【ロス・インゴ ベ~ルナブレス デ! ハポン!】第2話 潜入捜査! 新入生歓迎コンパ その2
「じゃあみんな。変装はしたな? あの新歓コンパの隣の席にズームイン」
変装
リーベルト→ババア
マスカラスマン→タイガーマスクW
小林氏→鼻眼鏡
ユダ→タカラジェンヌ
桜井→変装ナシ
雨宮→心眼の宇水
「お前誰?」
「星野だよ」
「あぁー」
髪が黒でピアスがないとマジで誰かわからんな。一見して普通の女子大生に見える。リスカもしてなさそう。
「お前は髪は黒のままでピアスもない方がいいですね」
「ヤだよキャラ薄くなるし」
「お前よりキャラ濃い奴なんてナメック星探してもいませんよ」
星野がスーゥと控えめにリーベルトババアの胸ぐらをつかみアイコンタクトを試みる。それを無言で見守る俺たち。それを受けてゆっくりとリーベルトババアも星野の胸ぐらをつかみ、互いに何かを確認して細かく頷いた後、大きく良崎が拳を振り上げ星野に叩きつけようか‼ というタイミングで寸止め。リーベルトババアが先に胸ぐらを放し、余裕の表情で星野の両肩を優しくポンポンと叩くオカダ・カズチカ式フェイント→クリーンブレイクのムーヴ。そして良崎・星野両者が「今のアリ?」とでも言わんばかりにマスカラスマンに目配せ。タイガーマスクWと化したマスカラスマンはゆっくり頷く。認可! 良崎⇔星野間にいい連携の形が作れたぞ! このオカダ式フェイントクリーンブレイクは今後も使える。
「わたしはそれ見えないです」
被害者枠雨宮さん、「目が悪い」「剣道やってた」の理由でアイデンティティのメガネを外された上に『眼 心』のハチマキを目の上に巻かれてめでたい衣装を着せられる。ハイジ遺産のティンぺーローチンも持たされ亀の甲羅を背負わされているのでこの後、席に座れない可能性すらある。まぁこの辺は手探りやっていこう。
「おい靴ひもがほどけてるぞ雨宮」
「えっ? 星野さん、結んでもらっていい?」
「うん、結ぶから危ないからお前動くな」
「はい」
雨宮さん(心眼の宇水)直立不動。星野が人差し指を口元にもってきて我々に沈黙を強要。靴ひも待ちの雨宮さんはそのままに、星野の先導で居酒屋へ。
「じゃあ。まず見えてると思うけどあそこの」
ヘ~イジッコショーカィー
「わたしたちとは無縁の飲みをしてる夏はテニスで冬はスキーのサークル」
①オールラウンド系サークル
「そしてアッチのヤベェ感じのヤツ」
②姫を中心に猪木のファイティングポーズのような攻撃的かつ腰の引けた構えのオタサー
「この二つを中心に見ていこう。それじゃあ注文の品は行き届いたでしょうか。そのようですね。こういう場合は……4年生が音頭のとるのかな?」
「構わん、お前が今は頭目だ」
「じゃあ乾杯」
タイガーマスクWの許可を得て音頭取り慣れていない星野さん、なんか燻ぶった乾杯。ちなみに星野は絶対にじゃんけんで勝てる音頭というものを持っている。
チーン。
「……陣内ン時はどうしてたの?」
「ああ、あの人はモンスターですから、とりあえず開始15分は陣内さんに任せといて好きなだけ食べつつ陣内さんが場を温めてくれるのを待ちますかね。しかしあれは陣内さんの財力あってこそなんでお前が気にすることはありませんよ。それにお酒飲みに居酒屋なんてほぼ来なかったですから」
「うむ、基本部室で茶とサイダーと茶菓子だったな。遊びも王様ゲームなんかしないぞ。『ドラゴンボールZ』だ。だが星野。気にするな。いいか、気にするな」
「わかった」
「まぁ、そういうところのパス回しもおいおい教えていきますから、今回は新体制親睦飲み会ってことで、ルーキーは教えられて当然と開き直ってなさいよ。細かいところは一番わかってるのはあのヒゲですから、何か聞くなら一番いいのはあのヒゲです」
良崎にまで気を使われる新番長。そうだよな。これ以上追い込むとまた手首切っちゃうから。
「で、どっちを重点的に見る? あのオタクサークルか、それともあのアラレちゃんメガネのアンジェラ・アキがいるほうにするか?」
「アラレちゃんメガネのアンジェラ・アキの方にするか。そうだな……」
マスカラスマンがオールラウンド系サークルの方を未使用のスプーンをミラー代わりにして伺うがあんまり見えなかったようで直でチラ見。突如タイガーマスクWにチラ見されてどよめくオールラウンド系サークル。
「いや、星野にやらせるか。星野、オールラウンド系サークルの方のキーマンは誰だ?」
「え?」
急激なスパルタパス!
「アラレちゃんメガネのアンジェラ・アキ?」
「フ、甘いぞ星野。いいか。キーマンは、『ちょっと待って‼ ちょっと待って今タイガーマスクWがこっち観たんだけど!』と自分の手柄のように俺をイジって目立とうとするバカだ。必ずいるぞ」
ジャァ~ングゥルゥに~
「そら見ろ‼ 俺の角度からは見えない。どいつだ? どいつが言った?」
「松本人志みたいな金髪」
「よし。アラレちゃんメガネのアンジェラ・アキと松本人志みたいな金髪、略して松金はこれからもテンション爆上げで行くだろう。注目すべきはそいつらの陰でひっそり一年を狙う男子どもだ」
タイガーマスクW、キレキレ。
「おっとタイガー、1年生の女子が一人先輩に呼ばれて奥に行ったぞ」
そしてヒゲが見逃さない! なんと頼れる先輩か‼ そうだろうな! 小林氏は数百人単位のサークルの長、マスカラスマンはマスクしてなければ可もなく不可もないフツメンだが人気者で世渡りの素養がある。こういう大きなコンパに赴くこともあっただろう。
「マズイ、まさかこの速さでか?」
「早くも危険な状況だ! こっ……チェリー! 決定的にまずいですか?」
「うん?」
「本名を呼ぶと正体がバレる。コードネームで呼び合うぞ。チェリー、呼ばれた女子は」
桜井がすっと手を挙げた。
「チェリーは俺ですか」
「いや、ヒゲの方のチェリーだ」
バフッとリーベルトババアがウーロン茶を噴射!
「ヒゲの方のチェリー……」
見よ星野‼ そして桜井! 真面目に素で「ヒゲの方のチェリー」! これがマスカラスマンだ。
「そしてスター! どうする? 止めに入るか? おそらく今からあの女子は上級生が開発した新種のカクテルを飲まされるだろうが、落ちた、と判断したら助けに入るか?」
「フゥム、しかし僕たちももう一杯口をつけてしまいましたからなぁ。ヒゲじゃない方のチェリーくんは確か4月生まれでもう20歳だったはずだがスターさんは19だろう? 迂闊な通報はともすれば自滅の可能性がある」
「しかしここは居酒屋であいつらは大学生だ。大きい大学だから不祥事は大きく報道される可能性がある。そうなると我々としても不利益を被る可能性がある。特に就職活動を控えているグッドと俺は当事者じゃなかろうと現場に居合わせたというのは少々マズい」
グッド→良崎か?
「しかし事態は起きつつあるがまだ事件ではない。コトは起きていないんだ。しかし危険な状況ではある。スター番長、ここは、苦しいところですが」
とヒゲの方のチェリーが決断を促す。
「こ、ここで決めるのか!? 聞いてない!」
スター番長狼狽! なにせお前がもう一口酒飲んでるからな! 騒ぎになると一番やべぇのはついでに処分食らうお前だよ。
「あーもしもし? どこまで来た?」
オールラウンド系サークルの方に動きが。松金がでかい声で電話を始めた。
「オーイ! これからマジパねぇヤツ来るから。マジシラフのテンションじゃおいつけねぇヤツ来るから飲んどけよ‼ あぁー? でどこまで来てんの? あぁ、じゃあその心眼の宇水の前のところの店にいるから一人迎え出すわ」
星野さんピキーンってなり、窓からそっと外を窺う。
「おいスター。レインがお前のせいで待ち合わせ場所にされてるぞ」
「レインさんはかわいいので酔った大学生やヒャッハーに目をつけられるとやっかいです。このイジメとお約束の境界が曖昧になってる昨今、大問題に発展する可能性もあります。季節は春だ。春なら多少のことはやっちゃっていいしせっかく大学は入ったんだから遊ぼうぜヒャハーという連中も多い。ですが幸いにもまだレインさんは待ち合わせ場所にされているだけだ。しかしこれ以上は高度な判断が必要とされる時間帯だ。スター、ここは苦しいところですが」
ヒゲの方のチェリーが決断を促すと星野が口をゆがませムムム顔でテーブルの上に何か置く。メガネだ。
「これ雨宮のだ」
メガネのデザインが微妙に違ってる。前のメガネは変態デンテストに弄ばれたので捨てたようだ。
「……ここは苦しいところですが……」
星野さん、マジで苦しげ。
「わかってる。ヒゲじゃない方のチェリー」
リーベルトさん爆笑。
「持ってってやってくれ」
星野新番長から桜井番長副官に、雨宮さんに対する防衛出動が発令された。ヒゲじゃない方のチェリーがメガネを持って席を離れ待ち合わせ場所にされてる心眼の宇水の元へ。
「……これやりすぎたかな?」
星野、頭を抱える。コイツそんなに悪いやつじゃないんじゃないかって気がしてきた。
びっくりすることに糧はまだつきなさそう。





