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異世界転生~女に生まれ変わって幸せを掴んで見せる!~  作者: 炎獄
第一章【冒険者の道は辛い】
9/12

08:「現実の厳しさ」

今回も3000文字ぐらいなので短めです。

キリが良かったので切りました。

後、一応警告しときます。この話は不快に思われたり、気分を害してしまうかも知れないのでお気をつけて。

 身体が重い……息が苦しい……腕が痛い。


 目を覚まして思ったのはそればかりだった。

 薄く目を開ければ、そこは見知らぬ暗い洞窟の中。

 身体を起こそうと思ったけど、身体が動かない。

 駄目か、と諦めた時、幼い声が頭の中に響く。


『ユウキ起きた!?』


 可愛らしい小さな風の精霊、シルフが僕の顔近くに迫っていた。


「うん。身体の、あちこちが、痛いけ、どね」

『む、無理して喋らなくていいからね? 一応、怪我に効く薬草を取って来たし、そのパンパンに膨れちゃってる腕は固定しといたから』


 仰向けの状態の僕は、顔を下に向くと、左腕が横に曲がった状態でぶら下がっていた。マフラーを腕に乗せて、首に巻いている状態、まぁ所謂、腕を骨折した時によく見るあの状態のことだね。

 その腕には沢山の薬草が張られていた。恐らくこれが怪我に効く薬草なのだろう。

 胸や足、様々な所に薬草で固められていた。

 う~ん、薬草臭い。

 でも、シルフにはお礼を言わないと、これだけの薬草を取って来てくれた事、オークから助けてくれた事、僕の心配をしてくれた事を。


「ありがと、シル、フ」

『だから無理しなくていいから! 私は気にしてないし、ユウキに死んでほしくないし……』

「大丈夫、だよ。僕、は、いき、のこってみ、せる、から」

『その言葉が聞けて少し安心したよ』


 シルフの無邪気な笑みに、僕は微笑みながら、聞きたい事があったのを思いだし、シルフに問う。


「あの、二人は?」

『ッ! アイツら!? アイツらはユウキを置いてどこかに逃げてったよ! ホント信じらんない』


 可愛い顔が、怒りで少し怖くなってる。シルフが怒る理由は、わかる。それは誰だって見捨てられたら怒るよ。

 シルフはそれだけ僕の事を思ってくれていたんだ。僕の代わりに怒るぐらいには。

 けど、あの二人が僕を見捨てる事は覚悟していた。あのオークから逃げる時にね。

 僕は動けない状態、あの二人も少なからず怪我をしていた筈だ。しかも、オーク達が僕らを探しに森の中を徘徊している可能性は高い。

 そんな状況で、僕を見捨てるという選択は、残念ながらあってもおかしくはないのだ。


 僕は静かに首を横に振り、シルフに言う。


「許して、あげ、て」

『何でよ! アイツら次会ったら、絶対にけちょんけちょんにしてやる~~~』


 シルフは小さな拳をグッと握りながら唸る。

 僕はそれを困った笑みで見る事しか出来ない。今のシルフに言っても無駄そうだね。

 仕方ないと諦めた僕は次の質問する。


「じゃあ、オークの、時に、逃げると、きに、使った、魔法は、今は、使える?」

『う~ん、まだ無理そう。ユウキの魔力が回復していないから』

「そっか……」


 僕は小さく溜息を吐く。

 使えたらこのまま洞窟抜けて町に戻りたかったけど、やっぱりそう都合よくはいかないよね。

 残念だけど、他の手を考えるしかなさそうだ。


 目を瞑り、体力の回復を専念しよう。いまは。


「シルフ、また、眠る。なに、か、あった、時は、おこ、して」

『わかった。ゆっくり休んでね!』


 シルフの声を聞き、僕は目を瞑ろうとした時、何か大きく揺れる感覚がした。

 何か重いモノが歩いた時に揺れる、あの感じ……まさか!?


 痛い身体をムリヤリ起こし、僕は洞窟の入口を見る。




 ――そこには猪顔で、でっぷりとした腹を持ち、太い腕と足を持つ、オークが立っていた。

 僕は目を限界まで見開き、現実の厳しさに、悪態を吐きたくなる。

 なんでこう、最悪なタイミングで出てくるんだよ!


 オークはニタァ……と、あの時見た嫌な笑みを作る。

 焦りや恐怖が蘇る。

 身体の震えが止まらない。

 歯がカチカチと音を鳴らし、痛くてたまらないのに腕に力を入れてしまう。

 僕が恐怖に呑まれていると、シルフが大きな声で言う。


『大丈夫! 私がユウキを守る。守って見せる!』


 シルフはそう言うと、呪文を詠唱する。


『風よ! 敵を切り裂く刃となれ《疾風刃ウィンドカッター》』


 あの時ナンパ男に使った魔法だ。

 シルフの手から風が生まれると、オークの身体に風の刃が襲う。

 オークの身体に切り傷が沢山出来る。


 だが、それはあのナンパ男の様に吹き飛ぶ事も、傷つき倒れる事もなかった。

 そこには痛みに呻く姿ではなく、厭らしい嗤いをするオークしかいなかった。


『そ、そんな、あれが効かないなんて……!?』

 シルフの動揺に、僕も信じられず、我が目を疑った。

 破壊力は弱くないはずなのに、まさか、あの脂肪の塊が風を防いだのか? 呆然と見つめる事しか出来ない。

 もう、シルフに魔法を使わせる程の魔力が残っていない。

 体感でわかる。さっきよりも身体が重いのがその証拠。

 

 逃げる為の体力も魔力もない。

 抗う術は……最早、ない。


 ゆっくりと歩いてくるオークを、下から眺めている事しか、僕には出来ない。

 シルフが横で何かを言っている気がするけど、僕の耳には聞こえない。


 音が無くなった。

 痛みがない。

 なんでだろう。

 目の焦点が合わない。

 僕は何をされている?





「ブホォォォォォオオオ!!!!」


 オークの叫びが洞窟を支配する。

 それは歓喜か、それともいままで手こずらせてきた少女に対する怒りか? それを知るのはオークのみ。


 少女の腕を、足を押さえ、オークは少女の顔をその汚らしい舌で這わせる。

 まるで味見をしているかのように。

 鼻息荒く少女を見るオークの目は血走っていた。

 それは食欲なのか、それとも……肉欲か。


 オークは興奮していた。

 少女の身体に興奮していたのだ。

 少女の身体を優しく撫でる。壊れないように優しく、だけどそれはオークにとっては、だが。

 少女は苦しいのか、呻き声を上げる。

 それでも止まらないオークは、遂に自分の一物を外に出す。



 それでも、少女は動かない。

 その目から涙が零れる。

 けれど動かない。

 最後に呟いたのは。


「たす……けて」


 掠れた、涙声だった。

 オークはそれに気づく事もなく、少女を蹂躙しようとした時、洞窟の入り口から、男の雄叫びが洞窟に響く。



「アァァアァアァァアァァアアア!!!!」


 その男は、騎士の鎧をまとい、紅い髪を逆立たせた騎士……アルスだった。

 アルスは怒りの形相でオークの腕を片方切り落とし、そのまま強烈な蹴りでオークを横に吹き飛ばす。

「ブヒィィィィイイイイ!!??」

 オークは壁に身体を打ち付け、突然襲われた事に驚きと、腕を失った事に悲鳴を上げた。

「黙れ。糞豚が!」


 アルスは痛みに喚き散らしているオークに接近すると、首を叩き斬る。ゴトッと首を飛ばしたアルスは、死んだオークの事など気にせず、倒れて動かない少女――ユウキに急いで近寄る。


「ユウキ、頼む。これを飲んでくれ」


 アルスは腰に入れておいたポーションを取り出し、閉じられた蓋を開けてユウキの口に入れるが、ポーションの液体はユウキの喉を通らず、唇から地面に零れてしまう。


「くそ……すまんユウキ、許してくれ」


 アルスはそれだけ言うと、ポーションを口の中に含み、ユウキの唇に自分の唇を重ねる。

 その時ユウキの身体がビクッと震えるが、直ぐに収まり、為すがままとなる。


「これで……後は見る限り分かる所にポーションを掛けるか」


 アルスはそれだけ言うと、残ったポーションを腕や胸、足に掛けると、ユウキを背負う。


「アルス! ユウキは!?」

「無事……とは言えない。助けるのが後れた」

「い、生きてるよな?」

「生きてはいる。が、心はわからない」


 アルスの返答に、ガンツは手から血を出すほど握ると、囁く様な声で、そうか……と呟く。


「急いで帰るぞ。早く安全な所で休ませたい」

「あぁ、わかった。じゃあ行くぞ。洞窟の外にイルがいる」


 アルスは頷くと、二人は洞窟を出て行き、街へと帰った。

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