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異世界転生~女に生まれ変わって幸せを掴んで見せる!~  作者: 炎獄
第一章【冒険者の道は辛い】
4/12

03:「僕だってやれば出来るんです」

本日二回目の投稿です。

「ど、どうしようシルフ」

『大丈夫あの生意気そうな人間もぶっ飛ばしてあげる!』

「え!? ダメダメ、シルフ駄目だからね?」


 シルフの言葉に僕は即座に否定をし、シルフが攻撃しないようにお願いしていると、騎士様が声を掛けてくる。


「何を“一人”で話しているんだ?」

「え? 何を……まさか見えない?」

『ふふ~ん、私や精霊を見る事が出来るのはスキルに精霊魔法がある者だけだよ』


 得意げに胸を張って答えるシルフ。

 成程、精霊を見る事が出来るのは限られた人なんだ。

 え? そしたらこれどう説明すれば……。


 やばい!?


 状況が悪い事に、冷や汗をかく。

 騎士様にどう言えば信じてくれるか、悩んでいると、騎士様が剣を構えたまま近づいて来る。


「抵抗するなら斬る。大人しく投降するなら命は取らん。どうする?」


 騎士様の言葉に、僕は観念して、投降する事にした。もうそれしか道なさそうだし。シルフに小声で攻撃しないように注意し、口を開く。


「は、はい。抵抗しないので捕まえて下さい」

「む、そうか。潔いな」


 僕が無抵抗を示すと、騎士様は関心した顔で頷くと、手錠を腰の袋から取り出し、僕に手錠を掛けようとした時、横から慌てた様子で近づくものがいた。


「ちょ、ちょっと待ってくれ騎士様!」

「む?」

「その娘、そこで今、倒れている男に絡まれて困っていただけなんだよ。嫌がる娘を強引に連れて行こうとしていたのをあたいは見たんだ!」


 見知らぬ女性が僕の弁護をしてくれていた。しかも必死に、騎士様は困惑した顔で僕を見つめ、そこで一度考える仕草をすると、僕に手錠をするのを止めると口を開いた。


「事情を聞こう。まずは騎士団支部に来てもらう。そこのお前も来てもらう。いいな?」


 僕とさっき僕の弁護をしてくれた女性は頷くと、騎士様は部下らしき他の騎士様に倒れて動かない男を運ぶように命令すると、一度僕の方に振り返る。


「ついて来い。案内する」


 それだけ言うと早足で進んでいった。

 僕は慌てながらもついて行き、隣で僕同様連行されている女性に、僕は申し訳ないと思いながら小さな声で謝罪する。


「すいません。僕のせいで」

「あたいは気にしていないさ。それよりも、見ていたのに助けらなくてすまないねぇ」

「それこそ気にしないで下さい」


 僕は気にしていないと、笑みを作る事で否定すると、彼女はもう一回だけすまないねぇと言うと、自己紹介をしてくれた。


「あたいはブレハ、アンタの名前は?」

「僕はユウキって言います。よろしくお願いしますブレハさん」

「そんな畏まる事ないさ。ブレハと呼びな」


 クスクスと笑うブレハさんはホントに綺麗で、豪快な人なんだな~って思う。

 茶色い髪を後ろで縛っていて、所謂ポニーテールというやつで、身長も高く、僕が百六十あるかないかなのに、ブレハさんは百八十あるんじゃないかな? すごく高い身長。しかも顔は綺麗系で、シュッとした顔、たぶんモテてるんだろうな~なんて勝手に考えている。


 あ、それと、僕が苗字を名乗らないのは、貴族と間違われない為、この世界にも貴族は存在するし、一般的な家庭では苗字は存在しない。僕は貴族と間違われるのは困るから名乗っていないんだ。

 まぁもう一つ理由はあるんだけどね。

 あの義親の苗字を名乗るのが嫌なのもある。

 もう、忘れたいから……。




 それから、僕とブレハさんは無言で騎士様についていくと、大きな建物が見え始める。

 どうやらそこが騎士団支部らしい。

 同じ騎士服を着た人たちが出入りしていることからの推測だけど、間違ってはいないだろう。

 僕達は騎士団支部の中に入ると、騎士様が事情を手早く説明し、個室に案内された。


「まずはそこの椅子に座ってくれ。話はそれからだ」


 示された椅子に僕とブレハさんが座ると、騎士様は口を開ける。


「まず、自己紹介からだな。俺はカルヴァーン王国騎士団守備隊隊長アルス・カーターだ」

「僕はユウキといいます」

「あたいはブレハだよ」

「うむ、自己紹介はこれで終わりだが、次は事件の詳細を聞こう」


 アルスさんの言葉に、僕は頷き、事情の説明を始めた。





 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




「ふむ……しつこく絡まれた挙句、強引に連れ去られようとした時に風の精霊に助けられたのか。それは大変だったな」

「信じてくれるんですか?」

「証言者がいるからな」

「良かった……ブレハさん助かりました」

「なに、当たり前の事をしたまでさ」


 惚れ惚れするほどの笑みで言うブレハさんに、僕はちょっと見惚れていると、アルスさんがワザとらしく咳を吐くと、話し出す。


「ユウキに罪はないという事になった。自己防衛のためという事になるからな。しかし、精霊魔法を扱うのか。珍しいな。エルフでもない者が精霊魔法を扱うのは」

「え? エルフしか精霊魔法使えないんですか?」

「いや、エルフが比較的に多いと言うだけの話しだ。人で精霊魔法を扱うのはごく少数なのは本当だがな」


 そうだったんだ。まぁイメージ的にエルフの方が精霊魔法使ってそうだもんね。

 僕が一人で頷いていると、ブレハさんが突然大きな声で叫ぶ。


「あぁ!? 酒場の事忘れてた!?」

「ど、どうしたのブレハさん?」

「実はあたい、あの時酒場に向かっていたのさ。そこでウェイトレスとして働いているんだけど、あ~絶対ドヤされる……」

「ぼ、僕も一緒に謝って事情も説明するので大丈夫ですよ」

「ほ、ホントかい?」


 さっきまで堂々としていたブレハさんが、今では目に涙を溜めている姿はかなり破壊力があるよ。


 可愛すぎる……!!


 心の中で悶絶していると、アルスさんが声をかけてくる。


「それなら俺も一緒に行こう。これから昼休憩だからな」

「え? いいんですか?」

「俺が連行した責任もあるしな。その事の説明は俺がする。ついでにそこで昼ごはんが食えれば俺はいい」

「守備隊の隊長は良い人さね! それなら早速行きたいんだけど、いいかい?」



 ブレハさんの言葉で酒場に行く事になった僕達は、騎士団支部から少し離れた場所にある酒場に来た。



「ここがあたいが働いている酒場さ」


 ブレハさんが酒場と思われる建物に指をさして言った。

『ダサいわね』

「こら、シルフそういう事は言わない」

 シルフが失礼な事を言ったから注意したけど、僕もちょっと失礼な考えはしてた。


 その、建物は古臭いが、別に悪いとは思わないんだ。何というか、雰囲気がいいのかな? 新しい店とかだと気後れするけど、失礼事だけど、古臭いと気後れしないでしょ?


 僕が建物を観察していると、ブレハさんが先に行ってしまっていて、僕は慌ててその後を追う。

 その僕の後をアルスさんが付いて来る感じで酒場の中に入ると、忙しいと一目で分かるほど人が混んでいた。


「マスターすまないね! 遅れたよ!!」

「ブレハ!! おめぇなんでこんな遅れやがった」


 強面のおじさんが怒鳴り散らしながら料理していた。あの人がマスターなのかな。

 すごい怖い……。

 内心ガクブルだけど、僕は勇気を振り絞ってマスターと言われた人の所まで向かい、謝罪した。


「すいません! 僕のせいなんです」

「んあ? なんだおめぇ、つうか、こりゃどういうことだよブレハ、騎士様も一緒とはよ」

「その事は後で説明するさね。今はこの状況をどうにかしないといけないさ!」


 そういうと、ブレハさんが手早くマスターが作った料理を持つと、客の前にドンドン置いて行く。

 その姿は手馴れていて、客も先程まで文句を言っていた人も満足そうに目の前に置かれた料理を食べている。

 す、すごい……。


 僕が感心しながらその現場を見ていたけど、直ぐにこのままじゃだめだ! と、自分に言い聞かせ、マスターに声をかけた。


「あの! 僕もお手伝いします。ご迷惑をお掛けしましたので」

「おう、手伝ってくれるのはありがたいが、出来るか?」


 マスターの顔が頼りなさそうな感じが滲み出ている。

 少しムッとした僕は出来ている料理を取り、マスターに、料理を注文した客はどこか聞き、危なげなく皿を持っていくと、笑顔と共に客のテーブルに料理を置く。

 その時何故か客が顔を赤くしていたけど、僕は気にせずマスターの所まで帰る。


 他にも注文してくる客の対応、客がいなくなったら皿を回収と、していると、マスターが驚いた顔で僕を見ていた。


「こりゃ即戦力だな」

「あたいも驚いたよ」


 二人の反応に気を良くしていると、注文する客の中にアルスさんがいた。


「すまない、このアルドル風パスタとエールを一つ頼む」

「畏まりました。料理が出来るまで少々お待ちください」


 僕がそう言うと、後ろからマスターが大きな声で響く。


「ユウキ! もう手伝いはいいからそこの騎士様と食事してろ。後は俺達で十分だ」

「そうそう。ユウキはそこでゆっくりしてて」


 二人の言葉に、僕は渋々ながら頷くと、マスターとブレハが苦笑を零していた。


「じゃあ僕もアルドル風パスタってのをお願いします」

「あいよ!」


 マスターは答えると料理に取り掛かる。

 僕はアルスさんと対面になるように座ると、アルスさんが口を開く。


「ユウキは接客ができるのだな」

「えぇまぁ、やっていた時期が僕にもありましたから」


 照れくさくて下を向きながら言うと、アルスさんが顔を背ける。

 僕はそれに首を傾げていると、料理がテーブルに置かれていく。


「ほい、これがアルドル風パスタ、それと隊長さんにはエールね」


 ゴトッと置かれたアルドル風パスタは、白いソースがまんべんなく掛かっていて、キノコや見た事ない野菜が飾られていた。

 匂いも香ばしく、食欲をそそる。

 僕は手を合わせ、頂きますと言うと、アルスさんが首を傾げる。


「その頂きますとはなんだ?」

「あ、これは僕の母国である習慣の様なものです。食事に携わってくれた方、そして食材に感謝を示す行為です。変ですか?」

「いや、珍しいと思ってな。ふむ……俺もやろう」


 アルスさんが僕と同じように手を合わせると、頂きますと一言、僕はそれを笑顔で見ていると、アルスさんが照れいるのか、顔を赤くしながらも目の前の食べ物を食べいく。

 僕もフォークを手に、パスタをクルクルと回してまとめ、口の中に放り込む。


「ん~……美味しい!」

「これは美味いな」


 二人同時に同じ感想が口から出る。

 その事に二人して笑っていると、横から冷やかされる。


「あらあら、良い雰囲気さね。ユウキ」

「え!? あの、その」

「くぅ~可愛いよユウキ!」


 僕が顔をリンゴの様に真っ赤にしていると、ブレハさんが抱きついてくる。


「わぷっ!? ちょ、ちょっとブレハさん危ないよ」

「まぁいいじゃないか。それに可愛いユウキが悪いさね」

「な、何を言ってるんですか……まったくもう」


 大人な女性のブレハさんが子供の様にじゃれてくる姿に驚きはあったけど、それよりも仲良くなれた事が嬉しくて、頬が緩んでしまう。


「はぁ~ユウキの可愛さは異常さね。ね、隊長さん?」

「む! う、うむ、そう、だな」

「なんだい歯切れ悪いねぇ……好きになったのかい?」

「ッ!!」


 ブレハさんがアルスさんの耳の近くで何か言った瞬間、アルスさんが彫像の様に動かなくなる。

 え? なに言ったのブレハさん。


「あぁ……隊長さん“そういった”経験ないのかい」


 ブレハさんが呆れた顔でなにか意味深な事を言っているけど、僕わからないんだけど、僕が聞いても、ユウキはそのまま純粋に生きてればいいとか、アンタは知らなくてもいいとか、ちょっと僕を子供扱いし過ぎな気がする。



 僕はその後ずっとムッとしたまま過ごし、アルスさんは頭を抱えたままブツブツと何か言っているしでかなりカオスな状況、けど、それを楽しんで見ているブレハさんは凄いと思いました。


『つまんな~いねぇ~ユウキ~~』


 シルフごめんね。忘れてたんじゃなくて喋ったら僕が変人に見えちゃうから勘弁してね。

 酒場から出るまでシルフのつまんな~い、という声は続くのであった。

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