表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/146

【やめるんだ! 利き手はやめろ! ブルガリア!】第8話 驚くなかれ! 大学発見 その6

5thステージ 文学部


『驚くなかれ! 大学発見! 期間中演劇サークルの立ち入りを禁ず』


 文学部無血開城!




6thステージ 水学部


 狩野英考みたいな白シャツのホストっぽいヤツが白シャツとドレスの女を引き連れて、歌舞伎町を闊歩する全盛期の城咲仁みたいな大名行列でやってくる。


「いよっしゃ! 俺たちお水で! のし上がるぞ!」


「エェッイ!」


「のし上がるぞ! イェア!」


「エェッイ!」


「今夜あなたを逆指名、お水学部の黒影麗哉です」


 ピッとホストが挨拶。


「さすがっすよレーヤさん!」


「よしよし、メモとってるか恋太」


 カリスマホストの脇で舎弟っぽいやつが超メモる。一方お客様サイドは誰がフリーキック蹴るか相談するサッカー選手のようにハイジさん、円谷くん、鬼畜お姉さんが作戦会議し、キッカーは鬼畜お姉さんに。


「まぁカッコイイ! 『驚くなかれ! 大学発見!』が終わったら遊びに行きたいからこのメモに漢字で名前を書いておいてくれない?」


 ローソンのレシートとシャーペンを差し出す。しかし台がないのでシャーペンの筆圧だとレシートを破りそうになってしまう! しかしいい感じに力を抜くとシャーペンだと薄い!


「影と哉の間の字が見たことない字だわ。残念。これじゃあ誰だかわからないわ」


 そしてやっぱり自分の源氏名漢字で書けなーい! このスマホPCの変換社会においてのいきなりの無茶ぶり、カリスマホストの出ばなをくじく。


「女の子が増えてるな。よぉし! 口説くぞ! ドキドキしたら俺たちの勝ちだぜ!」


 ビシッ! と指差しポーズ。さっきからカリスマホストと言うより戦隊のレッドっぽい。


「さすが! 参考になりますレーヤさん!」


「お前ももうじき出来るようになるぜお前ら全員そうやって来たよな!」


「エェッイ!」


 そしてそのほかのお水学部はショッカーっぽい。


「まずはリーベルトさん。あなたのために真っ赤なバラを用意してきましたがあなたという花の前では霞んでしまう。でもあなた、僕のそばに来てください。もっと美しくなりますよ」


 リーベルトさん凡リアクション。


「褒められ慣れてないから逆にヒくし、でもあなた、からの言い回しが古畑任三郎だったので別にドキドキしないです。むしろ最初から古畑で来られてたら何かしらの悪事を見抜かれてるんじゃないかってドキドキしたんですけどねぇ。古畑以下」


 これでも笑っていなきゃいけない。それがお水の鉄則! いや、田村正和は正統派二枚目俳優だよ? でも古畑はさぁ。ストーキング捜査界の粘着とりもちメンタル破壊セロハンテープだ。個人的なベストバウトは古畑vs石坂浩二。


「そっちが先攻ってことだな?」


「先攻?」


「じゃあこっちは通称閃光の王子で」


「ボクかい?」


「またまた~。王子って単語でそれを自分と認識していらっしゃるイケメン王子様が何を~」


 ハイジさんが円谷くんのふくらはぎにキック。


「またボクかい? もうビンタはごめんだよ。ねぇ見てよ。まだ跡が残ってるだろ?」


 王子出陣! 一番近くにいたキャバ嬢に顔を近づけるグイグイ戦法。


「この子を口説いて見せればいいのかな?」


「やれるもんならやってみろよカス。その代りできなかったらお前にビンタするからな」


 カリスマホスト急に笑顔なくなる! 同性に厳しい!


「名前教えてくれるかな? あ、いや。名前より先にキミ、クレジットカードの限度額いくら?」


「えー、それ言わなきゃダメなんですかー? 円谷さんほどは稼いでないですよー。円谷さんはいくらなんですかー?」


 間延びしたお水口調で返すキャバ。


「ボクは――円」


 リアルにひく金額。


「えー、円谷さんそんなにカッコよくてお金もそんなにあるんですかー? モ~テ~そ~う~」


「お金を持ってると美女と付き合えるとは決まってないさ。『ドラえもん』は知ってるだろう? スネ夫くんチってお金持ちじゃない。でも、スネ夫くんのお母さんって美人かい?」


「それは……」


「つまりそういうコトさ。お金じゃないんだよ」


「や~ん、円谷さん面白いー」


「お金持ってもねぇ。あんまり派手には使わないよ。ゲーセンにももう通わなくなったし大学の学費も自分で払ってるしね。お金に困らない趣味も最近始めたんだ。硬筆書道だよ」


「硬筆書道?」


「ボールペン習字さ。名前を教えてくれない?」


桃栗(ももくり)三年(みつとし)です」


「桃栗三年っと」


 サラサラっと円谷くんがファミマのレシートの裏に達筆で書き上げる。


「相合傘でも描こうか? って、ここまでにしておこう。これ以上やるとマジになっちゃいそうだ」


「マジになっちゃってくださいよー」


「みちるちゃんなんかボクがマジになっても全然気にしてくれないのにさぁ」


「えー、じゃあ」


 パァン! カリスマホストのビンタ一閃!


「ふぅ、やっと止めてくれたね。これ以上深みにはまらせないようにしながら止めてもらうのを待つのはそこそこに……」


 パァン! 


「二度と来んな」


 演劇サークル、出禁! (28分ぶり3回目)

 ハイジさんが円谷くんの肩にそっと手を置いた。


「休日だったのにすまんな」


「別にかまわないさ」


「そう言ってくれるんなら引き続き頼む」


「でも次のビンタで帰るよ」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ