【やめるんだ! 利き手はやめろ! ブルガリア!】第13話 驚くなかれ! 大学発見 その11
7:30
(銅鑼)
『香港超功夫物語』
前回までの『香港超功夫物語』は……
ついに功夫珠を10個集めて超英国紳士拳を身に着けた極悪イギリス野郎チャーリー! その拳がスーパー兄者に襲い掛かる! さぁ、いったいどうなってしまうのか! 香港の平和は猛虎兄弟! お前たちの功夫にかかっている!
(銅鑼)
『2098話 スーパー兄者vsチャーリー!! 香港の平和は俺が守る!』
「フ、今度コソ仕留メテヤルデスヨ」
「少し“氣”が増したからって調子に乗るなよ腐れブリテン野郎」
「オー、コレダカラアジア人ハ困リマス……アヘン漬ケニスルノガ一番デース」
スチャ
「シカシアナタニハアヘンモ勿体ナーイ! アヘン使ワナクテモ元々大馬鹿ノマザファッカデース……私ノ超英国紳士拳デ消シテヤリマース。ハァッ……ハァァァァァァァアァァァ……」
スッ……ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「!? チャーリーの野郎、スゴイ“氣”だぞ!? 兄者!」
「何を怯える弟よ。俺たちも見せてやればいいだけのこと! 超即身仏拳弐式奥義、“超虎拳”を! ハァァアアアアアアアアァァァァァァァ……!」
「!? 兄者の“氣”も負けていない……ぞ? なんだ、地震か?」
ゴゴゴゴゴゴッゴゴゴゴゴゴゴgッゴ
「ワー大変だー兄者とチャーリーの“氣”と“功夫”の大きさに耐えきれず、地球が悲鳴を上げているんだー」
ワーキャー
「逃げろーあんな怪物たちの戦いに巻き込まれたら死んでしまうー」
「ちくしょー、俺はただの野次馬だってのにこんな危険な目に遭ったんじゃ割に合わないぜー」
ズテ
「ウワーン! ひざをすりむいたよママー」
「坊やー! 坊やー!」
スック
「坊やは後で必ず届けます! 今は逃げておください奥さん!」
「あなたは猛虎兄弟弟者さん」
ゴクリ……ニヤッ
「私も兄者と同じ修業をしたのです。兄者には敵わずとも、坊やを助け出すことくらいは出来ます。さぁ、逃げて!」
「うぅ、坊やを頼みます」
ダダッ
その頃、寺院では……
「兄者! 兄者! 兄者!」
「すごいぞ兄者! 本当にチャーリーに勝てるんじゃないのか!」
「バッカモーン! 超即身仏拳弐式を習得した者が負けるもんか!」
ビシッ!
「へへ、こりゃ手痛いや!」
「この程度で痛がってるようでは功夫が足りん! 貴様もあとできつ~い稽古をつけてやるわい!」
「え~、そんな~」
ワハハハハハ
7:45
(銅鑼)『香港超功夫物語』
「ミランダ! まだ生きてる冷蔵庫が見つかったぞ!」
「本当に兄さん! 中に入ってるは、えぇ~と」
「クラウン・コーラだ! それもキンキンに冷えたのが何ダースも! 両手じゃ数えきれないぜ!」
「Awesome! 今日からクラウン・コーラパーティね!」
クラウン・コーラ 全米のイチバンマーケットにて大好評発売中
7:47
(銅鑼)『香港超功夫物語』
「ハァアアアアアアアアアアア……」
「ハァアアアアアアア……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「すごい! 二人の“氣”がまだまだ充実し大きくなる! この勝負! スケールが前人未到だ!」
「ハァアアアアアアアアアアア……」
「ハァアアアアアアア……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
バキバキバキバキ
「な、なんだと!? 二人の“氣”に触れた大木がなぎ倒され、岩がはじけ飛んでしまったー! こんな達人同士の戦いが始まったら香港は、いや、地球はどうなってしまうんだー!」
「ハァアアアアアアアアアアア……」
「ハァアアアアアアア……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「ッッッッッゥハァアアアアアアアアアアア……」
「ッゥーーーーハァアアアアアアア……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「くっ、俺ももうまとも立っていられないほどの“氣”だー! 俺も逃げるべきか。いや、兄者が今からあのチャーリーと戦うんだ! 弟の俺が逃げたら猛虎兄弟の名が泣くってんだー!」
「ハァアアアアアアアアアアア……」
「ハァアアアアアアア……」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
バリバリバリ……ピシャーン!
「なんとー! 二人の“氣”が雷雲を割り、龍神様までも逃げ出したー! いったいどんな戦いになってしまうんだー!」
7:55
兄者とチャーリー、一体全体どんな戦いになるのだろうか? いったい、香港はどうなってしまうのか?
つづく
「そのヤンキー擬きのメンタルはもう大丈夫か?」
「もう大(この番組はモノクロで放送しています。お使いのパソコン・スマートホンの故障ではありません。)ます!』を始めましょう!」
ちょっと心の傷が深そうな星野に代わり雨宮さんが頑張ってしゃべる。そういえば星野は長袖しか来てるところしか見たことないが闇が深すぎてリスカ痕とかありそうなタイプなので今日は雨宮さんは星野がそういう行動を起こさないように雨宮さんが星野の家に泊まるか、雨宮さんの家に星野を泊めるっていう措置をした方がいいと思う。
「始めましょうってったって、そいつが決めなきゃ始まんねぇんだよ」
「一応ことづ(3Dメガネは、鑑賞後は必ずご返却ください。)す」
雨宮さんが星野、桜井、雨宮さんのLINE画面を我々に見せる。
『天空学食VIP席』
お友達とも口頭でコミュニケーション取れないほどやられきってるじゃないか!
ピーッ! アケボシホイッスル発動!
「レフェリータイム! ちょっと星野さんのフォローに行ってきます」
鬼畜お姉さんが一年生トリオと権藤教授を連れて立ち話が我々に聞こえないくらいの距離まで。
「明星さん怖ぇ……」
ハイジさん泣きそう。軽く「鬼畜お姉さん」なんて呼べないくらい怖がってる。
数分後。
「『ナウシカ』が始まる前に終わらせてやる。お前の家計を火の七日間よりも悲惨なものにしてやるから覚悟しとけ浴衣のイタいアラサー」
星野完全復活! なんなんだこの数分で……鬼畜お姉さんはなろうと思えば菩薩お姉さんにもなれるのか?
「俺の年齢についてはマジでお前ごときが言及していい話じゃねぇぞ」
「星野さん、陣内くんの年齢については本当に言及しちゃダメなの。覚えておきましょうね」
コクリと頷き、溶鉱炉に沈むターミネーターのように鬼畜お姉さんにサムズアップ。完全に子分になってる!
「オッケー鬼畜お姉さん」
そしてタメ口も許されてる!
「今日は普段お前に迷惑かけてる分も帳消しになるくらいいいもの食べさせてやるからな雨宮」
それが聞けて嬉しい。去年の学祭で星野が雨宮さんにやらせたことはマジで亀裂入る出来事だったからな。詳しくは『うぉくのふぉそみつリターンズ 9月編(2週目) 第7話 学園アイドルグランドチャンピオン決定戦 その7(再投稿時期未定)』で。
「別に迷惑なんて思ってないけど、星野さんがそう言(体感型アトラクション小説、ついに上陸! その名も『4DXノベル』! 噴き出すアロマ! 揺れる座席! 最高にエモーショナルなノベル体験をアナタも是非! お近くの『小説家になろう』に急げ!)ゃいますよ!」
雨宮さんも意気込みを語る。桜井はスマホポチポチ。
「お前は意気込みとかないの?」
「今母に『ナウシカ』の録画頼んだんで今日は無限に食べます」
ピーッ! アケボシホイッスル発動!
「桜井くんに身代り一枚」
桜井―身代り一枚
「普段しゃべらないからこそ、ちょっとした発言で面白い。これは『演劇サークル』には出来なかったことね」
過去を振り返るように俺たちの政権をことを語られると地味に傷つく。
@天空学食
天空学食とは、地上2000mのところにある我が校の施設の一部である。他に天空練習場、天空展望台、天空ステージなどがある。なお、春になると大量のアメリカザリガニが現れる。
そして天空学食は教授陣でも気軽には入れないスーパー高級学食であり、値段を見て自分の懐と照らし合わせて、というようなことを必要とするような程度の金持ちでもなかなか入れない。食って会計を見てしょうがねぇから株と持ってる会社2~3売るか、ぐらいの金持ちじゃないと無理なマジヤバイ超超超高級学食なのだ! 学生の中では、大学から二つ名を与えられるほど偉大なOBの一族の者しか存在を教えられないとされる。『演劇サークル』には“誇り高き高等遊民”陣内家のハイジさん、“ロマンチストの末裔”水原家の水原さんがいるので昔存在を教えてもらったが行ったことはない。何をしても「だって俺んチ金持ちだもーん」とカネで解決するハイジさんすら行くのが憚れるレベルだ。大学と縁のない……というとそうなのだけど、大学の危機を何度も救ってくれたあの超能力者3人衆はお断りにされてしまった。
「ちょっとマジで勝たないとマジでガチる」
ハイジさん緊張で訳わかんないこと口走る。
ビーッ
そしてハイジさんの心拍計鳴る! 多分ハイジさんはここで飯食ったことあるのだろう。だから金額のヤバさを知っていてビビってしまったのだ。多分、食事のことを飯食うなんて乱れた言葉を使うやつは入れないのだろう。
「……?」
目玉模様の白装束の執行人が来ない。
「あー、陣内。ここではペナルティは来ない。下賤な民に天空学食の存在を知られ、汚い足でズカズカと踏み入られては困るからな。よし、始めるぞ。明星!」
権藤教授っていうか天空学食怖ぇー!
「ハイ、では『グルメチキンレース ゴチになります』を始めます☆ ウフフ、あんまりソワソワしないで」
鬼畜お姉さんめっちゃ楽しそう。司会は勝ちも負けもないからな。
「では星野さん、設定金額を発表してください!」
「はい。設定金額はこちら!」
星野が小さいホワイトボードに左手でキュキュっと書く。左利きか。なんだ、さっき桜井を殴って傷めた右手は利き手じゃないのか。利き手じゃない方で殴るんなら怒りの表現としてはマイナスです。利き手で殴って利き手を傷めてこそ、だ。そしてホワイトボードをドーン!
(2カメ)
ドーン!
(3カメ)
ドーン!
(4カメ)
ドーン!
(スーパースロー)
ドォオオオオオオオオオオオオォォォォォンンンン……
『10』
「10円だ」
(全員の顔アップ)
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「10円……だと」
「わたしなりの貧乏人および臆病者への救済策だ。和洋中全てをパーフェクトなクオリティで網羅したこの分厚いメニューの中に一つ異常なものがある! 全員一品メニューのページを見ろ」
全員が生唾を飲み、額に汗を浮かばせながら一品メニューにめくる。
「詳しい値段は書かれていないが……これを見ろ! “なまたまご”ッ! これは絶対に、一番安い!」
ド ン !!
“なまたまご”
―なまたまご
な
ま、たまご
(銅鑼)ドォ~ン
“ な ま た ま ご ”
(鈴)シャンシャンシャンシャン……
「!!!!」
「ピタリ賞はもちろんニアピン賞も狙えないが、負けたくないヤツは無難になまたまごでも食ってろ」
やっぱり星野、頭いいことは頭いいな。使い方間違ってるだけで。天空学食で、好き放題食えるチャンスでもあるが、負けたらマジでやばい金額。好き放題食って自分の運や他の暴走に賭けるもよし、天空学食で食えると言う一生に一度どころか十生に一度くらいの大チャンスでたぶんすっごいおいしいだろうが、なまたまごで我慢するか!!! 超選択!!!
「それじゃあわたしは……超高級和牛のサーロインステーキトリュフ添え、果汁100%美味200%バレンシアオレンジジュース、スーパーナタデココスペシャル、アルティメット雪印コーヒー牛乳」
星野行ったー! なまたまご捨ての勝利賭け! 全体的にメニューの名前が安っぽい!
「ガキにここまでやらせてなまたまごすすってるようじゃ先輩の名が廃りますよ……大トロ3個、中トロ5個、アワビ3個、エンガワ1個、ナタデココ!」
良崎も行ったー! しかし寿司を個でカウントする辺りが悲しい無知! でもハンバーグ寿司とか恥ずかしいメニュー口走らなくてよかった。
「ザワークラフトとビールとソーセージはいいのかよリー……」
ピーッ! アケボシホイッスル発動!
「星野さん、人種差別はダメ」
「了解」
なんであんなに関係良好になってんの?
「ならば俺はステーキピラミッド5段とスティック野菜10種盛りと黒烏龍茶」
マスカラスマンも行ったー!
「じゃあ僕はこっからここまで」
桜井はメニューで「こっからここまで」食い!
「僕ぁペキンダック、神将・餃子、旬の菜っ葉、花咲ジャスミン茶」
餃子が自爆しそうだが小林氏も行ったー!
「……なまたまごだ」
ドン! ついになまたまご選択者が! その名は、陣内一葉!
「プププ、いいの? せっかく天空学食で食べられるってのに」
星野が挑発。
「あ? 俺は来ようと思って少し金溜めりゃ来れるんだよ。これを逃せば一生縁のないテメーと違ってな。テメーは負けた時のことだけ考えてろ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――するハメになるんだからな」
テンションが低かったから爆風の範囲は狭かったけどハイジさん今スゲーキレたな。
「わたしもなまたまごにします」
水原さん、なまたまご!
「心臓に悪いですもん。せっかくならリラックスして食べたいじゃないですか」
とハイジさんをなだめる良妻(仮)。でもなまたまご単体は最高に滾ってるロッキー・バルボアぐらいしか食わないぞ。
「それではわたしは(3DIMAXノベルへようこそ! 最高のサラウンドでお送りします。まずはココから。そして次はココから。ジェットエンジンの轟音から……針の落ちる音まで。最高の音響環境IMAXノベルが楽しめるのは『小説家になろう』だけ。それでは、楽しいノベル体験を。)ます」
ハイ、雨宮さんもいったー。
そして注文が出そろう。煌びやかな最高級料理を前に目を輝かせる1~3年生と、無造作に置かれたなまたまごオンリーの悲壮感漂う4年生水原さんとX年生ハイジさん。皿すらも用意されないなまたまご。あれでは不甲斐ないプレーをしたサッカー選手か連敗しまくる野球チームが乗ったバスに投げるぐらいしかなまたまごの用途がない。
「これやっぱ白米別売りだよな……」
「別みたいですね……」
なんて悲しい会話。正規ルートで天空学食の存在を知ったのはこの二人だけだと言うのに。
「白米……」
あんな声色であんな言葉ははだしのゲンでしか見たことない。
「決めた。俺白米頼む。それから温泉饅頭も頼む」
「一葉さん!」
「いいんだ銀子。だって俺んチ、金持ちだから……」
水原さん、お冷をグイッと飲み干しグラスになまたまごぶっ込む! そして飲む!
「なまたまご単体でも食べられますよ! それにやっぱり天空学食のだけあって……」
「白米と温泉饅頭と流しそうめんコースターの極と、しゃぶしゃぶの極お願いします」
水原さんの願い、届かず。
「……」
ハイジさん、焦眉の急!
「とりあえず、さっきのイロモネアの臨時収入分だけでいいからカネかしてくれ……」
陣内一葉。出だしこそ臆病者だったが次々に戦士が脱落していく中、満腹の限界を超えた星野とのデッドヒートは見事だった。度胸はやはり、僕らの番長だ。だがチキンレースは行くとこまで行っちゃダメなんだよ。





