【冬景色 寒くなければ いい景色】第3話 オーストラリア大陸縦断 その2
「……?」
プロレスバカップル(仮)、灼熱の大地で凡リアクション!
「暑い……」
「マジだった……」
『演劇サークル』、オーストラリアの大地に立つ!!
「海外発進出だな」
薄着のハイジさんがドヤ顔で袖をまくり始めるプロレスバカップル(仮)を眺める。
「水原、今何度?」
「35度です」
水原さんはオーストラリア説を信じていた。空港での待ち時間に夏服を用意していたのでもう着替えている。
「おかしいですよ。おかしいですよ陣内ちゃん。なんで年に2回も夏が来るんですか。早めに言ってくださいよ! 赤道跨いでるじゃないですか! なんでここは新潟じゃないんですか!」
「オーストラリアって言ったろお前バカか?」
「オオカミ少年ですよ! 今まで何度も騙されてきたからですよ! なんで嘘ついていいところで正直になるかなぁ!」
良崎さん、オーストラリアの大地に怒りの鉄拳!
「いつ帰る予定だ?」
「ん?」
「オーストラリアなのは分かったからいつ帰るか聞いてるんだ」
マスカラスマンはまだ平静。だがいつまで持つかな、その精神力。俺はもう正直ムリ。水原さんはもうまな板の鯉、小林氏は首脳陣なので知っていたようだ。
「フフ、サングラス買っちゃったさァ」
ハイジさんがドヤ顔でティアドロップの羽振りのいい釣りが趣味の昭和のスターみたいなサングラスをかけ、オーストラリアの灼熱の日光を反射させる。
「いつ帰るんだ!」
「縦断したらだ!」
「縦断?」
「オーストラリア大陸縦断3700km! 準備はいいかお前ら!」
3700……
「3700のスケールをまず知るぞ。ボードカモン」
小林氏がカバンから二つに畳んだ厚紙を取り出す。開くとオーストラリアの地図、その左下に紙が貼ってあり何かを隠している。オーストラリアに比べると紙はかなり小さい。まさか……。
「ホイっとドーン」
ハイジさんが紙をはがすとそこには弓なりの日本列島!
「えぇええ……」
良崎さん音を上げる!
「ちょっと待ってくださいよ。わたしたちが去年走破したのってこれだけですか!?」
良崎が親指と人差し指をコンパスにして青森から東京までの距離を測る。我々は昨年、北海道から東京まで高速道路なしで走破している。あれも相当にきつくハイジさんが最後風邪で寝込んだくらいだ。
「うん、それ大体1000kmくらいな」
「あばー!」
良崎が奇声をあげて膝から崩れ落ちる。水原さんがそっと良崎の肩を叩いて励ますが良崎まだ立ち上がれなーい!
「ただし今回は前回と違って速度出せるから。でも100km/h以上出すとタイヤがバーストするから」
「あぁあああ!」
「あとカンガルーが出ても立ち止まらないでくださいって書いてある。無理に避けようとするとハンドル取られて事故るらしいから」
「じゃあもうカンガルー何匹でも轢けってことですか!」
「それからいざって時の救助に備えて水いっぱい持てって書いてあるな」
ガイドブックを片手にハイジさん。
「俺にはやっぱりイマイチ3700がわからんな」
「ああ、お前は去年いなかったからな。まぁ、そうだな。日数にしてまぁ、急いで五日」
「五日だと?」
はぁーとマスカラスマンが悩ましげに片手を顔にかざす。
「ならさっさと移動しよう」
「そこが問題なんだよなぁ。俺たちの準備は整ってる訳だ。荷物もあるし水も買ったよ俺は。なのに手配した車が来ない! 来ねぇんだよオイ! レンタカーがよ!」
一番キレちゃいけないヤツが真っ先にキレやがった!
「もう車来てるはずなんだが来ねぇから電話したら野郎、HAHAHA! 何を言ってるんだボーイここはオーストラリアだぜ!? って言われたよ! てめぇらの当り前は日本じゃ当り前じゃねぇんだよ!」
「うるさいですよボケナス! 日本の当り前はオーストラリアじゃ当り前じゃないんですよ! そういうところにあなたはわたしたちにもわたしたちの家族にも何の断りもなく連れてきたんですよ!」
「フゥー……それは正直、俺が悪かったところがあるからそれに関しては俺が大人になろう……許してやるよ。だが辛い辛いだとずっと辛いままだから気持ちの切り替えは行っとけよ。な、いいじゃねぇか。多彩な動植物が息づく大地オーストラリア。素晴らしい風景が待ってるだろうぜ」
「……それもそうですね。コアラとかかわいい動物もいっぱいいますし、グレートバリアリーフとか名所もたくさんありますし。オペラハウス! いろんな生物が待ってるでしょうねぇ」
「でもまぁ通るところは基本的に砂漠だな」
「……そういえば授業で習いました。オーストラリアには黒い歴史があるって。黒人を虐げてきた黒い歴史……。今でも若者たちの遊びはアボリジニに発砲することだってうわさも聞きますから、人種差別には気をつけましょう。そして陣内! お前は見たこともないような虫にでも刺されて死ね!」
「クソガキが! 表出ろ!」





