【やめるんだ! 利き手はやめろ! ブルガリア!】第4話 驚くなかれ! 大学発見 その2
「『驚くなかれ! 大学発見!』とは、大学の各地を巡り、とりあえず学歴埋めるためにこの辺で手を打っとくか、というようなバカ野郎共を食い止めるべく我らが母校のレベルの高さを見せつけてやり篩にかけるという企画です。全学部での大学アベレージ偏差値は約60だが下の方は45くらいもあるから、そこに入っておいてこの大学の素晴らしい環境に4年間寄生しようというクズ高校生を弾くぞ」
「ここまでの差別発言でだいぶそぎ落としたと思います」
「そしてこの『驚くなかれ! 大学発見!』ではみなさんにこのような心拍計をつけてもらいます。こばやっちゃんカモン」
「ハイただいま」
なんかカッコイイ腕時計大のメカを装着した小林氏がボードの裏から登場!
「えー、コレ」
ハイジさんがスマホの画面を操作し、何かを小林氏に見せた! すると
ビーッ
「ハイ、ビーッと鳴ったということは小林くんが驚いてしまいました。すると」
小走りで白頭巾に目玉模様の入った明らかに大学の権威を貶める格好の何者かが小林氏の前に立ち、頬に手相が残るくらいの強烈なビンタ! メガネを吹っ飛ばされた小林氏は層劇で尻もちをつき、打たれたところを抑えたまま混乱で無表情!
「我々に恨みを持った誰かがペナルティで何かしらの危害を加えにやってきます」
「ハイ」
「ハイ、リーベルトさん」
「女子でもですか」
「女子の場合は親族の男性の誰かに恨みゲージが蓄積していき後日という形になります」
「それもしわたしの親族に今男性が病気で苦しんでる米寿のおじいさんしかいなかった場合にはおじいさんに行きますよね?」
「そうだな」
「死んじゃいますね……」
「まぁ君のお父さんが元気だってことは今朝電話したから大丈夫」
「お父さんは大丈夫って言いました? あなたは後日数発危害を加えられる可能性があると言ったら多分大丈夫って言わなかったと思いますよ」
「娘を恨みな、と思う陣内一葉であった」
「陣内一葉は今、後に恨みを持つ誰か側に回る人物を作ってしまっているなと確信している良崎アンナであった」
「そういう訳で、まずは陶芸の窯を観に行きます。レッツ心拍計」
ハイジさんがテンション抑えめなのはこれのせいだったか。
1st ステージ 美術学部工芸学科
「ハイ、ということで窯に着きましたよーっと」
凡リアクション。全員かっこいいメカっぽい心拍計をつけられてるのでテンション上げられないのだ。
「ナビゲーターは……ハァ、明星真琴さんです」
「はい明星です」
ビーッ。
鬼畜お姉さんの名前を口にしただけでハイジさん鳴ったー!
「……? ッ痛あぁッ!」
ペナルティの白装束が来ないのでハイジさんがあちこち見回していたが急に額を抑えて仰向けに倒れる!
「大丈夫ですか?」
「いって……なんだコレ……え……吹き矢だ……」
ハイジさんの手の中に小さい三角形のなんかが。そういうパターンもあるのかよ。怖いな! 恨みを持つ人の危害!
「目に当たんなくてよかった。と、まぁ我々に恨みを持つ人にはこういう見えないところから吹き矢で狙撃なんてできる人もいます。そういうレベルの高い大学だということを忘れずに受験してください」
リアクション出来ない。
「それ3月にやってももう遅いんじゃないでしょうか」
「リーベルトさんそれは今言わないでおこうか」
俺たちって悲しい生き物だな。
「やぁやぁよく来てくれたね」
なかなかこっちが触れないので向こうからグイグイ来る。オシャレ甚平に手ぬぐいバンダナ、でもその下の髪は茶髪でピアスと典型的芸術学部……。
「芸術学部工芸学科陶芸コースの山村だ。よろしく」
「はい」
凡リアクション。別にお前のことが嫌いな訳じゃないけど俺たちはテンション上げたらなんか食らっちゃうんだよ。本当にすまない。テンション上げたら全力で危害加えに来られるほど恨まれてるんだよ。
「ハハ、大変だねその心拍計。話は聞いてるからそういう反応になってしまうのもしょうがないよね」
ウワ、いい人だ。それだけに辛い。
「芸術学部で陶芸なんてやってるとさ、気難しい職人気質か、意識の高いクリエーター気質かなんて偏見もあるけどさ、まぁ~チョットね。変わったヤツもいるけどみんな他と大して変わらない大学生さ。そういえば陣内くん」
「ハイ」
「頼んでたお皿、出来てるよ」
「いや、それ俺が頼んだんじゃなくて俺が頼んだって体で権藤教授が頼んだヤツだから」
おい、今のそれ本当のこと言わなくても別に心拍数上がらなかっただろ。今のはただイタズラに山村くんを傷つけただけだ。
「ははは、そうだったそうだった。ほい、自信作だ」
フツーにいい皿を出す山村くん。しかし我々に出来ることはたった一つである。そう、凡リアクションだ。
「……うん」
「……そうだね、違ったね」
バリーン! 何をしてるんだ山村くん!
「これは息抜きにやったヤツだったねしまった間違い間違い」
今の温和で常識人のはずだった陶芸家の唐突なバリーンをビビリのハイジさんと良崎が耐えたことは奇跡だ。そして山村くん、意識高い陶芸家だった!
「こっち……じゃ、なかった!」
バリーン!
「いやー、僕サッカーのサークルに入っててね! つい両手で持つとスローイングしちゃうクセがあるから。ってことで件の皿は……と」
三枚目の皿に触れた時点でのハイジさんの表情を見た山村くんはそのまま皿を両手持ち、前方に助走しながら皿を地面につけ、その皿を支点に前方に転回、体をバネにして皿を遠くにスローイン!
ヒュー……バリーン!
「あぐっ」
我々のはるか後方に飛んで行った皿が誰かに当たったようだ。
「今のは危険が伴うが長距離のスローが可能になるハンドスプリングスローというワザだ。何年か前にアイスランドの選手が使ったね!」
山村くんスッゲー! けどごめん! ……じゃないか。今の驚かしに来てただろ。だが我々に許された反応はただ一つ。凡リアクション。
「どれだっけ!?」
山村くんが完成済みの皿が並んでいる棚にハイジさんを案内するが既に声に余裕がない。
「これ……じゃないな、やっぱり」
ハイジさんが適当に手に取った皿をバリーン! さすがの山村くんもこれは見過ごせなかったようだ。何も言わずに顔を伏せたままハイジさんの胸倉をつかむ。反射的にハイジさんも山村くんの襟を引き寄せ、和装の二人が一触即発状態に!
「お前いい加減にしろよ何様のつもりだおい」
「てめぇこそさっきのふざけた曲芸は驚かせに来てただろこっちの事情が分かってんならふざけたことしてのはてめぇだろうがよぉオイ」
ギリギリ聞こえる音量でやりあってる二人だが、ハイジさん痛恨のミス! 怒りのボルテージを上げてしまった! ビーッ。
「……」
ハイジさんが周囲を警戒。
「うぉら」
山村くんがいったー! タイムリーに生まれた我々に恨みを持つ陶芸家が、美術学部所属の陶芸家が! 利き手でフック!
「二度と来んな」
唾吐かれた。





