最終話 親睦会にて…。
~前回のあらすじ~
部長の、頼りなさに入部をためらっていた伊藤を説得できたイベント部は、正式な部活としてスタートを切ることとなった。部室は顧問の犬井が探してくれることになり、五人は帰宅することになる。ただ、まだお互いのこともあまり知らないので、親睦会と銘打って、寄り道をすることになった。
「ここは普通に、駅前のコーヒーショップにしようよ。」
「いや、商店街の駄菓子屋にしようぜ!そんな遠くないし、何より安い!」
「隣町になってしまうが、おいしい紅茶を出す喫茶店があるんだ。電車に乗らないといけないが、落ち着いた雰囲気で話し合いにももってこいなんだ。」
「俺の家でよくないか?金かからんし。バカが騒いでも迷惑かかりにくいし。」
「それって誰のことだ!」
「反応したってことは、自覚はあるんだね…。」
各々好きなことを言って、まとまる気配がない。そんな中意見を言えずにいた田中が、おずおずと提案する。
「あの…。私のおばさんがこの近くで、小さいですけど喫茶店開いてるんですよ。みんなが嫌っていうなら、全然、別のところでも構わないんですけど…。」
真っ先に反応したのは伊藤だった。
「それは本当か!?私はすごく興味があるのだが、先輩方はどうだ?」
「僕もどんな店か、興味があるね。二人はどうだい?」
結城はすぐに同調し、山本と吉田に意見を聞く。
「お前らがそんなに行きたいならそこでもいいぜ。」
「俺は別にどこでもいい。」
二人とも特に嫌がる様子もなかったのでその店に行くことになった。
大きな通りから少し離れた場所に、その店はあった。何も知らなければ見落としてしまいそうだが、小さな看板が控えめにここが喫茶店であることを主張している。
「いらっしゃいませ…。って、香織じゃない!久しぶりね。お連れの方は友人かしら。」
店に入ると、まだ二十代と思われる女性が五人を対応する、ほかに店員らしい人は見当たらない。
「その顔は…君たち、おばさんって聞いてたのかな?香織、お姉さんって呼ぶように昔から言ってるでしょ?」
どうやらその女性は『おばさん』という単語に強い嫌悪感を持っているようだった。
「だって、説明がややこしくなるんだもん。」
「まあ、血縁上は叔母さんだからあきらめも必要かね…。そうだな、そこのテーブルを使って。椅子はもう一個隣から運んでね。」
各々、席に着き注文をしてところで吉田が仕切り始める。
「まずは、改めて自己紹介から始めようか。俺は部長の吉田和輝趣味はスポーツ観戦で、嫌いなものは勉強全般。こんな感じで頼む、趣味がなければ特技や好きなこと、なんか一つは言えよ?次は副部長。」
「小学生みたいな項目だよね…まあシンプルでいいけど。僕が副部長の結城耕祐です。趣味はアニメ鑑賞、嫌いなことは人前に出ることです。」
「ちょっと質問いいか?」
伊藤が気になったことがあるようで、場を仕切る吉田に尋ねる。
「質問はあとにしよう。次山本な。」
「広報担当の山本辰也だ。好きなことは寝ること、嫌いなものは面倒事。次は、田中?」
自分に振られるとは思ってなかったようで、少し慌てながら田中は自己紹介を始める。
「田中香織です。好きなのは、あまり上手じゃないけどお菓子作りです。嫌いなのは、辛い食べ物ですね。」
「最後が私か、では改めて。私は伊藤聡美、好きな物は紅茶だ。嫌いというか、これは苦手な物なんだが、虫とか、は虫類は苦手だな。」
「じゃあ、一周したし質問タイムと行こうじゃないか。まずは、俺に質問がある奴いないか?」
張り切って、質問タイムに切り替えた吉田だったが、誰の手も上がらない。不毛な時間が過ぎる。すると吉田は少し寂しそうに質問される対象を変える。
「結城に質問のあるやつ。はい、伊藤。」
真っ先に手を挙げた伊藤が質問をする。
「先程自己紹介の時に、人前に出ることが嫌いと言っていたが、なぜイベント部の副部長になったのだ?」
「山本君に押し付けられたから、としか言えないね。」
山本のほうに視線をやりながら結城が答える。そんな結城に伊藤は質問を重ねた。
「嫌じゃないのか?」
「部長ほど前面に出るような立場でもないし、これを機に少しでも苦手が克服できたらいいかなって思ってたりもするんだよね。」
結城なりに前向きに、副部長という役職へ向き合っているようだった。
「他に質問がないなら、山本への質問タイムに移るが?」
田中も山本も、特に質問はなさそうだった。
「じゃあ、山本に質問のあるやつ。」
誰も手を上げる気配がない、吉田はどことなく安心した様子で場を進めようとする。
「質問無いんだったら進めるぞ?次は田中か、結城どうぞ。」
手を上げていた結城が田中に問う。
「田中さんはどうしてイベント部に入ろうと思ったの?」
田中は、緊張した様子で答える。
「それは、山本さんに勧誘されたのと、あとプレゼンを聞いて、イベント部に入ったら、私でも変われるかもしれないと思ったから…です。」
「田中、俺からも質問いいか?」
いきなり、大音量で質問されて田中は驚きつつもうなずく。
「山本に、いつどこで勧誘されたんだ?俺の聞き取り方が間違ってなかったら、プレゼンより前に勧誘されたんだよな?」
「プレゼンの前日に保健室で勧誘されました。」
「宮野にプレゼンの相談した時に紹介されたんだよ。宮野としては、プレゼンの練習相手のつもりだったらしいが、なんか流れで勧誘したんだ。」
山本が頼まれてもいない補足を入れる。
「オッケーだ。分かった分かった。田中への質問はもういいか?じゃあ次は伊藤に質問のあるやつ。」
山本が手を上げている。吉田は少し驚きつつも質問を促す。
「伊藤って、俺のプレゼンのどこに感動したの?あと、吉田より俺のほうが部長に向いてるって言ってたらしいけど、どうしてそう思ったのか理由も教えてくれ。」
伊藤は、少し言いにくそうに答える。
「どこに感動したかというと、『自分たちのような思いをする後輩を少しでも減らしたい』のところだな。そして、そういった考えを持った人のほうが、部長として適任だと思ったのだ。」
「感動させといてなんだが、そこリップサービスな。」
山本はばつが悪そうに白状する。しかし伊藤は、動揺することなく笑いながら言う。
「それは職員室で話しているとき察しはついていたさ。しかし、そういう言葉を公の場で言えるということは、少なからずそういう思いもあるんだろう?」
伊藤の問いかけに、山本は頬杖を突きながら言葉を選んでいく。
「いや、ないわけじゃないが、プレゼン成功させるためにかなり大げさに言ったぞ?」
「まあそういうことにしておこう。もう、私への質問はないか?」
上がる手はなかった。それを確認した吉田は、質問タイムの終わりを告げる。
「質問もないみたいだし、ここから自由に雑談と行こうか。」
吉田の言葉が終わるとともに、他愛もない会話が始まっていく。この喫茶店が、イベント部のたまり場になることは、まだ誰も予想していなかった。
まず、更新が一日空いてしまい申し訳ありません。心待ちにしておられる方がいるのかどうかも怪しいですが、謝っておきます。ごめんなさい。
前回お知らせした通りイベント部が設立した時点で、この『怠け者とバカとオタクが部活を立ち上げるようです』を完結としたいと思います。題名的にもここで切って、続編へという流れでよかったかなと勝手に筆者は思っております。
今後の作品の展開ですが、申し訳ないですが、すぐに続編の執筆はできないと思います。
また、まったく違った形の作品の素案も浮かんでいるところです。どちらを先に執筆開始するかわかりませんが、そちらの作品にも目を通していただけると嬉しいです。
長々と失礼しました。ここまで、拙文に付き合っていただき本当にありがとうございました。
またいずれ、新作品でお目にかかることを楽しみにしています。
閃風




