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08話:バイト終わりに駅前の方に行ってみると

 それから数時間後。夜7時を過ぎた頃。


「よし、それじゃあそろそろ私バイト上がる時間なんで、今日はお先に失礼しますねー」

「ん? あぁ、お疲れさん。……って、あれ? 今日はいつもよりもバイト上がるの早いんだな?」

「はい、今日はこの後クリスマスのプレゼントを買いに行こうと思ってたので、今日はいつもよりも早めにバイトを上がれるようにシフト組んでたんですよ」

「あー、なるほどな。それじゃあ目当ての店が閉まる前にさっさと買いに行ってこいよ。お疲れさんー」

「はい、それじゃあ先輩、お先に失礼します! お疲れさまでしたー!」

「おう」


 そう言って姫川は今日も相変わらず元気の良い表情をしながらファミレスから出て行った。昼前からずっとバイトしてたはずなのに凄く元気だよな。ああいう元気な所はちょっとは見習いたいものだ。


「よし、それじゃあ俺も残り二時間……アイツを見習って少しは元気に働くとするかな」


 という事で俺も姫川の元気の良さを見習って、残りの二時間を元気に働いていこうと思ったんだけど……。


「……あー、ごめん、鮫島君。ちょっとだけ良いかな……?」

「え? って、あ、店長。どうしたんですか?」


 姫川がファミレスから出て行って一時間くらいが経過した頃。


 今度は店長がファミレスのホールにやって来て、そして店長は俺に向かってこんな事を言ってきた。


「いや、本当に鮫島君には申し訳ないんだけどさ……今日はもうお客様も少ないから早上がりして貰えないかな?」

「あぁ、はい、そんなの全然良いっすよ。確かに今日は全然お客さん来ないっすもんね」

「うん、そうなんだ。このままだとバイトの子が多くて仕事も無いだろうし……だからごめんだけど今日は早上がりって事でお願いね」

「はい、わかりました」


 店長からの要件は今日は早上がりをして欲しいというお願いだったので、俺はそれを受け入れる事にした。


 姫川を見習って元気にバイトを頑張ろうとは思ってたけど、でも早く帰れるのならそれに越したことはないしな。


「あ、そうだ。そういえば今日事務所に行った時に来月のシフト表が無かったんですけど……もしかして来月のシフトってまだ出来ないんですか?」

「あ、あぁ、ごめんね。実はクリスマス付近のシフトが全然埋まらなくて来月のシフト表はまだ出来てないんだ……。あと数日中には必ず作り終えるからもう少しだけ待っててね」

「あぁ、そういう事ですか。はい、わかりました。それじゃあ今度のバイトの時にシフト表を確認する事にしますね。って事で今日はお先に失礼しますー」

「うん、申し訳ないけどそうしてくれると助かるよ。それじゃあお疲れ様、鮫島君」


 という事で俺はファミレスから出て行った。そしてすぐに事務所に戻って着替えを済ませていき事務所を後にした。


「うーん、今日は早めにバイトも終わった事だし……せっかくだから俺もちょっと買い物でもしてから帰ろうかな」


 どうせ家に早めに帰ってもやる事はあんまりないし、それならせっかくだから何か買い物とかして時間を潰してから帰る事にした。


 という事で俺は買い物をするために駅ビルとか商業施設が多い駅前の方に移動していくと……。


「や、やめてください……」

「……ん?」


 駅前の方に近づくと何やら喧噪の声が聞こえてきた気がした。なので俺はその声が聞こえた方に視線を送ってみると、そこには見知った顔がいた。


 それはバイトの後輩の姫川だった。姫川は嫌そうな顔をしながら止めてくれと言っていた。一体なんだろうと思ってよくよく凝視してみると……。


「あははいいじゃん、ちょっとくらい俺らと遊ぼうぜー!」

「はは、そうだよそうだよ。俺達と一緒に遊ぼうよー!」

「い、いや、無理ですって。あ、ちょ、ちょっと……手を離してくださいよ……」


(あれは……ナンパか?)


 どうやら姫川は駅前でタチの悪いナンパに引っかかってしまったようだ。ここは駅前で飲み屋とかゲーセンとかも沢山あるから人が賑わっているしな。だからタチの悪いナンパ野郎も普通にいるって事だ。


(……って、今はそんな事を冷静に分析してる場合じゃないよな)


 俺は分析するのを止めてさっさと生意気なバイトの後輩を助けるべくその喧噪の元に近づいていった。


「や、やめてください……私、もう帰らないといけないんで……だから手を離してください……」

「もう帰らないとって、まだ8時過ぎだよ? まだまだ楽しい時間はこれからっしょ? だから俺達と一緒に遊びに行こうよー!」

「あはは、そうだよそうだよ! せっかくだし今からカラオケとか一緒に行こうぜー!」

「あー、楽しそうにしてる所悪いけどさ……ソイツは俺のツレなんだ。だからソイツから手を離して貰えないか?」

「あははー……って、は?」

「え……って、あ、せ、先輩……!」


 俺はそのナンパ男達に向かってそう言っていくと、すぐにナンパ男達はギロっとした目つきで俺を睨みつけてきた。そして姫川も俺に気が付いたようで、心配そうな顔をしながら俺の方を見てきた。


「なんだテメェ? 俺達が先に声かけたんだからテメェはさっさと失せろよ!」

「そうだそうだ! 俺達が先にナンパしてたんだから邪魔すんじゃねぇよ!」

「いや、だからソイツは俺のツレなんだよ。だから悪いけどソイツをナンパするのは勘弁してくれよな」

「ああん? 何ふざけた事言ってんだよテメェ!」


―― ドンッ!


「……ん? 何かしたか?」

「って、は、はぁっ!?」


 そう言ってナンパ男はブチギレながら俺の胸元に手をドンっと思いっきり押し当ててきた。おそらくそれは俺の事を吹っ飛ばそうとしたんだと思うんだけど……でも俺はビクともせずにその場に立ち続けていった。


 まぁ俺は子供の頃からずっと筋トレばっかりしてたからな。だから普通の男にどつかれた程度じゃあ俺はビクともしない。


「な、なんだコイツ!? 大幹エグすぎだろ……!」

「おい、何やってんだよ? もっと本気でぶっ飛ばしちまえよ!」

「い、いや! 俺はかなり本気で押し倒したよ!」

「はぁ? んなわけねぇだろ!? だってソイツ全くビクともしてねぇじゃんか!」

「なぁ、ちょっと良いか?」

「……って、えっ?」


―― バシッ


「何か色々と白熱してる所申し訳ないんだけど、俺達もそろそろ帰りたいんだよ。って事でさ……もうそろそろ俺達は帰っても良いか?」

「え……って、ぐあぁぁっ!?」


―― ギュゥウッ……!


 俺はそう言いながらナンパ男の腕を掴んでいって、そのまま思いっきりぎゅっと握りしめていった。するとナンパ男は一気に顔を歪め始めていった。


「ぐ、ぐあぁあぁぁっ!?」

「なっ!? お、おい、ケンゴ!? な、何してんだよテメェッ! さ、さっさと手を離せよ!」

「ん? あぁ、すまんすまん。俺は軽く握っただけなのにそんな痛がるなんて思わなかったよ。それじゃあ、ほらよ」


 俺はその指示に従ってすぐにナンパ男から手を離していった。そしてそのままナンパ男達に向かって俺は続けてこう言っていった。


「ほら、アンタらが手を離して欲しいって言ったから俺はちゃんとすぐに離してあげたぜ? だからアンタらもさっさとソイツの手を離してやってくんねぇかな? それとも……まだ俺とじっくり話し合いをしたい感じか?」

「うっ……」

「あっ……」


 俺はちょっとだけ睨みながらそう言っていった。すると男達は若干ひるんだ様子を見せながらも最後には……。


「う……わ、わかったよ! 帰るよ俺達も! い、いくぞケンゴ!」

「あ、あぁ、わかったよ! ってかこんなクソブス女なんて要らねぇし!! ふんっ!!」

「え? って、きゃあっ!」

「えっ? あ、おいっ!」


―― ドンッ!


 そう言ってナンパ男達は姫川を思いっきり強く押し倒していき、そのまま駆け足でその場を去っていった。姫川は強く押し倒された事で地面に思いっきり倒れ込んでいってしまった。


「あ、あいつら……ふざけ……」

「せ、先輩! 大丈夫! 大丈夫ですから!」


 俺はキレそうになりながら今のナンパ男達を追いかけようとしたんだけど、でもすんでの所で姫川がそれを制止してきた。なので俺も冷静に戻って姫川の方に近づいて行った。


「すまん。ちょっとだけ熱くなった。大丈夫だったか?」

「は、はい、私はだいじょう……いつっ……」


 俺がそう尋ねていってみると、姫川は急に足首を押さえながら辛そうな表情をしだしていった。

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