カッパライダー
過去を振り返っていた輝は、3四朗の待つ洞窟に戻った。
二人は焚き火に当たり、今後の話をした。
「もう一度整理しよう。竜史が中東を消滅させ、新たな国の太陽騎士団を造ってから3ヶ月がたった。この期間竜史は動けなかったのは、太陽騎士団の組織作りや、サンライトキャッスルの建造もあるが、間違いなくサンライトのエネルギーの使い過ぎによる体力低下だ。だが、今はあれから3ヶ月立ち、竜史の中で夜天光が馴染んできた頃だろう。すでに力も戻っているはずだ。早めに始末しないと大変な事になる。ただ、問題は竜史だ」
固い顔をした輝きを、3四朗は見つめた。フッと焚き火に小枝を投げ、
「やっぱ竜史を救い出す事は難しいっていう事か?」
「あぁ……ここまで早く全ての事が運んだ原因は夜天光ではなく竜史にある」
「あの竜史に……か?」
「そうだ。竜史の力を夜天光がここまで引き出せるのは、竜史自身が戦いを望む心があるからだ。奴も普段は大人しい顔をしていたが、根は男だったて事さ。過去の戦いの最中の竜史の顔を思い出せば、それは明白だろう」
「……そうだな。確かに3四朗の言う通りだ。竜史は戦いを楽しんでいる所があった……。あの強力な力は、竜史が望んで使っているからこそ中東を消滅させるだけの力を発揮した」
鬼瓦学園時代の、過去の戦いの中の竜史の表情を思い出した3四朗は、竜史は誰よりも戦いを嫌っていたが、誰よりも戦いを楽しんでいた矛盾を思い出していた。パチパチッ……という焚き火の音が、二人の間で存在を訴える。輝はもう一本小枝を投げ込み、3四朗を見つめた。
すると、3四朗は笑っていた。
「……クククッ……ハハハッ!」
「……?」
その3四朗を見て、輝は不振な顔をした。
「面白くなってきたじゃないか。戦いを楽しんでいた竜史の力を鬼瓦の亡霊・夜天光が利用する……これは鬼瓦史上かつてない戦いになるな。サンライトの力で俺達を燃やし尽くしてみろ、夜天光。鬼瓦に利用された恨みだかしらんが、鬼瓦に仇なす者は全力で排除する。サンライトキャッスルに攻め込む明日が楽しみだぜ」
突如立ち上がった輝は3四朗の隣に座り、虚ろな目をした。
「明日こそが本当の戦いだ。あれだけの城だ、侵入・攻略共に難しいだろう。明日が今生の別れになる可能性がある……」
「輝……不安なのか?」
「あぁ……」
「――!」
3四朗の身体を引き寄せ、輝はキスをした。
少しの間、お互いを強く抱きしめ、二人はそのままでいた。
そして、輝はそのまま3四朗を押し倒し焚き火の火を消した。
「おっ、おい、輝?」
「3四朗、黙っていろ……」
「ちょ、まっ、どこを触って――あっ……」
そして、少しずつ夕日は落ち、夜になった。
星が夜空を満たしていた。
※
「ふう……何であんな時に尿意をもよおすんだ。あぁ、くそっ……」
ため息をついた3四郎は、輝が寝ている洞窟に戻った。途中、輝とすれ違い、
「どうした?」
「トイレに行っていた」
「トイレはねーぞ」
「洞窟の中でするわけにはいくまい」
「匂いがこもるからか? 気にせずしろ。俺も気にせずする」
「阿呆! 俺は外でする。覗きに来るなよ」
「へいへい」
あの後、3四郎は良い所で尿意をもよおし、外に用を足すはめになった。
戦いとは違う緊張からか、眠る前にまた尿意をもよおした3四郎は外に出た。
3四朗は洞窟の外に用を足しに行き、輝は洞窟の奥で眠りについた。用を足し終えた3四朗は、昼間とはうってかわって冷たくなった岩肌に寄りかかり、空を見上げた。星ひとつ無き空が、鋭利な三日月が目に痛い。
瞳を閉じ、この砂漠と一体化するように身体中の感覚を大地に委ねた。頭がリアルになると共に、精神の疲労が緩和されていく。中東の消滅と太陽騎士団の登場、そしてサンライトの能力を持つ太陽竜史の姿をした夜天光――。
「ふう……」
これまでの日々を思い、突如おもむろにマントを翻し、地面の砂に身を潜めた。
「くァ~ッ!」
変な奇声を上げる素肌にライダースジャケットを着た大柄の男が、ごく当たり前のように夜の砂漠を闊歩していた。見事にそろった前髪をいじりつつ、また奇声を上げる。
ゆっくりと岩肌の後ろに移動した3四朗の表情は、固まっていた。
(奴は、田村茂……カッパライダー!)
その男は、鬼瓦ファミリーの実験体ロストナンバーズの田村茂こと、カッパライダーだった。自己進化を驚異的なスピードで繰り返す生体兵機であり、その力で鬼瓦を脱走し、追撃者をことごとく葬る怪物だった。
そして、その男は――。
(竜史のライバルのカッパライダーが何故ここに? 不味いぞ……あんな化物と戦っていたら、命がいくつあっても足らん)
ザッザッと足音を立て、カッパライダーは闇の中を歩いていく。
更なる奇声と共に、カッパライダーは右腕を大砲に変え、緑色の閃光を放った。
「幕々(ばくばく)としてきやがったぜ……」
青ざめた顔の3四郎の座る地面の砂は、重く湿っていた。
「とんだ戦場になってきたな」
「?」
口元を笑わせたまま、岩影から輝は現れた。座るのに手頃な岩の上に座り、
「輝。静かにしろ」
「大丈夫だ。奴はもう走って遠くの方へ消えた」
その言葉を聞き、3四朗は安堵した表情をした。
ふーっと輝は息を吐き、
「着替えは無いんだから、漏らすなよ」
「? あっ……」
「明日は、オムツでもするか?」
「五月蝿いーっ!」
その後、輝は十分ほど3四朗に追い回された。
そして、この勢いのままサンライトキャッスルに攻め込もうかという話になったが、ここは明け方まで休み体力を整えてから攻め込もうという話になり、二人は洞窟に戻り、眠りについた。
見事な三日月が、サンライトキャッスルを照らしていた。
※
サンライトキャッスル内部・司令室。
こには、デスカールと呼ばれる少女が城のコントロールを司るタッチパネルを叩き、バリアシステムの確認と、内部のセキュリティ機能の確認をしていた。
「バリアにエネルギー反応? この閃光はカッパの力。アイツだけとは限らないわ。3四朗達は必ず奇襲をかけてくる。この城にいれば余裕よ。……といっても、城の守護は夜天光が生み出したシャドウの兵隊達だけじゃ不安だからね。一応アタシのアレも配置させておこうかしら。警戒レベルレッド発令! さぁ、どこからでもかかってらっしゃい!」
そう言った、サンライトキャッスルの開発者、デスガールは城に警戒警報を発令し、自身はモニターに映るであろう外からの侵入者達を待ち構えた。




