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02話:今日も姫川にちょっかいをかけられていく

 とある日の夕方前。


「おはようございます! あっ、今日も先輩一緒なんですね! お疲れさまですー!」

「おう。お疲れさん」


 いつも通りファミレスでバイトをしてるとバイトの制服を着た姫川がやってきた。どうやら今日もバイト時間が被っているようだ。


「何だか最近は先輩とバイトが一緒になる事が多いですよね。あ、もしかして先輩……可愛い私と一緒に働くために狙ってシフト組んでます?? ふふん、幾ら可愛い彩ちゃんと会いたいからってそこまでしなくても良いのにー」

「んな事してねぇよ。大学生の空いてる時間なんて基本的に皆同じ感じになるんだからバイト時間も被るに決まってるだろ」

「あはは、そりゃあそうですよねー。よし、それじゃあ軽口を叩くのもこれくらいにしてちゃんと働いていきましょう、先輩! ほらほら、テーブルを拭く手が止まってますよー? お給料貰ってるんだからちゃんと働きましょうよー??」

「誰のせいで手が止まったと思ってんだよ。良いからお前もさっさと働け」

「いたっ!」


―― ピシンッ


 俺はニヤニヤと笑いながらそんな事を言ってくる姫川の額に軽くデコピンをしていった。


「いたたぁー……もう、先輩っ! こんな可愛い彩ちゃんにデコピンをするなんて法律違反ですよ! 今の警察が見てたら先輩逮捕されちゃってますからね!」

「こんなんで逮捕されてたら全人類逮捕されるだろ。ってか超優しくデコピンしたのにそんな痛がるフリするなよな。いいからお前もテーブルを拭くの手伝えよ」

「ちぇー。先輩だけですよー。こんな可愛い彩ちゃんに向かって何の躊躇もせずにデコピンをしてくる人なんて。ふふ、まぁ良いですけどねー。よし、それじゃあ今日も一日よろしくお願いしますね、先輩! って事で私にも布巾貸してください!」

「おう。ほらよ」


 こうして姫川もバイトに加わってきたので、それから俺達は手分けをしてテーブルを拭き始めていった。


◇◇◇◇


 それからしばらくが経ち。


「いやー、思いのほか暇ですねぇ……」

「そうだな。まぁ今はまだ夕飯前の時間帯だし仕方ないな」


 今はまだ夕方前の時間帯だったので、お客さんの入りは微妙な感じで全体的にガラガラ状態だった。


 なので俺達はフロアの掃除や飲み物の補充など、お客さんがいなくても出来る雑務を順次こなしていたんだけど、それらの雑務も全部やり終えてしまい完全に暇な時間を味わっていっていた。


「はぁ、お客さんが来てくれないと中々時間が経たないから困っちゃいますよね……あ、そうだ。それじゃあお客さんが来るまでちょっとお話しませんか?」

「んー、まぁお客さんが来るまでの間なら別にいいぞ」

「やったー。あ、それじゃあ先輩に聞いてみたい事があったんですけど、そういえば先輩ってこのバイトを始めた理由とかあるんですか?」

「理由なんて特にないぞ。普通に今住んでるアパートから近かったからこのファミレスを選んだだけだ」


 俺が住んでるアパートはこのファミレスから結構近い所にある。大体ここから徒歩5分くらいの場所に俺の住んでるアパートがある。


 そんでお金が普通に欲しいからバイトをしたいなって思ってたので、近くにあったファミレスにバイトの面接を受けてみたらすぐに採用されたというだけの経緯だ。


「そういうお前はこのファミレスをバイト先に選んだ理由は何かあるのか? お前も住んでるのはここら辺とかそんな感じか?」

「いや、私はここから電車で20分くらいかかる所に住んでますね。だから別に最寄り駅がここって訳じゃないですよ」

「ふぅん、そうなんだ? それじゃあ何でお前はこのファミレスでバイトを始めたんだ?」

「ふふん、そんなの決まってるじゃないですか。だってこのファミレスの制服って凄く可愛いでしょ? 私は子供の頃からずっとこのファミレスの制服を着てみたいなーって思ってたんです。だから高校を卒業したと同時にこのファミレスでバイトを始めたんですよ」

「あー、なるほど。そういう事か」


 そう言って姫川はファミレスの制服のスカートの裾を手に持ちながらクルっと一回転していった。確かにこのファミレスの制服は非常に可愛らしい感じがするな。


「んー? どうしたんですか先輩? 急に固まっちゃって……って、あぁ! もしかして私のスカートから出てる綺麗な生足を見て欲情しちゃいましたかー? あはは、もう先輩はえっちぃんだからー」

「唐突に変なレッテルを貼るな! いや普通に姫川の言う通りこのファミレスの制服は可愛い感じだなって改めて認識していっただけだよ」

「おー、先輩もようやくこの制服の可愛らしさに気が付きましたかー! そうなんですよ、ここの制服すっごく可愛いんですよ! だから実は私以外の女子達も結構この制服目当てにバイトしてる子が多いんですよ?」

「へぇ、そうなのか? なるほど、それはまた一つ勉強になったわ。ありがとな、姫川」


 俺はバイトの決める判断は家から近いかどうかでしか判断してなかったけど、女子的には制服の可愛さとかもバイトを選ぶ決め手になる事もあるようだ。


 そして今まで自分が持っていなかった新しい価値観を知れるのは凄く貴重な事だ。そう思って俺は姫川に感謝の言葉を送っていった。


「おぉ? 何だかよくわからないけど私の言葉が先輩の参考になったようで何よりです! ふふ、まぁでもそんな訳でさぁ……先輩はもっと喜んだ方が良いんですよー?」

「ん? もっと喜んだ方が良いって……一体何に対してだよ?」

「あはは、そんなの決まってるでしょー? 私みたいな超絶可愛い女の子とバイト先が同じになったという事にですよ! 先輩が偶然にもこのファミレスの近くに住んでた事でこんなにも可愛い彩ちゃんと出会えたんですからね? そしてこんな可愛い美少女とバイト先が同じでいつも会ってお喋りが出来るなんてすっごい奇跡なんですよ?? ふふん、だから先輩は私との出会いにもっと涙を流しながら喜ぶべきなんですからねー!」

「はいはい、わかったわかった。お前と出会えてめっちゃ嬉しいなー。おっと、そろそろ夕方過ぎになるしお客さん一気に来るぞー。という事で雑談はこれくらいにしてさっさと仕事モードに切り替えろよー」

「ちょ、ちょっとちょっと! もっと心を込めて嬉しいって言ってよー! ふふ、ま、それも先輩らしくていいけどねー。はいはい、了解ですー!」


 という感じで今日もお互いにしょうもない軽口を叩き合いながら、その後も俺達はファミレスのバイトを勤しんでいった。

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