10話:俺の住んでるアパートに到着する
それからすぐに俺達は玄関先で靴を脱いでいってリビングへと向かって行った。
―― ガチャッ
「ほら、ここが俺の部屋だよ」
「おー、すっごく綺麗に整頓されてますね! 何だか先輩っぽい部屋です! ふふ、それに生まれて初めて男の子の部屋に入ったから凄くワクワクとしちゃいますよー!」
「いや何でワクワクしてんだよ。こういう時って普通は緊張とかする場面なんじゃねぇのか? いや知らんけどさ」
「あはは、先輩の部屋だし別に緊張なんてしませんよー。それに、すんすん……おー、何だか先輩の匂いがすっごいしますねー!」
「お、おい勝手に匂い嗅いでんじゃねぇぞ。そんな恥ずかしい事すんな。はぁ、全く……とりあえず椅子に座らせるからな」
「あ、はい! わかりました!」
そう言って俺は姫川をリビングに置いていた椅子にゆっくりと座らせていった。
「よし、それじゃあ怪我の具合を確かめるから、ちょっと靴下を脱いでいってくれないか?」
「あ、はい、わかりました。それじゃあ……いたっ……」
「ん? やっぱりまだ痛む感じか?」
「は、はい、そうですね……激痛って程ではないんですけど……でも靴下を脱ごうとして足首を曲げていった時にちょっと痛い感じがして……」
「そっか。それは辛いな。よし、それじゃあ俺が代わりに脱がせてやるよ。って事でお前は安静にしとけ」
「え……って、ふぇっ!? せ、先輩が私の靴下を脱がすんですか!?」
「ん? そうだけど……何でそんな焦ってんだよ?」
「い、いや、それはその……先輩に靴下を脱がせて貰うのって……何だか赤ちゃんみたいな感じがしてちょっと恥ずかしいというか……」
「何を今更そんな事で恥ずかしがってんだよ。いいからほら。怪我の具合を見るんだからさっさと身体をこっちに向けろ」
「うぅ……は、はい、わかりましたよ」
そう言うと姫川はちょっとだけ恥ずかしそうにしながらも俺の方に足を向けて来た。なので俺はそのまま優しく姫川の靴下を脱がせていった。
―― スルスル……
「……っ……」
「はいよ。脱がせていったぞ。さて、怪我の具合はっと……」
俺は靴下を脱がせていったあと、すぐに姫川の足を確かめていった。すると足は若干青くなっていた。まぁちょっと捻った感じだな。
「う、うぅ……」
「ふむふむ……まぁ軽く捻ったって感じだな。って、おい、どうしたよ? そんなうめき声をあげて? もしかして結構痛かったのか?」
「い、いや、痛くは無いんですけど……でも何というかその……私の足をこんなにも男の子にマジマジと見せた事も触れさせた事も一度も無かったので……そ、それが何だか今になってちょっと恥ずかしくなって……」
「? なんだよそれ? 別に恥ずかしがる必要なんて何にも無くないか? だって姫川の足は真っ白で凄く綺麗な足してんじゃん?」
「うぅ……って、えっ? 白くて綺麗? ほ、本当ですか?」
「あぁ、本当だよ。ってかこんな事で嘘なんか付くわけねぇだろ」
「そ、そうですか……ふふん、そっかそっかー。先輩にとって彩ちゃんの足は凄く綺麗って事なんですね! ふふ、それは嬉しいなー! よし、それじゃあ私の白くて綺麗な足は先輩にだけはジロジロと見ても良い権利を上げましょう!」
「すぐに調子に乗るんじゃねぇよ。まぁでも白くて綺麗な足だからこそ、捻ってちょっと青くなってるのが痛々しく見えるな。よし、さっさと応急処置をしていくとするか。とりあえずアイシングからだな」
そう言って俺は台所に向かってビニール袋を手に持ってから冷蔵庫を開いていき、中に入ってた大量の氷をビニール袋の中に入れてそれを姫川に渡していった。
「とりあえずこれを使って10分くらい患部を冷やしとけ。それが終わったら包帯でしっかりと固定してやるからよ」
「あ、は、はい、わかりました。ありがとうございます」
という事で姫川にその氷袋を手渡していった後、俺はすぐにタンスの中から救急箱を取り出していった。
そしてその救急箱から包帯を取り出していき、姫川の患部が十分に冷たくなったのを確認してから包帯を使って足首が動かないようにしっかりと固定していった。
「ふぅ。これで良し……と」
「わわ、先輩凄いですね! こんなにも手際が良いなんて、もしかしてこういう応急処置の勉強とかしてたんですか?」
「んー、まぁそこまでガッツリと勉強した訳じゃないけど多少は心得があるって感じだな。俺は高校時代はバスケ部に所属してたんだよ。それで部活中に今の姫川みたいに足を怪我する奴の手当とかを結構やってたんだ」
「へぇ、そうなんだ! というか先輩ってバスケ部に所属してたんですね! へぇ、それはカッコ良いですね!」
「おう、ありがとな……って、あ……」
「え……って、あ……」
―― くきゅぅぅぅ……
そんな話をしていると、突然と姫川のお腹から可愛らしいお腹の音が鳴ってきた。
「あ、あははー……先輩に怪我の手当をして貰って安心しちゃったら、何だか急にお腹が減って来ちゃいました……」
「まぁさっきまでは色々と大変だった仕方ねぇよ。ってか姫川はまだ晩飯食べてなかったのか?」
「はい、さっきまでずっと買い物をしてて、それで駅前にあるファーストフード店で晩御飯を食べてから帰ろうと思ったんですけど、その時にナンパに遭遇しちゃったので……」
「あぁ、なるほどな。そりゃあまぁ災難だったな。あ、それじゃあせっかくだし良かったら俺んちで飯食ってくか? 簡単な晩飯でも良ければお前の分も作ってやるぞ?」
「え……って、えぇっ!? せ、先輩の手料理を食べさせてくれるんですか!? ってか先輩ってご飯作れるんですか!?」
「まぁ一人暮らししてるし多少は料理するってくらいだな。だからお前みたいに凄く美味しそうな料理が作れる訳じゃねぇよ。テキトーに食材を切ってテキトーに炒めてテキトーに味付けをするだけだ」
「あぁ、なるほどー! あはは、何だかその説明だと、ザ・男飯って感じですね!」
「そんな感じだな。まぁそんなんでも良ければ今から作るけどどうだ? 食べてくか?」
「はい! もちろん食べたいです! 先輩の料理するザ・男飯を私にも食べさせてくださいよ!」
「おう。それじゃあすぐに用意するから、そのまま椅子に座って待っててくれ」
「はい! 了解です!」
という事で俺はすぐにキッチンの方に移動していき二人分のご飯を作り始めていく事にしていった。