07話:最近どんどんと寒くなってきたな
11月下旬。
最近はかなり寒くなってきた。そろそろ大学も期末試験があるし、これから体調を崩さずにしっかりと勉強しなきゃだな。
「はぁ……何だか最近すっごく寒くなってきましたよねー」
「んー? あぁ、そうだな」
バイトの休憩中に事務所の中でそんな事を思ってると、同じくバイトの休憩をしている姫川がそんな事を言ってきた。
「まぁここから冬本番になるし、どんどんと寒くなって来るだろうな。お前も風邪とか引かないように体調管理には気を付けろよ」
「はい、もちろんですよ。だってこれから楽しいイベントもありますし、風邪なんて引いてる場合じゃないですもんね!」
「え? 楽しいイベント? 一体何の話だよ?」
「あはは、何言ってるんですか先輩? 来月になったらいよいよクリスマスという最高に楽しいイベントがあるじゃないですかー!」
「え……って、あぁ、そういや12月ってクリスマスがあったな」
姫川にそう言われて気が付いた。そういやクリスマスまであと一ヶ月くらいだったな。いつもクリスマスなんて祝ったりしてなかったからすっかりと忘れてたわ。
「ふふ、それでー? 先輩はクリスマスの予定はどうするんですか? クリスマスを先輩はどうやって楽しく過ごすつもりですかー??」
「別に楽しい予定なんて何もねぇよ。クリスマスイブとクリスマスは出勤してくれたらその日は時給を上げてくれるって店長が言ってたからいつも通りバイトに入るだけだな」
「えー、何ですかそれー? せっかくのクリスマスなのにそんなテキトーな感じで良いんですか? クリスマスは友達とか大切な人とかと楽しく遊んだりパーティしたりする日なのに、そんなテキトーじゃ勿体ないですよ??」
「俺がワイワイと明るく遊ぶような人種じゃねぇの知ってんだろ。だからいつも通りの生活をする事になったとしても全然構わねぇよ」
「あはは、確かに先輩は明るいタイプではないですね。まぁでもせっかくのクリスマスなんだからバイトなんてせずにもっと大切な事に使った方が良いと思いますけどね?」
「大切な事? 例えばどんなだよ?」
「そりゃあもちろん恋人とデートとか……って、あ。というか先輩って彼女さんとかはいないんですか?」
「彼女なんていないに決まってんだろ。というか彼女がいたとしたらクリスマスは時給が上がるからバイトに行くなんて言う訳ねぇだろ。もしも彼女がいたら流石にバイトなんかしないでデートに行くに決まってんだろ」
「あはは、それはそうに決まってますよね。でも先輩は愛想をもうちょっと良くしないと彼女さんとか出来ないんじゃないですかね? ふふ、とりあえずもっと私みたいに笑顔を沢山出して愛想良くしていかなきゃ女の子も近づいてくれませんよー??」
「うるせ。愛想良く無くて悪かったな。ってかそういうお前はどうなんだよ? クリスマスの予定はあんのか?」
いつも通り姫川に色々と小馬鹿にされながらも、俺は姫川に逆にそう質問を返していった。
「おぉ、よくぞ聞いてくれました! 実は私は大学サークルの皆でクリスマスパーティをしようって計画してる所なんですよー!」
「ふぅん、そうなんだ。あれ、でもそういや姫川のサークルってどんなのに所属してるんだっけ?」
「私は旅行系のサークルに入ってます。普段は日帰りの所に行ったりとかして、長期休みの時は飛行機を使ってサークルメンバーで遠出したりとかする感じです。前回の夏休みにはサークルメンバーの皆で沖縄に行ったんですよー」
「へぇ、それは何だか楽しそうなサークルだな。って、あ、それじゃあ前にSNSを見せて貰った時の写真に映ってたあの子達ってもしかして?」
「あぁ、はい、そうですそうです! 私の所属している旅行サークルのメンバー達ですよー!」
どうやら前に姫川に見せて貰ったSNSに映ってた女の子達は姫川が所属しているサークルのメンバーのようだ。まぁ確かに旅行系の写真も多かったもんな。
「なるほど。姫川に見して貰った写真から凄く仲が良いのが伝わって来てたけど、あの子達ってサークルのメンバーだったんだな。それに来月のクリスマスにも皆で集まってパーティをするなんて相当仲が良くて楽しいサークルなんだろうな」
「はい、もうすっごく楽しいサークルですよー! あ、それじゃあせっかくだし良かったら先輩も私達のサークルのクリスマスパーティに遊びに来ませんか?」
「え、俺が姫川のサークルのクリスマスパーティに? いやいや、俺お前のサークルなんて全然知らんし、そもそも大学だって違うだろ? それなのに俺がそっちの大学のサークルのパーティに参加なんて出来るわけないだろ」
「いやそんなの全然気にしなくて大丈夫ですよ。サークルで計画してるクリスマスパーティは友達とか家族とかなら誰でも参加できる感じの緩いパーティなんですから。だから初見さんも沢山いると思うし子供でも楽しめるようなクリスマスパーティにする予定なんで先輩が来ても全然大丈夫です!」
「ふぅん? 陽キャな姫川が所属してるサークルって事だからウェーイ系のクリスマスパーティを想定してるのかと思ったら、意外にも子供も大丈夫なアットホーム系のクリスマスパーティを企画してたんだな」
「はい、そうなんですよ! だってやっぱりクリスマスって一年の内で一番楽しいイベントですから大人も子供も全員が楽しめなきゃ勿体ないですもん! ふふん、だから私のサークルのパーティは全然怖くないですよー? いつも陰キャボッチな先輩でも絶対に楽しめますよー? だから私と一緒にクリスマスパーティに行きましょうよー??」
「うっせ。陰キャボッチは余計だわ。はぁ、全く……まぁでも初対面の人ばっかりなパーティなんて確実に気を使って胃が痛くなるだろうから遠慮しとくわ。皆がワイワイしてるのに俺だけ馴染めずに空気悪くするのも嫌だからな」
「あはは、相変わらず先輩は人見知りが激しいですねー。あ、でもそういう事なら私がクリスマスパーティ中に沢山喋ってあげますよ! 私が先輩をボッチにさせませんから! だから一緒にクリスマスパーティ行きましょうよー! 絶対に先輩も楽しめるはずですから! ねぇねぇ、だから一緒に行きましょうよー!」
姫川はそんな提案をしてきてくれた。でも俺はその提案をすぐに断っていった。
「いやそれこそ絶対に駄目だろ。だって姫川がずっと俺の話し相手になっちゃったら、他の友達が姫川と話せなくなるじゃん。そしたらお前もサークルの仲良い子達も存分に楽しめないだろ? そんなのは流石に申し訳なさすぎるから遠慮しとくわ。って事で姫川は俺の分までクリスマスパーティを楽しんで来てくれよ」
「ちぇー。ま、しょうがないか。でも先輩が行きたくなったらいつでも言ってくださいね。先輩ならいつでも招待しますから!」
「おう、まぁ気が向いたらな」
「それ絶対に行かない人のやつじゃんー! あはは、まぁ先輩らしくて良いですけどねー」
という事でその後も俺達は一緒に他愛無い話をしながらバイトの休憩時間をノンビリと過ごしていった。