ナーコVSビジー 星史朗VS夜天光
「ブリブリブーッ!」
「げはっ!」
ナーコのダークネスムーンの直撃を受けたビジーは空中で堪えた。
黒い煙が晴れ、片翼となった翼をはためかせる。
「ケッ! なんて女だ。このビジー様がパワー負けするなんて」
「アンタ、アタシなめてるでしょ? その慢心が自分の足元をすくうって事に気が付かないの? ブー」
ぶるぶっと唇を震わせ、唾をはく。
カチン! 頭に血が昇るビジーは、
「ケッ! 黙れ! ライトニングウイング!」
「つまらない男……」
何の感情もない言葉と共にナーコは消えた。
ズボボボボ! ビジーの白い羽根が地面に突き刺さり爆発する。
その一点を見つめるビジーは、
「どうだ……俺の……?」
突如、自分の身体に重さを感じる。それは、人一人分の重さだった。
「こんにちは」
「ゲッ!? テメー!」
空中にいるビジーの背中にはナーコが乗っかっていた。
首筋には、ダークサイズが突き付けられている。
ゴクリ……と唾を呑むビジーに対し、
「終わるわよ」
「ケッ……翼はやるよ」
微かにビジーの首が切れた瞬間、ナーコの乗っかっていたビジーの片翼が爆発した。
「けはっ……」
直撃を受けたナーコは砂の上に落下する。
その真下では、両手の甲に羽根の形をした短剣を仕込んだビジーが待ち受けていた。
「ライトニングカッター!」
というビジーの声と共に、ナーコのダークサイズが動く。
「何!?」
「隙を作る為にわざとアンタのつまらない攻撃を受けたのよ! ダークネスエンド!」
「ふざけんなーっ!」
刹那――。
ビジーの視界にナイツが映った。
ダークネスエンドは、ビジーの目の前のナイツに決められた。
その場所の刻が一瞬止まる。
「なっ……!」
技を放つナーコも驚きを隠せない。
「ナイツ? どけぇ!」
ドカッ! とビジーの蹴りを受け、ナーコは吹き飛ぶ。
そのナーコを輝が受け止める。
「……ナイツの野郎。俺にとどめの一撃を入れようとした時、ビジーのピンチを悟って、お前とビジーの間に入りやがった。とんでもねぇ野郎だ」
「敵を倒すチャンスを捨ててまで仲間を助けるの……? 盤上騎士団……何て奴等……」
咄嗟の気転と仲間を思うナイツの行為に二人は驚愕した。
倒れるナイツはもう息をしていない。それでもビジーは泣きながらナイツを揺さぶり、叫ぶ。
「テメー、ナイツ! 死ぬんじゃねーよ! テメーがいなくなったら誰が俺とポーンに突っ込むんだ……。クイーンやルークはどこか甘ぇ……オメーは俺達盤上騎士団の裏のリーダーだろ! 起きろっ! 起きねーとロリコンって事バラすぞっ! 起きろよロリコン!」
そのビジーに輝とナーコは迫る。
ビジーは二人の殺意を感じた。
「……ケッ! そうだな、ここは戦場。悲しむ場所じゃねぇ。ロリ……いや、ナイツよ俺に力を貸してくれ……」
二人に振り向いたビジーは両手のカッターを構え――。
「うっ……」
「え……?」
輝とナーコの間に何かが通り過ぎ、二人は倒れた。
ビジーは天を見上げ泣いていた。
その天には白くまばゆい城が当たり前のように存在していた。
※
(この一撃で夜天光の謎を解く!)
星史朗は、夜天光の力が弱まった事を察し、両手の魔力で一気に仕掛けた。
「ブラックホールクラスター」
丸く歪んだ黒い大玉が周囲の物質を呑み込みながら進む。
夜天光にも対応するように技を放つ。
「ホワイトホールクラスター」
白く太い閃光が光った。
(やはりそうだ。この技は親父の……)
苦笑する星史朗は確信を得たようなスッキリした顔となった。
二つエネルギー体がぶつがり、星史朗のブラックホールクラスターが競り勝つが、星史朗の興味はそこにはなかった。ブラックホールクラスターは天へと上昇し、白いバリアのようなものでかき消された。
バリアを張るのは天に浮かぶ白い城から発生するものである。
「……夜天光。私との戦闘中にこんな城を建造していたとはな。これが貴様の切り札か?」
「そう、この天に浮かぶ城は夜天城。この世界に光をもたらす白き城だ」
歯ぎしりをする星史朗は、腰の後ろで手を組み勝ち誇る夜天光に恐ろしさを覚えた。
※
竜史とポーンは流れ落ちる汗を拭いながら相手を見ていた。
技と技、力と力はほぼ互角。どちらが先に心が折れるかの根性勝負になっていた。
二人の虚ろになった瞳に、ビジーの姿が映った。
「ビジー……? 他の皆は……」
「ビジーじゃねぇか! 他の皆は?」
竜史とポーンは二人して同じ事を言った。
天を見上げるビジーは、
「あの白い城。あれが俺達の住処になるのか……」
ドサッと白目をむくビジーは倒れた。
驚く竜史とポーンは周囲を見る。
仲間達は倒れ、勝負はついていた。
頭に、不快な何かを感じる。
そして、頭上の悪夢に気付いた。
『!』
「気付いたか竜史。影も気配もないからわからなかったが夜天光の奴、あんなものを造ってやがった。ここが橋頭堡だぞ……!」
「まさかあんな城をいつの間にか造っているとは……あの城で世界を破壊する気なのか? なんて力なんだ……」
回復用のラブローズを腕に刺しながら現れた3四朗に竜史は答えた。
そして、星史朗も現れる。
「奴と力比べをして、動きを止めているつもりがこちらの動きを止めていたとはな……。皆を集めろ。あの城は一点集中攻撃じゃないと突破出来ない」
3四朗と竜史は頷き、輝とナーコ、幻覚を連れてきた。
いつの間にかポーンも仲間達を集めていた。
そして、天空闘技場に夜天城と一体化した夜天光の声が響いた。
「諸君、これが私の真の姿である夜天城だ。この城を象徴とし、星徒は悪しき者に制裁を加え世界を浄化する。まずは鬼瓦、君たちから浄化する。見せてもらおうか、鬼瓦の折れない心とやらを……!」
その城は正に、悪魔を思わせた。
白く発光したポーン達盤上騎士団は夜天城の方へ吸い寄せられるように飛んで行った。
すると、夜天城から白い羽が舞い散り始めた。
トンガリ帽子を脱ぎ捨て、新聞紙のステッキを横田は構え、
「私が極大魔法であの城の制御を奪う……」
「無理だ。あの城には国会議事堂と同じアークフィールドが張ってある」
「! 何故!? アークフィールドは鬼瓦の血筋だけのものなのにそんなものあるわけ……」
「あるのさ」
星史朗は敵である夜天光について話した。
「議会の時は確信が持てなかったが、この戦いで確信した。鬼瓦の亡霊・夜天光は私の父親……鬼瓦ファミリー創設者の鬼瓦元史朗だ」
その場の全員は驚愕した。
鬼瓦ファミリー全員が唖然とする中、白い羽根は爆発し始め、白い砂を散らした。
(この戦い勝てるの? 勝てるとしても得られるものは何? こんな身内の争いで……)
そう思う横田が星史朗の表情を見つめる中、星史朗は言う。
「我々が勝つか、夜天光になった鬼瓦元史朗が勝つか……。どちらにせよ、俺達鬼瓦ファミリーの分岐点だ」
グシャと煙草のケースを握りつぶし、星史朗は夜天城を見上げた。




