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05話:姫川に勉強を教えていく

 とある日曜のお昼前。


 今日は昼過ぎからバイトがある日だ。だから今日は早めにファミレスの事務所に行ってそこで昼飯を食ってからバイトに行こうと考えていた。


 という事で昼飯が入ったコンビニのビニール袋を片手に事務所に到着すると……。


「お疲れさまですー。って、あれ?」

「う、うーん……って、あ、お疲れさまですー……」


 ファミレスの事務所に入っていくと唸り声を上げながら必死にノートとペンを動かしていっている姫川の姿を発見した。


「あぁ、お疲れさん。今からここで昼飯食いたいんだけど、俺もそのテーブル使っても大丈夫そうか?」

「え? あ、あぁ、はい! もちろん大丈夫ですよ! はい、それじゃあここをどうぞ!」

「ありがとう。それじゃあ……よいしょっと。ふぅ、それで? そんな唸り声をあげてどうしたんだ?」


 俺は姫川の隣に座っていきながらそう尋ねていった。すると姫川は物凄くしんどそうな顔をしながらこう言ってきた。


「い、いやー……実は週明けに大学で数学の小テストがあるんですよ。だから今頑張って必死に勉強してるんですけど……でも分からない問題があって、それに苦戦してる所なんですよ……」

「ふぅん、そうなんだ。って、あれ? お前って文学部じゃなかったか? それなのに数学のテストなんてあるのかよ?」

「は、はい、そうなんですけど……でも教養科目でどうしても数学を受けざるを得なくて……それでしょうがなく数学科目を受講したら大変な目に遭っているという状況です……」


 姫川は目を泳がせながらそう答えていった。でもそれからすぐに姫川は慌てた様子でこう言ってきた。


「あっ、で、でもあれですからね! 私は別にお馬鹿さんという訳じゃないですからね! だって私、英語とか社会とかものすっごく得意ですから!」

「いや、お前が馬鹿だなんて一切思ってねぇよ。特に英語力なんてお前めっちゃ凄いだろ。普通にペラペラに英語が喋れて凄いと思ってるからな」


 実はこのファミレスに訪れる外人のお客さんの対応はいつも姫川がしていたりする。日常会話くらいなら余裕で英語を喋れるって本当に凄いと思うわ。


「あ……そ、そうですか。まぁ先輩にお馬鹿さんだと思われてないようなら良かったです……」

「あぁ、そんな事は一切思ってないから安心しろよ。まぁでもテスト勉強は大変だよな。あ、そうだ。それじゃあお前のわからない数学の問題を俺が教えてやろうか?」

「え……って、えぇぇっ!? 先輩って数学わかるんですか!?」

「そりゃあ俺は理工学部だし普通の人よりかは数学は得意だからな。ってかなんでそんなにビックリしてんだよ?」

「え? い、いや、だって先輩って……お馬鹿さんなんじゃ……?」

「おい待てコラ! 勝手に俺の事をお馬鹿さん扱いしてんじゃねぇよ! はぁ、全く……それで? わからないのはどの問題がわからないんだ?」

「え? あ、はい、この問題の解き方が全然わからないんですけど……」

「どれどれ? あぁ、このタイプの問題か。それならまずはこの公式を使って……」

「え……わわっ!」


―― スラスラ……


 俺は姫川にペンとノートを借りてスラスラと数学の問題を解いていった。


「これで良しと。解答までの導き方をなるべく細かく書いておいたからこれを見ていってくれ。この解答を見てもわからない部分があるようなら、また言ってくれればもう少し丁寧に解説してやるよ」

「わわっ! これだけでも凄くわかりやすい解説ですよ! 本当にありがとうございます! こんなに簡単にスラスラと解けるなんて先輩は凄いですね!」


 姫川は目をキラキラと輝かせながらそんな事を言ってきた。


「ま、勉強は好きな方だからな。それに高校の時は後輩に勉強を教える事も多かったからさ、こうやってわかりやすく解説を書くのは実は結構得意なんだよ」

「おー、勉強が好きだなんて凄い立派ですね! それに先輩にもちゃんと先輩らしい所があったんですね! これは今日一番の大きなビックリポイントですよー!」

「うっせ。そんな事言うなら二度と勉強教えてやんねぇぞ?」

「あはは、冗談ですよ、冗談! でも本当に助かりました! ありがとうございます! ふふん、これはもう先輩には後輩ちゃんポイントを10ポイントは差し上げるしかないですね!」

「ちょくちょく俺に後輩ちゃんポイントくれるけど、それって集めたらお前の満面の笑顔が見れる以外になんかメリットないのか?」

「え、えぇっ!? こんなにも可愛い彩ちゃんの素敵な笑顔が見れるだけでも凄く価値高いというのにそれ以上を要求する気ですか?? はぁ、全くもうしょうがないなぁ。それじゃあそんな強欲な先輩のためにー……ふふん、こんなにも可愛い彩ちゃんとの一日デート券を差し上げても良いですよー??」

「全然要らねぇわ。それなら近くの自販機でジュースを買ってくれるだけで十分だわ」

「えっ!? ちょ、ちょっと!? 私と遊びに行きたいっていう男の子なんてすっごく沢山いるんですよ?? そんな私と二人きりでデートが出来るなんて先輩も凄く嬉しいはずでしょ?? だからもっと私との一日デート券を嬉しがってくださいよー!!」

「はいはいわかったわかった。そんな豪華な景品を貰えたら最高に嬉しいよ。わかったからさっさとテスト勉強に戻れよー」

「ちぇー。先輩は相変わらずの塩対応ですね。それにこんな可愛い美少女な彩ちゃんに全然なびかないのも相変わらずですねー……ふふ、まぁそれが先輩の良い所なんだろうけどね……」

「え? 今最後に何て言ったんだ? 良く聞こえなかったんだけど」

「んー? ふふ、何でも無いですよー。ほらほら、先輩もバイトが始まっちゃいますからさっさとお昼ご飯食べた方が良いですよ?」

「ん? あぁ、そうだな。ま、それじゃあ……いただきます」


 最後に姫川は笑いながら何かを呟いていたんだけど、俺はその声を聞き取る事が出来なかった。まぁ姫川本人は何でもないと言ってるから気にしなくても良いか。


 という事で俺は特に気にする事もなくそのまますぐに昼飯を食べていき、午後からのバイトをいつも通り頑張って働いていった。

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