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06話:姫川のSNSを見して貰う

 土曜日の夕方前。


 俺は姫川と一緒にバイト先の事務所でボーっと過ごしていた。


「やっぱりこの時間帯は暇になる事が多いんですねぇ……」

「あぁ、そうだな。まぁ夕飯前だから仕方ない事なんだろうけど」


 この夕方前の中途半端な時間帯はお客さんが全然来なくて暇になる事が多かった。だから今は店長に言われて早めの休憩を貰っている所だった。


「でももうすぐしたら夕飯時になるからまたお客さんもドカっと増えて来るだろ。って事でその時間帯がやって来るまではノンビリと休憩をしてるしかないな」

「はい、そうですねぇ。はぁ、仕方ない。それじゃあそれまで時間もたっぷりと残ってる事ですし、今日は先輩と喋って時間潰しをするしかないですねぇ……」

「おいコラ。いつも俺にダル軽みしてきてるクセに何が仕方ないだよ」

「ふふ、まぁそうなんですけど、でも先輩だってこんな可愛い女の子に話しかけられて嬉しいでしょー??」

「もっとお淑やかな女性だったら喜んでたかもな」

「ちょっとー、私だって凄くお淑やかでしょー? こんなにも可愛くてお淑やかな女の子なんてかなり珍しいですからね?? はぁ、全くもう……ひょっとして先輩はちゃんと私の事見てないんですか? あぁ、それとも……こんな可愛い彩ちゃんの事をじっくりと見るのが恥ずかしいとか? あはは、先輩は小学生じゃないんだからそんな恥ずかしがらず――」

「ふぁあぁ……ねむ」

「って、ちょっとちょっと! 今凄く大事な事喋ってるのに何で先輩は欠伸してるんですか!?」

「んー? あぁ、すまんすまん。なんか校長先生の話聞いてるみたいだったわ」

「こ、校長先生の話!? 私の言葉聞く気全然ないって事じゃん!!」


 俺がそう言うと姫川はいつものようにプリプリと怒りながらそう言ってきた。


「はは、嘘だよ嘘。それで? 今日は何か話したい事とかあるか?」

「はぁ、全くもう……そうですね。あ、そうだ。それじゃあ先輩って大学とバイト以外で普段は何してるんですか?」

「うーん、まぁ昔から筋トレが好きだから家で毎日のようにしてるな。あとは本を読むのも好きだから休みは割と図書館とかに行ってる事も多いな」

「へぇ、筋トレですか。そういう所はやっぱり先輩も男の子って感じがしますね。それと図書館ですか。私はそういう所あんまり行った事がないから気になりますね!」

「まぁ今時は図書館に行く人って少ないもんな。でも割と最近の図書館って楽しい所も増えてるんだ。最近だとカフェが併設されてる図書館とかも多いし、オシャレな空間になってる図書館も結構あるんだよ。だから最近だと家族連れとかカップルで図書館に行く人も珍しく無いんだってさ」

「へぇ、それは何だか意外ですね! 私は図書館ってもっと静かで厳かなイメージがあったんですけど……最近はそんな楽しい空間になってるんですね!」

「あぁ、そうなんだよ。まぁでもお前みたいにいつもやかましいヤツは確実に出禁だろうけどな」

「あはは、確かに私みたいにいつも口煩い女はー……って、ちょ、ちょっと! 私全然煩くないでしょ! さっきも言ったけど私は物凄くお淑やかで静かな女の子なんですけど??」

「はは、面白い冗談だな」

「うわっ、先輩全然信じてないなー。まぁ先輩にいつもこうやって軽口を叩いちゃってるせいだし仕方ないか。あ、でもね先輩……私がこうやって口煩い姿を見せてるのはさ……先輩にだけなんですからね? ふふ、だから私にとって……先輩だけが特別なんですからね……?」


―― うるうる……


「はいはい、わかったわかった。姫川の特別で嬉しい嬉しい」

「ちょ、ちょっとー、もっと心を込めてそう言ってくださいよ! 私のうるうる顔なんて滅多に見れないんですよー? というか本当に先輩だけですからね? 私のうるうる攻撃を喜ばない男子なんてさー!」


 姫川は口を尖らせながらそんな事を言ってきた。確かに今のウルウル表情を直視したら世の中の男は全員落とされる事必至だ。それくらいめっちゃ可愛い表情だったのは俺も認めるさ。


 でももうコイツとの付き合いも長くなってきてるからそんなウルウル表情は俺には効かない。そんな事よりもいつものウザったい感じの姫川の方が強すぎるからウルウル表情をされてもドキっとなんてしないわ。


「はは、それは光栄な事だな。それで? そういう姫川は大学とバイト以外は普段何してんだ?」

「私は普通に友達と遊ぶ事が多いですよー。カラオケとかショッピングとか、美味しいご飯を食べに行ったりとか。あ、良かったら私のSNS見ます?? はい、これ!」

「んー? って、おぉ、めっちゃ楽しんでる写真ばっかりだなー」


 姫川のSNSには美味しそうなご飯を食べたり、アクティビティに参加してたり、色々と楽しそうな写真が沢山投稿されていた。そして写真に映ってる姫川の友達も確実に全員陽キャだなと思える写真だった。やっぱり類は友を呼ぶってやつかな。


「へぇ、何だかめっちゃ大学生活を謳歌してる感じの写真ばっかりだな」

「あはは、そりゃあ私は華のJDですから毎日しっかりと楽しんでますよー! あ、そうだ、それじゃあせっかくだし先輩も良かったらSNSの友達になりましょうよ! それで先輩が今までに撮った写真とか私にも見して下さいよー!」

「ん? いや、俺SNSなんて一つもやってねぇよ」

「え、そうなんですか? それじゃあ今まで先輩が撮ってきた写真とか動画はどこに上げてるんですか?」

「いやどこにも上げてないけど。というかそもそも俺は写真とか全然撮らねぇしな」

「えっ!? 先輩って写真とか取らないんですか!? 旅行とか行ったら写真撮りたくとかならないんですか?」

「んー、全然撮りたいとは思わないな。正直いつも写真を撮りたいって気持ちよりもメンドクサイって気持ちの方が勝っちゃうんだよなー」

「いやいや、それは流石に勿体ないですよ! はぁ、全くもう。だけど先輩って意外と面倒くさがりな所がありますよね。ふふん、もっと思い出とか大事にしなきゃ人生楽しくないですよー??」

「別に写真を撮らないくらいで人生は損なんかしねぇだろ。って、あれ? ここら辺はご飯の写真ばっかりだな。でも外食の料理じゃなくて何か家庭料理っぽい感じがするな。もしかしてこれって姫川家の料理の写真か?」

「あー、はいそうですよ。そこら辺のは全部私の手料理の写真ですよ」

「え? こ、これ全部姫川が作った料理の写真なのか? というかこんなにも沢山の料理を作れるのかよお前?」

「はい、そうですよ。だって私は女子力が高いですからこれくらいの料理は幾らでも作れちゃいますよ。ふふん、どうですか? 凄いでしょー??」


 俺はビックリとしながらそう尋ねていくと、姫川は自信満々にドヤ顔を決めながらそう返事を返してきた。


「あぁ、そりゃあ普通に凄いよ。しかもどの写真もめっちゃ美味そうだしな。姫川はいつくらいから料理を始めていったんだ?」

「えっと、そうですね、料理の手伝いとかは小学生の頃からずっとしてたんですけど、本格的に料理を始めたのは高校生になってからですね。その頃から両親が共働きになったので自分で料理をするようにしたんです」

「へぇ、そうなんだ。コンビニ飯とかカップラーメンとかそういうお手軽な物に頼らないで自分で料理を作るようにしてたなんて本当に凄いな、お前」

「はい、そうなんですよ、実は私はこう見えて結構凄い女の子なんですよー? いやこれはもう先輩も女子力の高い私に惚れちゃったんじゃないですかね! まぁでもこんなにも可愛い私なんですから男の子なら惚れちゃうのは当然ですよね。ふふ、という事で先輩も……可愛い私にメロメロになってくれて良いんですからね……?」

「おっ、このハンバーグめっちゃ旨そうだな。それにこっちの唐揚げも旨そうだな!」

「……って、ちょ、ちょっと! 写真ばっかり見てないでちゃんと私の話を聞いてくださいよ!」


 という事で今日のバイトの休憩時間は姫川とそんな他愛無い話をしながらノンビリと時間を潰していった。

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