【やめるんだ! 利き手はやめろ! ブルガリア!】第12話 驚くなかれ! 大学発見 その10
こんばんは。ドクターKこと梶井基九次郎です。さて! 驚いてしまったらその瞬間! 匿名の誰かから積年の恨みを全力で受けなければならない『驚くなかれ! 大学発見!』、今夜はその第10夜です。ここまでに受けてきたペナルティは金銭強奪、運転免許証破壊、至近距離クラッシャーボール、耳元で大声、細川がベニーにやられたヤツ、マセラッティがジダンにやられたやつ、陶芸家の利き手での全力パンチと非常に手痛い者ばかりでしたが、積年の恨みを逆手に取りここまででなんだかんだで一人5万円の臨時収入を得ています。次なるステージは番長選手権『グルメチキンレース ゴチになります!』どこでいくら分食べるかの設定権をかけた現番長の陣内くんと次期番長最有力候補の星野さんのジャンケン一騎打ちでは星野さんが卑怯極まりない手で設定権をゲット。さてさてどうするどうなる!? 『演劇サークル』!! ご家族そろってご覧ください。それではそれでは、チャンネルは、そのまま!
「さぁ、どこで食べますか星野さん」
「どこがいいかな」
「なんで星野さんはわたしにタメ口なのかしら?」
そこは徹底! 年功序列や上下関係の厳しさは体育会系のものだけではない! むしろ陰湿会系の方が厳しい! 実力次第で多少緩くなる体育会系とは違うのだよ!
「どこがいいでしょうね……」
「星野さん、随分と息苦しそうね。ならチャンスをあげるわ」
「チャンス? ……ですか?」
「あなたが得意な口ゲンカでわたしに勝ったらわたしも素直に負けを認めて星野さんのタメ口を許すわ」
「……」
星野! 全力の熟考! 桜井と雨宮を呼び、マウンドでやりとりをする投手捕手内野手に。
「負けたらペナルティは……」
「ないわよ」
熟考。ペナルティないのに。
「やり、ます!」
「OKよ。権藤教授、いいかしら?」
権藤教授はなんだか嬉しそう。鬼畜お姉さんvs星野の口ゲンカ! 傍から見てるぶんには超面白そうだ。あのクソガキが蹂躙されるのだからな!
「全力は出すなよ、明星」
「わかってます。さぁ、星野さんからどうぞ!」
先攻・星野
「明星さんのそのヒヨコのエプロンと竹ぼうきは『めぞん一刻』のコスプレですか」
「『めぞん一刻』の音無響子さんのコスプレよ」
「ちょっと古すぎてキャラの名前まではわかんなかったですけど、まぁ、一般の認知度はもうその程度なんで、コスプレとも認識されないくらい古いですよ」
「そうねぇ。確かに舞台は昭和だし、響子さんはラムちゃんと違って口癖もないしトラ柄ビキニや角や電撃みたいにインパクトがないから、ラムちゃんほど知名度はないわねぇ。やっぱり若い子は流行り廃りに敏感ね!」
鬼畜お姉さん、しっかり攻撃を処理。
「だから星野さん、いえ、憂ちゃんのファッションはそんなに最先端なのかしら? ピアス、茶髪で首から上はチョイ不良系にしておいて、映画Tシャツにジーンズでまるでアメリカのオタクだわ! それでいてiphoneのカバーは真っ赤なロゴ入りでネスのストラップの見事な『MOTHER2』仕様! スゴイ! スゴイ斬新な組み合わせ! きっとまだ憂ちゃんぐらいしかそんなファッションしないわ! まさに時代の最先端! これから時代が憂ちゃんに追いつくのね! オタクのくせにスクールカースト上位のファッションに不完全な擬態、そういうギャップにキュンと来る男子はきっといるわ! スゴイ盲点! スゴイ最先端! いえ、最先端どころの話ではないわね。最先端がこれから憂ちゃんに追いつく、時代の先取り! 憂ちゃん発祥の新しいファッション!」
「……ありがとうございます」
こんな悔しそうな感謝の言葉初めて見た。
「でもきっと時代が憂ちゃんに追いつくわぁ。そのない胸も花粉への耐性の低さもみんな追いつくわよ、憂ちゃんに! きっと豊胸手術じゃなくて貧胸手術が流行るわぁ」
「まぁ、そういうコンプレックスも個性でカバーしていく時代ですから。いつまでも懐古趣味のコスプレはダサい」
星野、直接的な言葉を使いだし始める。ウルトラマンで言うとカラータイマー点滅状態だ。
「個性でカバー! そうね、いろんな趣味やファッションの選択肢が増えたからその組み合わせは無限大! 憂ちゃんはヤンキー×ギーク×オタクの道のパイオニア! スゴイわ! 輝いてるわ! ……まぁ、でもいくら最先端でも誰も真似しなきゃ発祥でも何でもないけれどね」
痛烈! 一閃! 誰が……! 誰がこの“鬼畜お姉さん”明星真琴の働きに文句を言わせようか! これぞ“鬼畜”! これぞ“裏番長”! これぞ明星真琴!
「……わたしの負けね。もうわたしのようないつまでも懐古趣味に浸っているような人間の時代ではないわ。番長と共に裏番長も世代交代の時期かもしれないわね。むしろ番長と裏番長を統一した超番長という新しい称号でもないと、この時代を先取りする天才星野憂様とは釣り合わないわ。完敗よ。あなたは今後、わたしにタメ口を聞いてもいいわ。むしろ今までごめんなさい。調子に乗ってたのはわたしの方だわ。自分が恥ずかしい! ……叱って! 星野さん、わたしを叱って! 常に時代を先取りする時代の寵児たる星野憂の力量すら測れずに今まで調子に乗っていたわたしを叱って! 好きなように罵って! でも、敗者に最後の情けをかけてほしいの。最後に星野さんの口から、わたし最先端だから! という言葉を聞かせて! そうすればわたしも古いものにしがみつかず、星野さんのように生きられるようになると思うの! さぁ、言って星野さん! わたし最先端だから! お願い! ほら、わたし最先端だから!」
バサッと白いタオルが舞う。桜井がタオルを投入したのだ。コイツのタオル投入のタイミングは常にベスト。顔を真っ赤にして何も言えない星野を雨宮がどこかに連れて行く。
「あら、まだ全力リミッター(※1)も解除されていないのに。でも全力を出したところで勝負はわからないわね。なにしろ、わたしは未だに『めぞん一刻』に出てくる今時の若者は名前も知らないようなキャラクターのコスプレをやってる古い人間だからー! わたしの全力なんて古い人間にしか通用しないかもしれないのにー」
※1全力リミッター 全てにおいてスペックが高すぎる鬼畜お姉さんは「料理」「ギャンブル」「高橋留美子トーク」以外で全力を出すことを大学から許可されていない。
語尾を伸ばして遠くまで聞こえるようにして追撃。これ、次期番長もうカムバック出来ないんじゃないかな。
まだ『ゴチ』が決まりませんね。いよいよ次回決まりますので、お楽しみにぃ!





