますよこの体。オォウラァッ!」
プレステ2に全力瓦割パンチ! バァキィと音を立ててプレステ2が割れる!
「ああー‼ てめぇ何してんだこらぶっ壊れてんじゃねーかよぉ!」
「超力出ますよ! 肩の可動範囲広い! 全然コリがない! よく鍛えてるなぁ!」
マスカラスマン(リーベルト)が肩をブンブンぶん回す。
「いや、だからプレステぶっ壊れてんじゃねーかよ!」
「いや、それは別にいいじゃないですか。だってこれは夢ですし」
「夢じゃねーよバカが‼ 俺の主観が入ってる時点で夢ではねぇわ!」
「まぁ現実だとしてもやったのはマスカラスマンですしね?」
「……は?」
マスカラスマン(リーベルト)のマスクの口元がギィィィと悪に溢れた形に歪む。
「わた……俺様の名前を言ってみろ!」
「お前の中身はリーベルトだろ?」
「いや、違うぞ。俺はマスカラスマンだ。さっきまでリーベルトと入れ替わったようなフリをしていたが俺は正真正銘のマスカラスマンだぞ」
コイツやべぇな……。マスカラスマンと入れ替わった夢を見ていると思っていてもヤバイし、マスカラスマンと現実で入れ替わってるとしてもヤバイ。どっちにせよ好き放題する気でいるぞ! それから本人が言ってるようにマスカラスマンが起きぬけにリーベルトと入れ替わったふりをしてたらそれはそれでマスカラスマンもヤバい。
「おい桜井。星野呼んで来い」
「なんでですか?」
「用があるからだ」
「何の用ですか? どっかでマスカラスさんと入れ替わってるリーベルトさんの体を探すか、それとも空っぽの抜け殻になってるリーベルトさんの体を探すかってのを星野に手伝わせるとか?」
「フフ、お前のそういう勘の良さは嫌いじゃないですよ。ただ一つ覚えておいてください。今のわたしはプロレスサークル主将の肉体を持っているということを……」
そっからマスカラスマンは大暴れに暴れた。マスカラスマン本来の強さを上回る強さで桜井、ハイジさんを制圧。二人を磔刑に処し、有能で賢い小林氏を暴力を以って服従させ己の参謀としてその日のうちに大学の東側を制圧。己の肉体と、最も信頼できる後輩星野を探し求めたが初日に見つけることはかなわなかった。
「フハハハ! 酒を持てい! 肉を持てい! 俺様の名前を言ってみろ!」
暴君マスカラスマン(リーベルト)はサトウキビ畑を拠点に配下の学生たちとバーベキューを開催。気に食わない配下を意味もなく殴りつけるなどプロレスラーの肉体の悪用で暴力による支配を大学に見せつけていった!
翌朝……
「大変ですマスカラスマン様! なにかの軍隊が攻めてきます!」
伝令を務める悪学部の極悪漫才師のツッコミ、ヤスからマスカラスマン(リーベルト)に報告!
「なんだとぉ? 俺様が誰かわかっているのか? 相手は誰だ?」
既に配下に入っている学生寮・性器待つの大棟梁で身長300㎝超のウイグルに肩車され、マスカラスマン(リーベルト)が双眼鏡をのぞき込む。
「あの旗は……北斗七星?」
「よこせっ!」
マスカラスマン(リーベルト)から双眼鏡を奪い取って覗き込むと‼
悪学部の精神的支柱で将来は主に千葉県で展開するドラッグストア、ヤックスドラッグへの就職がキまっている通称“薬流通レディ”の下田姐さん!
性器待つを追われ落ちた鳳凰、“童帝”参座嘉文!
マスカラスマンが主将を務める覆面プロレスサークル最強の男、エル・バルカン!
現大学番長・星野憂!
遥かな星が故郷だ、ウルトラセブン!
パーフェクトヒューマン、鬼畜お姉さん!
『演劇サークル』顧問、権藤常親教授!
七人が北斗七星の位置に並ぶ。大学北斗七星だ!
「キャラは濃いのにマズいタイプのラーメンみたいなメンツだ……」
パチンとマスカラスマン(リーベルト)が指を鳴らす。
「人質を掲げろ」
その合図で磔刑に処されて虫の息のハイジさんと桜井の十字架が高く掲げられる。
「桜井……」
星野が唇をかんだ。
「リーベルト‼ お前の体はこっちが預かってるぞ!」
「‼?」
大学北斗の軍が滑車でハン・ソロのような石板になったリーベルト(肉)を運び、マスカラス軍に見せる!
「これがお前の死兆星だ!」
大学北斗七星の死兆星の位置にリーベルト(石板)が設置される。
「お前と体が入れ替わったマスカラスマンは、自分が自分の胸をもんだり裸体を写真に撮ってクラウドに保存して後々楽しむような凶行に走ることや、いつもの自分のチューニング具合で体を動かしてあっちこっち攣ったりしてお前の体を傷つけることを良しとせず! 即座に陣内二子に頼んでコトが済むまで石板でいることを選んだ! 自らすすんで地獄を克服した男がいたんだ! おなじ条件で‼ 人間の尊厳を‼ 男の紋章ってやつを‼ つらぬきとおして眠っていった男をわたしたちは身近に知っていたんじゃねえかっ! それに引き換えリーベルト! わたしたちはマスカラスマンのこんな立派な態度を見せつけられて、マスカラスマンに劣るお前のこんなふざけたことを許してマスカラスマンの評判を下げたとあっちゃ、このさいなんとも彼に申し訳が立たねぇんだよ!」
星野、魂の叫び!
「拡声器をよこせ……。おぉーいお前ら騙されてるぞ! それはリーベルトの狂言だ!」
コイツどんだけだよ! もう誰かの手で死なせてやれ!
「ならリーベルトの石板は砕く」
「ゴミ共が‼ ならば力づくで奪い取るまで! 来い! マスカラ五車星!」
“性”の狼藉仮面!
“湯”の野生の宇宙海賊キャプテン・ボイルド!
“光”のウルトラマン!
“鉄”のメカスパイ!
“豪”の陽気なレンタカー屋!
おい光の戦士!
「迎え撃て! リーベルト血盟軍!」
「ハッ!」
「ハッ!」
……?
「……君の名は?」
「……君の名は?」
2017年 お正月『うぉくのふぉそみつ』
“俺様の名前を言ってみろ!”
‐完‐
「ちょっと待った!」
マスカラスマン決死の“待った”!
「おい陣内、このクイズは個人戦か‼? おいリーベルト、お前もよく聞いとけ」
「個人戦だ」
「成功報酬はいくらだ!?」
「1000円だが」
「1000……」
マスカラスマン、考えてる時に出す「ツー」の音で首をかしげつつ良崎を……
ッパァン! リーベルトからはおそらく初めてとなる、マスカラスマン状態のマスカラスマンへの暴力!
「情けをかけるかで迷うんじゃありませんよ!」
良崎さん、マスカラスマンのチンケな温情がイラっとした! マスカラスマン、たぶん1000円以下なら、何も言わずにここまで負けが込んでいる良崎に答えを譲ったのだろう。だが1000円は重かった。ちょっとの迷いが命取り。良崎としては、どちらかというと1000円ほしさよりマスカラスマンのちっぽけな根性が気に障ったか。
「みんな、個人戦だそうだが、答えはリーベルトに譲ってやれ」
マスカラスマン、逡巡がなければマジ漢だったのにな。一回それを譲るか迷って殴られてるからかっこよさも心象の良さも半減だ。
「うん、そうしよう。今回のクイズ、我々は回答権を放棄します! 賛成のヤツは挙手」
そしてリーベルト、マスカラスマン両者が気がかりであったであろう、リーベルト並の負け+風圧ジャーマンの星野も勝ち譲りを承認。桜井、雨宮も挙手し、みんなで良崎に1000円贈呈という流れになった。
「……ならん。ダメなんだよ。回答棄権で回答者が一人しか残らなかった場合は不成立で成功報酬が出ない。リーベルトに1000円渡すんなら、一人残らなきゃだめだ。しかも無気力試合は威嚇戦隊能面ジャーにより厳しくジャッジされる。リーベルトに1000円渡すなら、誰か一人残った上で、リーベルトがその誰かと全力早押しをしてリーベルトが勝つしかない……リーベルト! がんばれ!」
「……じゃあ誰が残る?」
マスカラスマンの言葉でリーベルトさん再び暴力。
「惜しむな! 1000円を‼ あわよくば自分が残ろうとしたでしょう! わたしの次に負けが込んでるのは誰ですか! 言ってみなさい!」
「星野だ」
「じゃあ万が一早押しで勝ってもいいように残るべきは誰ですか!」
「そうなると星野が妥当だな」
ッスパァン!
「そうなるとじゃないでしょう!」
「まぁ桜井も惜しいところ不憫なんだがな」
「折れろ!」
「よし、星野、残れ」
マスカラスマン、桜井、雨宮、回答権を放棄。
「それじゃあVTRを続けるぞ」
ハイジさんが再生ボタンをポチッ。
「ボクの婚約指輪は少し特殊なのですが、いったいどんなものでしょう!? これは早押しクイズです!」
ビッ! ピコーン!
星野、回答権獲得
「お前もお前で勝つんじゃありませんよ!」
強烈なリーベルトフラストレーションが星野の後頭部にも炸裂!
「威嚇戦隊能面ジャー! ルール変更を頼みたい! これで星野が外した場合、お手付きで回答権はリーベルトに移る、そういうルールでいいな?」
ハイジさんも加勢。みんなで恵め! リーベルトさんに1000円を‼ そして威嚇戦隊能面ジャーもハイジさんの嘆願を受理。
「さぁ、わかってるだろうな、では、星野‼」
「えー」
「無気力試合は無効試合になるぞ、さぁ星野気合の入った答えを‼」
「くぅ……円谷くんの婚約指輪は、木彫り!」
星野が歯を食いしばり、もう正解の出たクイズを外す。ちょっと悔しそうなのは星野もあんまり言わないだけで本当は1000円ほしかったのだろう。星野次第だったからな。星野が「ミサンガ」って言ったら1000円は星野のものだった。しかしハイジさんは、これでよかったのだとほめるような、後輩を誇るような穏やかな顔で頷く。
「……不正解ぃえ?」
ドプァン! 威嚇戦隊能面ジャーがどこからか持ち出したヘビィボウガンから生クリーム弾Lv3しゃがみ撃ちが星野の顔面に炸裂! 着弾の衝撃で仰向けにぶっ倒された星野はまた白くて粘り気のある液体を顔にぶっかけくらっている。その白くて粘り気のある液体からぱくりと口のところが開き、大きく息を吸い込む星野。だが……
「なんだこれ痛ぇ!」
星野開いた口からパチパチパチパチと心地よい音が続く。
「うあー」
どうやら生クリーム弾Lv3にパチパチ飴が混ざっていたようだ。徹甲生クリーム榴弾Lv3! 追加効果が地味に効いてるぞ!
「星野ー‼!」
「星野大丈夫か? 早く誰か水持ってこい!」
外すと威嚇戦隊能面ジャーからのペナルティがあるとはハイジさんもご存じなかった様子。
「うぅ……」
泣いちゃったじゃないか……。
「リーベルト! 早く答えてこのクイズを終わらせろ! タイムアウトがとれねぇ!」
「婚約ミサンガ婚約ミサンガ婚約ミサンガ」
リーベルトさん秒速16連打で回答権獲得‼
「正解! 1000円! よこせオラァッ! VTR続きどうぞ!」
ハイジさんが威嚇戦隊能面ジャーから1000円札を奪い取り、すぐに良崎に渡してVTR再開。
「ハイ、ということで正解は婚約ミサンガでした! 愛はお金で買えないがお金があれば愛は潤うとどこかのイケメンも言っていたっけ。あ、イケメンってボクのことじゃないよ? でも愛はお金では買えない、つまり値段じゃないのさ」
それよりも今の俺たちは星野の精神とフィジカルのフォローでいっぱいいっぱいだ。すまんな円谷くん。でも俺はわかってるから。いつも以上にお前がうざいのは婚約でテンションが上がっちゃってるからだって。
今年も開幕は『ふぉそみつ』で。





